公開日 2017年08月02日
本紙既報のように、6月9日閣議決定された「骨太の方針2017」は、区市町村の一般会計から国保への法定外繰入金について計画的な削減・解消を明記した。
2018年度からスタートする国保の都道府県化は、区市町村による独自財源の投入を前提とせず、医療給付費を保険料に直接連動させる仕組みである。国保料の負担緩和等を図るために投入されてきた法定外繰入金が廃止されると、ただでさえ引き上げが繰り返されてきた国保料の上昇に歯止めがかからなくなる。
<東京の区市町村国保 収入の内訳>
上の図は2015年度の東京の区市町村国保の単年度収入である。総額1兆6,000億円のうち、保険料が占める割合は20.9%だ。一方、法定外繰入金は7.3%である。この法定外繰入金がなくなると、まるまる保険料に上乗せされることになり、保険料の占める割合が20.9%から一挙に28.2%になってしまう。同年度の東京の区市町村国保加入者一人当たりの平均保険料(退職者を除く)は、9万9,102円なので、これが13万3,716円に跳ね上がることになる。
2015年度の法定外繰入金は全国で総額3,856億円である。そのうち東京の法定外繰入金は1,169億円で全国総額の3割を占めている。このことからも国保料を引き上げるなという都民の声を反映した一般財源の投入が東京の国保を支えてきたことが判る。
国民健康保険法第一条には「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」とある。法定外繰入金の廃止は、国民皆保険制度の最後の砦である社会保障としての国保を破壊するものであり、到底容認できるものではない。
いま、国の施策に従い東京でも国保料滞納者への差し押さえや機械的な資格証明書の発行に走る自治体が出てきている。このような動きに歯止めをかけ、払える国保料にするためにも、区市町村による一般財源の投入を拡大・継続させると共に、都と国の負担、なにより引き下げられ続けてきた国庫負担の拡大を求めていかなくてはならない。
(『東京保険医新聞』2017年7月25日号掲載)