【解説】配偶者控除、配偶者特別控除の変更点~2017年税制改正大綱から~

公開日 2018年03月19日

2018年1月から配偶者(特別)控除見直し、「103万円の壁」が150万円に

配偶者控除が見直される前は、配偶者の給与収入が103万円以下で38万円の所得控除が受けられ、また103万円超でも141万円までは段階的に配偶者特別控除を受けられました。女性の社会進出を阻む要因の1つとして「103万円の壁」が言われていましたが、その引き上げが図られました。

医療機関に多い、夫の扶養の範囲内で働く妻を医療機関で雇用した場合を例に解説します。

配偶者特別控除の枠が拡大

具体的には夫の給与収入が1,120万円(合計所得金額900万円)以下の場合、妻の給与収入103万円超から150万円までは、配偶者控除と同額の38万円の配偶者特別控除が受けられます。それとともに配偶者特別控除の上限が、給与収入141万円から201万円まで引き上げられました。

従って妻の給与収入が年間150万円以下であれば38万円の控除が受けられ、給与収入が150万円を超えると、給与収入が5万円増えるごとに控除額が段階的に減り、201万円を超えると配偶者特別控除も受けられなくなります(表1)。

表1 配偶者控除 合計所得金額900万円以下※(給与収入1,120万円以下)の控除額
配偶者の合計所得金額 給与収入のみの場合の給与年収 控除額
38万円超 85万円以下 103万円超 150万円以下 38万円
85万円超 90万円以下 150万円超 155万円以下 36万円
90万円超 95万円以下 155万円超 160万円以下 31万円
95万円超 100万円以下 160万円超 167万円以下 26万円
100万円超 105万円以下 167万円超 175万円以下 21万円
105万円超 110万円以下 175万円超 183万円以下 16万円
110万円超 115万円以下 183万円超 190万円以下 11万円
115万円超 120万円以下 190万円超 197万円以下 6万円
120万円超 123万円以下 197万円超 201万円以下 3万円
123万円超   201万円超   0円
※給与所得者の合計所得金額900万円超950万円以下と950万円超1,000万円以下の場合、控除額が削除され、1,000万円超の場合は控除の適用は受けられなくなる。

妻の収入の上限は引き上げられる一方、夫の給与収入が50万円増えるごとに控除額が逓減し、給与収入1,220万円(合計所得金額1,000万円)を超える場合は適用できません。

配偶者控除に所得制限導入

配偶者控除は、夫の所得がどれだけあっても、妻の給与収入が103万円を超えない限り控除できました。

しかし、今回の配偶者控除の改正で、夫の給与収入1,120万円(合計所得金額900万円)以下の場合は控除額38万円のままですが、給与収入1,120万円超1,170万円以下(合計所得金額が900万円超950万円以下)の場合で控除額が26万円に縮小し、給与収入1,170万円超1,220万円以下(合計所得金額950万円超1,000万円以下)で13万円に縮小します。さらに給与収入1,220万円(合計所得金額1,000万円)を超えると控除額はゼロとなります(表2)。

表2 配偶者控除
居住者の
合計所得金額
給与収入のみの場合の
給与年収
控除額
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 1,120万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 1,120万円超1,170万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 1,170万円超1,120万円以下 13万円 16万円
1,000万円超 1,220万円超 0円 0円

「130万円の壁」は依然そのまま

しかし、妻の非課税点はあくまで103万円(住民税は100万円)であり、社会保険・年金の保険料をパート本人が負担しなければならない「130万円の壁(従業員500人超の場合106万円)」は依然そのままです。また、民間企業の配偶者手当の支給要件が103万円の基準のままのところも多く、一定の階層の増税だけが先行する結果となりました。女性の社会進出を進めようとするならば、その妨げとなっている長時間労働、保育所や介護サービスの未整備などの解決が求められます。

青色専従者給与の取り扱いは

措置法26条で申告している場合、事業従事の配偶者に対し、給与を支給しないで配偶者控除を利用している方もいると思われますが、給与収入1,220万円超の方は専従者給与を支給するかどうか検討が必要です。

(『東京保険医新聞』2018年3月5日号掲載)