【シリーズ】参議院選挙後の患者負担増計画(2)/受診時定額負担の上乗せ

公開日 2016年05月25日

窓口負担に定額負担を上乗せ

政府は遅くとも2017年度の国会で、かかりつけ医以外の医療機関を受診した場合、医療保険の自己負担分に加えてさらに一定の額を患者に負担させる「受診時定額負担制度」を導入する計画である。別途負担の金額については100円から数百円とする方針だ。

日本医師会は、最初は100円でスタートしたとしても、これまでの国のやり方では100円が200円、500円と負担額を増やしていくのではとの懸念を表明した。

73年に無料化された高齢者の窓口負担が、83年に400円の定額負担が導入されてから、現在の定率負担まで拡大してきたことを見ればこの懸念は当然である。

仮に、定額負担が500円ともなれば、5,000円の医療費がかかった場合、患者は3割負担分の1,500円に500円を加えた2,000円を負担することとなり、実質4割の負担となってしまう(図1)。

図_窓口負担上乗せ

75歳以上の窓口負担は2割に

さらに、政府は2019年度以降、75歳以上の医療費窓口負担を現状の1割負担から2割負担に引き上げたいとしている(図2)。

図_75歳以上窓口負担2割

「高齢者と現役世代との不公平の是正」を理由に挙げ、単純に受診1回の負担割合のみが強調されている。

しかし、厚生労働省の『年齢階層別1人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較(2013年度実績に基づく推計値)』によれば、年間の自己負担額の平均は15歳~64歳が3万6,200円、65歳以上が8万400円である。高齢者が優遇されているというのは暴論ではないだろうか。

協会が昨年実施した「患者受診実態調査」では、高齢者医療2割負担化で「受診抑制がさらに進む」と72.8%が回答している。また、患者の一部負担金の増額や受診抑制は、決して医療費の抑制につながらず、救急医療の利用や重症化が増え、かえって医療費高騰を招くとの懸念も多数寄せられた。

(『東京保険医新聞』2016年5月25日号掲載)