公開日 2017年05月19日
各地の地域医療構想調整会議―病院名を挙げ病床再編へ―
次期・医療計画にらみ具体化
2018年4月からの第7次医療計画と第7期介護保険事業計画に連動して、地域医療構想調整会議の議論が本格化している。
国の審議会では、全国の地域医療構想調整会議(以下、調整会議)を概ね3カ月ごとの頻度で開催し、4つの病床機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとに具体的な医療機関名を挙げたうえで、役割の明確化、機能転換についての目標などを検討させようとしている(表1)。
これを先取りして、青森県では、県内の国公立病院を統合・再編するとともに、国保病院の病床を「回復期」に分化して病床を削減し、町立病院を慢性期病床あるいは特別養護老人ホームへ転換させることなどが検討されている(表2)。
国は病床数の将来推計を示すだけで、実際の病床再編等は都道府県の“協議”と、医療機関同士の“自主的な取り組み”に押し付けるという異様な構図が動きはじめている。
▼噴出する患者の行き場を危惧する声
国が都道府県に策定させた「地域医療構想」に基づいて、東京都でも13の構想区域(二次医療圏)ごとに「第1回地域医療構想調整会議」の開催を済ませている。さらに、共通する課題の抽出や構想実現に向けた進捗状況の管理を担う「地域医療構想調整部会(以下、部会)」を新たに立ち上げている(表3)。
第1回の部会では、2016年12月から2017年1月にかけて開催された各地の調整会議での意見が紹介された。このうち、国が定めた推計方法により算出した2013年と2025年の病床数の比較で、都内で9,000床近く減少となる「慢性期」と、5万人近く需要患者が伸びる結果となった「在宅医療等」の各将来推計によって、患者の行き場を危惧する声が、医療現場から多数寄せられている(表4)。
東京都は、各地の調整会議の委員らに、改めて基本的な制度・用語の定義を解説し、疑問点の洗い出しや情報共有につとめていた。しかし委員からは、国の定めた「地域医療構想における用語の定義(高度急性期など)」が曖昧であるとの批判や、2018年4月の医療・介護同時改定は、さらに厳しい内容になることが予想され、将来の見通しなど、およそ困難であるとの声も出された。特に、「病床機能報告と将来推計の差を見て、『この機能をやれ』と上から言われるのではないかと心配している」との声は、まさに都内の病院が置かれている状況を映し出している。
▼国は重症な患者さえも在宅へ誘導
2016年4月実施の診療報酬改定では、いわゆる「在宅専門診療所」の類型を新設したほか、在宅時医学総合管理料等では、従来の看取り数等に加えて、重症者に高い報酬点数を新設した。これは、重症患者を今まで以上に病院から退院させて、在宅へ誘導しようとする国の狙いが露骨に現れている。
入院設備を持たない診療所であっても「地域医療構想は病院の問題、ベッドの問題」と聞き流すことはできなくなっている。地域の入院・入所の環境を含め、患者の流れがどのように変えられようとしているのか、注視していかなければならない。
(『東京保険医新聞』2017年5月5・15日合併号掲載)