東京自治研―細田病有部長が講演

公開日 2016年12月25日

「病床削減は無意味」―東京の地域医療構想を批判

自治研_参加者
1,015人が参加した
自治研_細田部長
講演する細田 協会理事

 12月11日(日)、「憲法をまもり、いかして、くらし・福祉を充実させる東京へ」をメインテーマに、第11回東京地方自治研究集会が明治大学駿河台校舎リバテイタワーで開催された。都内59の団体が実行委員会に参加して準備されたもので、各団体、自治体労働者、議員、大学関係者ら延べ1,015人が参加した。

 協会からは、分科会「東京の医療、介護・福祉」に細田悟病院有床診部長が出席し、「東京の地域医療構想がもたらす病床削減の問題と今後の課題」と題して、講演した。

 細田部長は病床機能報告と地域医療構想の仕組みを説明。そもそも、現在の病床数の急性期への偏りは入院料の調整を行わなかった厚労省が生み出したこと、病床機能報告は、医療機関に負担をかけながら報告をさせており、報告をしない場合は30万円の過料罰則があることなど、様々な問題点を指摘した。

 さらに「7対1病床は2年間で9万床減らすといっていたが、結局1万5千床しか減らせなかった。しかも、仮に9万床削減してもコストは640億円しか削減できない」と述べ、病床削減が現実的に困難であり、「医療費の適正化」として病床削減を行うことの無意味さを強調した。

 東京都の地域医療構想では、慢性期の病床を削減する試算が示された。そのため、在宅医療の必要人数は約52,000人にも上ることから、病床を有する医療機関のみならず在宅医療への影響が懸念されているところだ。また、慢性期の病床で療養を行う患者の多くは帰る場所がなく、そのような患者の住宅確保が課題となっている。

 地域医療構想に関連して財源論についても言及した。現在、高齢者の増加による現役世代の負担増がマスコミを中心に叫ばれているが、実際には高齢者か現役か、という図式でとらえることは意味を失いつつあり、就労する高齢者も増えているため、非就労者を就労者が支える図式でとらえるべきであり、この図式では現役世代の負担は大きな増加とならないとした。

 また、都民医療費の財源のグラフを紹介し、全体の約半分を占める保険料負担の部分で、本来折半の形をとっているはずの負担率が被保険者に多くかかっている点を指摘し、この原因は企業が非正規労働者を雇い、事業主が保険料を支払っていないからだと説明。医療費の削減を唱えながら企業にばかり都合のよい政策を推進している国の態度を批判した。

 最後に、「少しずつ都政も動いてきている。必要なベッドと療養の場を確保するため、地域から声を上げていこう」と訴え、講演を締めくくった。

(『東京保険医新聞』2016年12月25日号掲載)