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マイナンバー実務者講習会――個人番号「収集しない」も選択肢

公開日 2016年12月05日

マイナンバー実務者講習会2016

 今年1月から運用が始まったマイナンバー制度だが、年末調整事務の取り扱いで、悩む声が会員から寄せられている。協会経営税務部は11月9日にマイナンバー実務者講習会を開催し「年末徴収事務に向けた対応と今後の課題」について協会保険医サポートセンター顧問団の粕谷幸男税理士が解説した。以下ポイントを紹介する。

扶養控除等申告書に個人番号欄が新設

 年末調整事務に向けて従業員から「扶養控除等申告書」と「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」を、さらに住宅ローン控除の適用を受けて2年目以降の人からは「住宅借入等特別控除申告書」の提出を受ける。控除額を確定し、今年最後の給与において所得税の過不足額を調整する。年末調整をしない人や被扶養者がいない人でも、主たる勤め先が自院の場合は「扶養控除等申告書」の提出がないと税率の高い「乙欄」での所得税額表が適用されるため、必ず提出を受けられたい。
 「扶養控除等申告書」は、個人番号の記載欄が設けられ、給与支払者の個人番号または法人番号、従業員本人および控除対象者等の個人番号を記載することになった。なお2017年(平成29年)以降は、別途個人番号を管理していれば「扶養控除等申告書」への個人番号の記載は不要だ。
 源泉徴収票も税務署提出用には個人番号の記載欄ができた。受給者用の源泉徴収票には個人番号欄はなく記載は不要である。税務署提出用の源泉徴収票には16歳未満の扶養親族の個人番号は記載しないが、区市町村に提出する給与支払報告書には記載する。
 年末調整後、法定調書を作成し、翌1月31日までに税務署に源泉徴収票(区市町村には給与支払報告書)とともに提出する。

番号収集前に安全 管理体制を万全に

 事業者の管理体制が万全でなく情報が漏れると、場合によっては罰則が科される恐れがある。個人番号を収集する前に、取扱責任者と事務取扱担当者を決め、各院所の実態に合わせた「基本方針」と「取扱規程」の策定、および4つの安全管理措置(組織的・人的・物理的・技術的)を講じておかなくてはならない。
 番号法では、個人・事業者ともに、義務規定は一切ない。ただ、国税通則法第124条には「・・・申告書、申請書、届出書、調書その他の書類を提出する者は、当該書類にその氏名、住所又は居所及び番号(省略)を記載しなければならない。」とあるが、記載しないことについての不利益はない。従業員から番号の提供を断られた場合は、提供を求めた経過を記録しておけばよいと国税庁も回答している。万が一、安全管理体制の整備に不安があるのであれば、とりあえず収集しないという対応も選択肢の一つだ。

税務署での受領対応

 税務署での受付窓口では「個人番号記載あり」の場合は、個人番号カード(写真付き)や通知カードと免許証などで、本人確認を実施した上で受領する。「個人番号記載なし」の場合は記載を指導した上で、それでも記載不可の場合、番号制度に関するチラシを交付して受領される。
 還付申告の場合は「個人番号記載なし」で受けた場合でも「なりすまし」防止のため申告者の実在確認は徹底して行われるようだ。

住民税特別徴収で 個人番号を事業所に通知

 住民税の特別徴収(事業所が給与から天引して納付)をしている事業所に、毎年5月に各自治体から配布される住民税の決定通知書の様式が来年から変更される。新しい通知書では、従業員の氏名の横に「個人番号」欄が追加。従業員が事業所に番号の提供を拒否したとしても、役所から勝手に送られてしまう。また、郵送方法も自治体により異なる。普通郵便で送る自治体もあり、誤配や事務取扱担当者でない従業員が開封してしまうなど、情報漏えいの危険性が高まり問題である。

保険証との一体化で過大な負担

 厚労省は個人番号カードに健康保険証の機能を持たせオンラインでの資格確認まで検討しており、医療機関では読み取り装置の購入や厳重な安全管理体制整備など過大な負担が科されることになる。通知カードの紛失や番号流出などのトラブルが相次ぐ他、「マイナンバー詐欺」の被害も後を絶たない。国は国民への理解や情報漏えい対策も不備なまま、なし崩し的に運用を進めているが、これ以上の利用拡大は許されない。

 協会ホームページ(会員専用ページ)に「個人番号を提示しない場合の申立書」と、マイナンバーを提出してもよいが、個人番号カードや本人確認書類のコピーを付けたくない場合の「自身の個人番号に相違ない旨の申立書」を掲載しており、参考にされたい。
 

(『東京保険医新聞』2016年12月5・15日合併号掲載)

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