公開日 2018年02月09日

損税解消先送り、消費税10%は実施
協会経営税務部は1月13日、税制改正セミナー「2018年 税制改正大綱の行方~医院経営・国民生活への影響」を開催、32人が参加した。講師は、協会保険医サポートセンターの奥津年弘税理士(東京あきば会計事務所)。
消費税「損税」解消先送り
医療税制では、社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置および所得計算の特例(措置法26条)は継続された。消費税率「10%の引き上げを2019年10月に確実に実施」する一方、医療機関の損税解消については来年度に先送りした。奥津氏は、「消費税10%を目前に、もはや土俵際。これ以上対策を引き伸ばすことはできない。抜本改正には『ゼロ税率(免税)』適用しかない」と政府の姿勢を批判した。
所得税は20年改定、全般的に増税
個人所得課税では、2020年から給与所得控除額、公的年金等控除額を一律10万円引き下げ、基礎控除額を一律10万円引き上げる。
さらに、給与所得控除額の上限額が適用される給与収入を1,000万円超から850万円超に引き下げ、控除額上限を220万円から195万円に引き下げた上、合計所得金額2,500万円超の基礎控除を廃止した。奥津氏は、「2,500万円超とはいえ、基礎控除がなくなったのは戦後初。非常に問題の多い改正だ」と指摘した。
青色申告特別控除は20年以後の所得税について、控除額65万円が55万円に引き下げられるが、法律で規定された電磁的記録による帳簿保存、所得税の確定申告について電子情報処理組織(e-Tax)を使用する場合は控除額が65万円となり、電子申告への誘導策が取られている。
今年1月から配偶者(特別)控除見直し
今年1月からの改定ではあるが、配偶者控除(38万円)については、所得制限が設けられ、給与収入1,120万円超(合計所得金額900万円超)から控除額が縮小し、給与収入1,220万円超(合計所得金額1,000万円超)の場合は適用できなくなる(下表参照)。措置法26条で申告している場合、事業従事の配偶者に対し給与を支給しないで配偶者控除を利用している方もいると思われるが、合計所得金額1,000万円超の方は、専従者給与を支給するかどうか検討が必要だ。
納税者本人の給与年収 | ||||
~1,120万円 | ~1,170万円 | ~1,220万円 | 1,220万円超 | |
配偶者の年収 (103万円以下) |
38万円 | 26万円 | 13万円 | 0 |
同上で配偶者が老人控除対象 | 48万円 | 32万円 | 16万円 | 0 |
また、配偶者特別控除については、今年1月以降は、対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(現行38万円超76万円以下)に枠が広がる。クリニックによっては、103万円手前で働く時間を調整しているスタッフも想定されるが、例えば給与収入1,120万円以下の配偶者特別控除額は、スタッフの給与収入103万円から150万円までは、38万円と配偶者控除と同額となる。
しかし、本人の非課税点はあくまで103万円(住民税は100万円)であり、給与収入130万円以上になると、健康保険・年金に単独加入するという別の壁があるので注意が必要だ。
中間層・庶民増税、抜本的な転換必要
奥津氏は、「17年3月時点の法人企業統計によれば、資本金10億円以上の大企業の内部留保は406兆円で前年度比28兆円増となっている。減税しても内部留保が増えるのみで意味がない。給与所得控除の縮減を中間層から低階層へとすすめる一方、富裕層の収入の多くを占める金融所得への税率20%を優遇したままなのは、明らかに不公平である」として、税制の抜本的転換の必要性を強調した。
(『東京保険医新聞』2018年2月5日号掲載)