【反核医師の会/総会・記念講演】アメリカ人が見た「思いやり予算」

公開日 2018年03月06日

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ユーモアを交え在日米軍問題を問う

2月3日、東京反核医師の会は第30回総会・記念映画上映会&講演会を開催し、35人が参加した。総会では向山新、矢野正明両代表世話人が、2017年9月4日~6日IPPNW(核戦争防止国際医師会議)世界大会の参加報告を行い、同年7月7日の核兵器禁止条約の採択を受け、今後の取り組みについて活発な論議が行われた旨を解説した。

その後、映画「ザ・思いやり」の上映会および、監督であるリラン・バクレー氏の講演会が行われた。

「ザ・思いやり」は、在日米軍駐留経費負担、いわゆる「思いやり予算」をテーマにしたドキュメンタリー。米軍の軍事増強、家族の住宅や学校、娯楽施設の建設、さらに米兵の犯罪の賠償金など、その規模は広範で、30年間で5兆円を超える額が日本国民の税金から支払われている。一体なぜ?という素朴な疑問を元に、神武寺駅、横須賀、沖縄、グァムへ突撃取材を敢行。

印象的なのは、アメリカのカリフォルニア州での街頭インタビューだ。「思いやり予算」をアメリカの話に置き換えて解説したパネルを見せながら、道行く人々にどう思うか問いかける。一通り感想を聞いたところで、実は日本の問題であることを打ち明ける。

「優先順位がめちゃくちゃ」「予算を国際開発や医療に回すべき」「日本はなぜ米軍にいてほしいのか?」と各国の人々がその理不尽さに驚くなか、日本からの旅行者が「そんなひどいことが起こっているなんて知らなかった」とつぶやく。

監督のリラン・バクレー氏は、テキサス州出身のアメリカ人、日本で暮らし始めて20年以上になる。映画を撮り始めたのは、米軍のヘリがバグダッドの上空から民間人を虐殺している動画を見たのがきっかけだ。米軍は海外で何を、何のためにしているのか、知識ゼロの状態から取材をスタート。3年をかけて、ようやく第一弾の映画「ザ・思いやり」が完成した。

映画作りの一番の狙いは、社会問題に普段関心のない人たちに、残酷な現実の問題を、拒否感を与えずに考えてもらうこと。まず「思いやり予算」というお金の話から始め、ユーモアのある演出を盛り込んだ。

現在、第二弾、第三弾を撮影中だが、なかでも一番作りたいのが、核兵器問題を扱った映画だ。「核兵器をなくす、確かな道筋を示す作品を作りたい」と述べた。

会場からは、「米軍の民間人虐殺に対して、米国内から批判の声が上がらないのか。」「社会問題に対して“仕方ない”で済ませてしまいがちなのはどうしてか」など、さまざまな感想・意見が出た。終了後に監督を交えた懇親会が行われ、日米関係や社会運動のあり方など、活発に意見を交換した。(写真は、リラン・バクレー監督)

(『東京保険医新聞』2018年2月25日号掲載)