【レポート】原水爆禁止2017年世界大会 in長崎

公開日 2017年08月25日

画期的な核兵器禁止条約

 8月7日から9日にかけて、「原水爆禁止2017年世界大会 in長崎」が開催された。東京反核医師の会では8月8日に開催された分科会「映像のひろば」の企画と運営に参加した。東京保険医協会は東京反核医師の会を支援しており、事務局員2人を派遣した。

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核兵器禁止条約締結を受けて

7日の開会総会では、主催者代表の安斎育郎氏(立命館大学 名誉教授)から、7月7日に国連で成立した核兵器禁止条約について「核兵器保有国や日本をはじめとする核の傘の下にいる国々が参加していないというアキレス腱を抱えながらも、核兵器の使用だけでなく使用をちらつかせること(威嚇)をも禁じているところや、前文で『ヒバクシャ』に触れている点など非常に革新的な条約であり、条約締結のためにこれまで長い間力を尽くしてこられた皆様に敬意を表する」と挨拶し、「われわれは微力ではあっても、無力ではない。条約をパーフェクトなものにするために、努力を積み重ねていこう」と述べた。

また、中満泉国連軍縮担当上級代表は「核兵器に対する人道主義的な取り組みと安全保障上の視点は必ずしも対立するものではない」とした上で、「核兵器禁止条約は、画期的な内容であり、核兵器に依存する国々への警鐘でもある」と述べた。また、核保有国が核兵器の近代化を進めていることに危惧を表明し、「核の緊張が高まるなか、さらなる軍縮を進めるために、立場を越えた対話と調整が必要だ」と発言した。

分科会「映像のひろば」を企画運営
平和な世界を残したい

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上映後は参加者で意見交換を行った

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多くの経験や感想が寄せられた

分科会「映像のひろば」を開催

8月7日の分科会「映像のひろば」は2008年の世界大会でアニメーター・監督の有原誠治氏を中心に立ち上げられた企画で、反核・平和に関連した映画を鑑賞し、その感想や意見を交換し、参加者の今後の活動につなげることを目的としたもの。会場には、例年を上回る約250人が参加し、うち初参加が約90人にのぼった。

東京反核医師の会からは、矢野正明代表委員(東京歯科協会)が司会を、開会の挨拶を渡辺吉明運営委員が担当。渡辺委員は、東京反核医師の会の成り立ちと活動について説明し、「映像のひろば」には第1回から企画運営に携わっていることを紹介した。

上映作品は、午前中は第五福竜丸事件をはじめとしたアメリカの核実験による放射能汚染の被害と原水爆禁止署名運動に立ち上がる人々を追った「永遠なる平和を~原爆の惨禍~」、第3回原水禁世界大会の模様を取り上げた「戦争のない未来を~第三回世界大会記録」。午後は、ロシアの原子力政策の実態を告発する「不毛の地」「ハンヒキヴィ・ワン」。

原子力と日常生活との関わりを実感した体験も

大学院で原子力の研究をしていたという男性は、「原子力関連の学術研究会には三菱や東芝など原子力推進企業が関わっている。ある時、業界関係者が『原子力産業に反対するとわれわれの食い扶持がなくなる』と発言するのを聞き、社会への影響より自分たちの給料が大切なのかと衝撃を受けた」と語った。また、「永遠なる平和を」を見て、「当時の人たちが、水爆の危険性を自分たちの生活の問題としてリアルに認識していたことがわかった」と述べた。

茨城県東海村出身の女子高校生は、「普段何の不自由もない生活を送っているが、スマートフォンの災害時デモンストレーションで“原発事故が発生した”というメールを受け取った時に、初めて原発とともに生きることの危うさを感じた」と体験を語った。

また、群馬県在住の保育士の男性からは「『自分たちの代では無理でも、子ども、孫の世代には平和な世界を残したい』という映画のなかの言葉に、日々子どもに接する人間として強く共感した」との感想が寄せられた。

その他、「原水爆を開発した研究者たちは、いったいどんな思いで作ったのか」、「原子力産業の実態を告発した女性がスパイ扱いされて国外亡命を余儀なくされたシーンを見て、警察国家となったロシアの恐ろしさを感じた。共謀罪が施行された日本でも他人ごとではない」「野党と市民の共闘が叫ばれる現在、原水禁運動も分断を乗り越えて共闘を模索するべきだ」など、年齢、性別、出身、職種に関係なく、さまざまな層の参加者から、感想や自身の体験、取り組みなどについて発言があり、豊かな対話の場となった。

(『東京保険医新聞』2017年8月25日号掲載)

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