【パブリックコメント】東京都保健医療計画(第六次改定)(案)に対する意見

公開日 2018年02月05日

東京保険医協会は1月22日、東京都福祉保健局 医療政策部 医療政策課 保健医療計画担当宛に「東京都保健医療計画(第六次改定)(案)に対する意見」として下記内容を提出した。

東京都保健医療計画(第六次改定)(案)に対する意見

2018年1月22日

東京保険医協会 病院・有床診部長 細田 悟
地域医療部長 森本 玄始

日頃より都民の命と健康を守るため、日々ご尽力くださっていることに敬意を表します。
東京都保険医療計画(第六次改定)案に対する意見募集に対し、下記の通り意見を提出いたします。

一、79頁「看護職員等の人材確保と資質の向上」について
*第2部 計画の進め方/第1章 健康づくりと保健医療体制の充実/第2節 保健医療を担う人材の確保と資質の向上/4 看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)

【意見】
 看護職員の確保困難、看護職員の需要の著しい増加への対応として、東京都の医療計画案で掲げているように、養成・定着・再就業対策等をとることは切実な課題だと考えます。同時に考慮すべきことは、看護職員を確保するために医療機関が有料職業紹介事業所を利用する場合、高額な紹介手数料を有料職業紹介事業所に支払うこともあり、医療機関にとって大きな負担となっていることです。
 合わせて、看護職員に転職支援金で転職を促すなど、行き過ぎた転職勧奨を行い医療機関への定着を妨げる行為をする有料職業紹介事業所もいます。一部の悪質な有料職業紹介事業所の調査・規制も含めて、看護職員確保対策を推進していただくことが必要です。

二、197~198頁「救急搬送患者の軽症割合」について
*第2部 計画の進め方/第1章 健康づくりと保健医療体制の充実/第4節 切れ目のない保健医療体制の推進/7 救急医療/課題と取組の方向性/<課題3>救急車の適正利用の推進

【意見】
 救急搬送患者に占める軽症者の割合は、搬送先の医師の診察にもとづき、結果として入院を要しなかった患者が50%以上であったに過ぎず、一概に「救急搬送の必要性がなかった」とは判断できません。
例えば、ぜんそくの重症発作で搬送されるも、点滴投与等で状態が回復したため入院しなかった場合や、頭部や上肢の外傷で搬送されるも、応急処置・手術等の後は歩行可能なため帰宅し入院しなかった場合など、入院しなかったからといって軽症で救急搬送が必要でなかったとは言えないことは明白です。
 評価指標として目標値を定めて取り組むことには慎重であるべきと考えますが、少なくとも、本文中に「結果として」などと追記するほか、前述の実態もあわせて記載してください。

(理由)
 昨今の救急体制において、受入病院側が「(夜間帯は)認知症患者は付き添いがないと受入困難」と回答したり、高齢者施設等で「協力医療機関が分からない」など運営体制が不十分であったり、さらに一部の都民に頻回救急要請事例(ex.年183回以上、)が報告されるなど、いまだ多くの課題が挙げられていることは事実です。
 しかし、とりわけ全搬送の約35%を占める75歳以上の高齢者(独居、夫婦世帯、老々介護、認々介護世帯など)について、単に「搬送したものの入院しなかった」という結果だけをもって、“軽症患者”とすることには疑問が残るのではないでしょうか。
都民に対する「#7119の認知率向上」や「利用に際しての啓蒙活動」をいっそう充実させることには賛同するものの、評価指標として“軽症患者”の割合を下げる目標を掲げることには慎重であるべきと考えます。

三、265頁「訪問診療、在宅ターミナルケアを受けた患者数」について
*第2部 計画の進め方/第1章 健康づくりと保健医療体制の充実/第4節 切れ目のない保健医療体制の推進/12 在宅医療/評価指標

