【主張】今次診療報酬改定を読む―強引な政策誘導に終始

公開日 2018年04月20日

2018年度診療報酬改定には、厚労省の重点項目である「地域包括ケアシステムの構築」と「医療機能の分化・強化、連携の推進」のための施策が色濃く表れている。

入院機能としては、急性期医療を担う病棟を減らし、地域包括ケアまたは回復期リハを担う病棟を支援し、診療実績の評価を強めた。長期療養を担う療養病床について、介護型は介護医療院や介護老人保健施設への転換を進め、医療型は在宅からの受け入れと地域包括ケアとの連携を強化する方向となり、有床診療所も介護連携を評価される形になっている。

「かかりつけ医機能の強化」としては、医療現場から強い要望のあった初・再診料の引き上げがなかった代わりに、地域包括診療料・加算、小児かかりつけ診療料、在宅療養支援診療所による在医総管などを届け出た医療機関で診るすべての患者の初診料に機能強化加算(80点・届出制)が新設され、国の考えるかかりつけ医機能の有無で基本診療料の差別化がはかられた。

また、「オンライン診療」が正式に保険導入された。厚労省が定める情報通信機器を用いた診療に係る「指針」に沿ってあくまでも対面診療の補完として外来と在宅に導入されたが、要件が複雑であり、今後混乱が予想される。

在宅医療では、多職種連携を進めるために複数医療機関による訪問診療が可能となり、また訪問看護、薬剤師などによる在宅医療が推進された。要介護2以上、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱb以上など重症度が高い在宅患者に対して在医総管等に「包括的支援加算」(150点)が設定された反面、月1回の点数が上がり月2回(別に定める状態の患者以外)の点数が下がることで月2回以上の訪問診療を月1回にすることが点数により誘導された。支援診以外の診療所でも、在医総管について診療所単独または他医療機関と連携して24時間往診・連絡体制を確保した場合に算定する継続診療加算(216点)が新設され、この面でも24時間体制をとることへの誘導が行われている。

薬剤では後発医薬品使用がさらに促進され、院内処方では、後発医薬品使用体制加算のうち60%未満区分がなくなり最高85%以上が新設され、院外処方では一般名処方加算1、2がそれぞれ6点、4点と引き上げられ、後発品使用率80%を達成しようとしている。

抗菌薬の適正処方については、「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、上気道炎などの急性気道感染症、急性下痢症に対して初診時に抗生剤を使用しないことを評価した「小児抗菌薬適正使用支援加算」(80点)が設けられた。

リハビリテーションでは、要介護・要支援の患者に対する維持期リハの算定期限が来年3月末までとされた。運動器リハ等を届け出ている医療機関は、介護保険の通所リハの算定を検討する必要も出てくる。

精神科関連では、精神科専門療法の対象となる精神疾患がICD‐10の「精神および行動の障害」「アルツハイマー病」「てんかん」「睡眠障害」とされた。また、従来は診察料に含まれていた長谷川式簡易知能評価スケールが点数化された一方、在医総管・施設総管と在宅精神療法の併算定が制限されている。ベンゾジアゼピン受容体作動薬の12カ月以上の長期継続処方の際、処方料、処方箋料が減算されることになり、機械的な点数引き下げに不満の声が寄せられている。

今次改定を俯瞰すると、医療費削減のために、「入院病床」の抑制と「かかりつけ医機能」の推進に強引に舵が切られたことが分る。診療報酬改定により、あからさまに政策的誘導が図られた形だ。

協会は、今後も診療報酬の不合理点の改善と基本診療料の引き上げ、患者負担の大幅軽減を求めていく所存である。引き続き会員の先生方のご協力をお願いしたい。

(『東京保険医新聞』2018年4月15日号PR版掲載)

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