TPPは絶対許してはいけない~真っ先に狙われるのは健康保険です~

公開日 2016年12月05日

吉田 章 協会理事

 衆議院議員会館前のTPP反対グローバルアクション(2016年11月17日)での吉田 章 協会理事の発言から抜粋。


TPP批准阻止集会2016

 TPPが発効したときには、真っ先に国民皆保険制度が狙われると思います。薬剤価格の決定過程が不透明だとか理由をつけ、その決定に製薬会社が関わり、薬価を吊り上げようとするなどが危惧されています。

 肺がんなどの特効薬オプジーボという薬は、一人年間3,500万円という超高額薬品です。当初は、対象が特殊な皮膚がんのみで、患者数も500人程度と少ないため、採算がとれるよう薬価が高くなった背景があります。しかし、発売後すぐに対象が肺がんにも広げられ、患者数が一挙に30倍になったのですが薬価が据え置かれたため、総額が莫大なものになってしまいました。政府は半額への値下げを緊急に決定しましたが、今のところ、製薬会社は不服表明だけで、行政訴訟などの動きはみせていません。 もし、この会社が外国企業で、TPPが発効していたら、どうなっていたでしょうか?ISDS条項が使われ、企業が損害を蒙ったと、政府が多額の賠償金を払わされることになったかもしれません。

 米国では、自己破産の理由の第一が医療費を払えないことです。その8割が医療保険に入っているのにです。アメリカの医療保険は日本でいうと、自動車保険をもっと悪くしたものを想像していただければ良いと思います。保険によって適用範囲が異なる上、受診できる医療機関も制限され、さらに高額な免責制度があります。そして、薬も医療費も高額なため(例えば盲腸の手術は200万から400万以上です。くるぶし骨折で650万という例もあります)、保険に入っていても数百万円から場合によっては数千万円以上請求され、多額の借金を抱え、破産したりすることが珍しくないのが米国の現実です。TPPはこういうアメリカの制度を参加国に押し広げることが目的だといっても過言ではありません。

 ISDS条項は、外国企業や投資家の期待した利益を単に保護するためだけのもので、当事国の国民の健康や安全は全く考慮しません。そんなTPPは、絶対に許してはなりません。一緒に、批准反対の声をあげていきましょう。

(『東京保険医新聞』2016年12月5・15日合併号掲載)

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