【意見】
 評価指標として、「訪問診療を受けた患者数」および「在宅ターミナルケアを受けた患者数」を、それぞれ増やす目標を掲げることには慎重であるべきと考えます。

(理由)
 確かに原案でも記載されているとおり、東京都地域医療構想における2025年に向けた訪問診療(在宅医療)の必要量は、推計値ではあるものの約1.5倍(+46,717人/日)とされています。さらに2018年4月の診療報酬改定においても、“入院から在宅へ”の方針のもと、いっそうの算定要件、各種加算・減算の見直しが想定されます。
 しかし、その他の指標である「訪問診療を実施している診療所・病院数」や「訪問看護従事者数」「退院支援を実施している診療所・病院数」などの体制充実とは異なり、前述の2つを計画上の目標に掲げた場合に、その数字ばかりにとらわれてしまう恐れがあります。
 現状を数字として共有し、結果として、通院が困難な患者等に必要な訪問診療を提供し、さらに住み慣れた地域での看取り体制を充実していくことには賛同しますが、患者数を評価指標として目標に掲げることについては慎重にすべきと考えます。

四、309頁「高齢者向けの住宅の確保・居住支援の推進」について
*第2部 計画の進め方/第2章 高齢者及び障害者施策の充実/第1節 高齢者保健福祉施策/課題と取組の方向性/<課題1>介護サービス基盤の整備、<課題2>高齢者の住まいの確保

【意見】
 取組みとして新たに「低所得者を対象に認知症グループホーム等への入居に要する家賃負担の軽減」を検討してください。

(理由)
 この間、東京都では独自の認知症グループホーム施設整備を進めており、昨年12月に発表された「2020年に向けた実行プラン」や「東京都高齢者保健福祉計画」等においても、2025年度末までに“定員2万人分”確保を目標に、認知症の人とその家族が安心して暮らせる環境を目指すとしています。
 一方で、とりわけ低所得の認知症高齢者が、認知症グループホームへの入居を希望しても、家賃等の経済的な負担が高額なため、入居をあきらめたり、退所を余儀なくされたりする事例が散見されます。
 東京都「介護サービス情報 公表システム」によると、2018年1月時点で公表されている都内の認知症対応グループホーム598施設(島しょ部を除く)の月額家賃は、平均7万6,638円(最高19万4,000円、最低3万3,000円)、このほかに敷金(最高50万円)や入居一時金(最高60万円)などが必要となる場合もあります。当然これらは、必要な介護サービス費の利用料とは別に生じるもので、入居を希望する認知症高齢者やその家族にとって、とても安心して暮らせる費用負担ではないと考えます。
 都内で唯一、品川区が独自に「認知症高齢者グループホーム入居者への家賃助成事業」を実施していますが、東京都としても施設整備の推進にとどまらず、とりわけ低所得の認知症高齢者について、必要に応じて入居が可能となるような政策を検討してください。


五、360頁「医療提供施設の果たすべき役割等」について
*第2部 計画の進め方/第4章 計画の推進主体の役割/第2節 医療提供施設の果たすべき役割等/1 医療機能の分化・連携の方向性

【意見】
 病床の機能分化について、基本的には医療機関の自主的な取り組みと地域医療構想調整会議を中心とした医療機関相互の協議を前提とすることになっております。しかし、2013年の病床数と比べて、2025年の病床数の必要量が約9,000床近く削減する推計結果となった慢性期病床について、構想区域ごとの調整会議によって推計結果通りの強引な病床削減がされることがないように、東京都として主導的な役割を発揮してください。また、都民が必要とする病床数を堅持してください。

六、367頁「医療提供施設の果たすべき役割等」について
*第2部 計画の進め方/第4章 計画の推進主体の役割/第2節 医療提供施設の果たすべき役割等/2果たすべき役割/(1)新公立病院改革プラン策定病院/ア 都立病院/<医療機関別の役割と取組の方向性>/2 都立広尾病院

【意見】
 都立広尾病院については昨年、移転問題が浮上していましたが、現地建て替えの方向で進んでおり、東京都病院経営本部が発表した基本構想案では、病床数を現在の478床から400床に減らすことが示されています。
 しかし、367頁にもあるとおり「初期救急から三次救急まで総合的かつ高度な救急医療を提供するとともに、都心部唯一の基幹災害拠点病院として」の機能を十分に果たすためには病床削減は適切ではないと考えます。病床削減することなく現地再整備をすることが必要です。

以上

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