【解説】有期労働契約労働者の無期転換について

公開日 2018年05月30日

経営労務コンサルタント/社会保険労務士 石田 仁(保険医サポートセンター)

労働契約

労働契約には、期間を定めない契約と期間を定める契約があります。前者は正職員、後者をパート、契約職員、嘱託等の有期労働契約職員として区別しています。この有期労働契約者の法的安定を維持するため、労働契約法では、更新等の法制化(第19条、2012年8月10日施行)、2013年4月1日からは、無期転換制度(第18条)、不合理な労働条件の禁止(第20条)等が定められました。以下、無期転換制度について解説します。

無期転換

例えば、1年契約のパートタイマーが更新を繰り返し、5年経過し、その後の契約期間中に「無期転換」の意思表示をすればその契約期間終了後の翌日から、労働契約期間が、無期になる制度。これが無期転換です。
施行は2013年4月1日からで、その時から1年の有期労働契約を締結し、更新を続けていれば、2018年3月31日には、丸5年になります。そこで更新されれば、2018年4月1日から無期転換権が発生します。

180415_06_図_有期労働契約の無期転換について

無期転換は労働者の意思表示

無期転換は労働者の意思表示で行われ、使用者はこれを拒むことができません。ただ、無期転換で自動的に正職員になるのではありません。労働条件の中身はそれぞれの会社の労働契約や就業規則で定めることになります。期間だけが変更になるのみで、残りの労働条件は従来通りとすることもできます。さらに、積極的に正職員に登用し、同一の労働条件にすることもできます。この手続きを、パート就業規則等のなかに無期転換条項として付け加えることが必要です。

就業規則の定め方

パート等の有期労働契約者が必要だとする使用者もいることから、今後の無期転換への対応として、有期労働者の労働契約または就業規則の定め方について一例を紹介します(下記参照)。



例)就業規則の定め方

(1)無期転換制度を導入する就業規則の作成

無期転換制度は、転換手続きと無期転換後の労働条件について、有期労働者の就業規則に定めます。また、雇用関係が無限にならないように第2定年制を定めることをおすすめします。

 第○○条(無期転換労働契約への転換)
 期間の定めのある労働契約で雇用する契約職員のうち、通算契約期間が5年を超える者は、別に定める様式で申し込むことにより、現在締結している有期労働契約の契約期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約での雇用に転換することができる。
 ②前項の通算契約期間は、2013年4月1日以降に開始する有期労働契約の期間を通算するものとする。現在締結している有期労働契約については、その末日までの期間とする。ただし、労働契約が締結されていない期間が連続して6カ月以上である職員については、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。
 ③第1項の規定により期間の定めのない労働契約での雇用に転換した場合の労働条件は、個別の変更の合意をした条件を除き、原則として転換直前の期間の定めのある労働契約において定めていた労働条件を引き継ぐものとする。
 この場合、満60歳に達する前に期間の定めのない労働契約での雇用に転換した契約職員に係る定年の取り扱いは、第××条に定める60歳とし、満60歳に達した後に期間の定めのない労働契約での雇用に転換した契約職員に係る定年は第××条の規定にかかわらず、満65歳とする。

(2)有期労働契約の最長は5年で、無期転換はしないと定める

今後の有期労働契約では、5年を超える契約はせず、更新の基準についても明記します。

 第○○条(契約の更新等)
 当該労働契約は原則として更新しない。ただし、労働契約満了時において、業務量、業務の進捗状況、勤務成績、勤務態度、職務能力の程度などを判定基準として契約を更新することがある。なお、通算契約期間は、5年を超えないものとする。



上記の例は契約職員就業規則の無期転換規定です。定年は、60歳としています。定年前に無期転換した場合には、定年で雇用関係は終了しますが、高年齢法により正職員と同じく、65歳までの継続雇用措置が義務付けられます。ただ、定年を経た60歳以降の者も無期転換制度の対象となり、65歳を超えると新たな問題が生じます。

具体的には、54歳で有期で契約し、59歳で通算期間が5年を超えて定年の60歳をまたぎ、無期転換となった場合、本来の有期契約の定年60歳とは別に、65歳を定年とする第2定年を定めないと労働契約は限りなく継続してしまいます。

なお、有期雇用特措法の認定申請をすることにより、継続雇用者の65歳以降の無期転換が発生しない特例が設けられています。必要な場合は早めに申請書を労働局に提出し、認定を受けておくことが必要です。

終わりに

無期転換者について、正職員と同じ職務内容、責任範囲、異動の可能性があるにもかかわらず雇用期間だけ無期というのは、「不合理な労働条件の禁止」(労働契約法第20条)に該当する可能性があります。これが「働き方改革」にある同一労働同一賃金の原則ですからご留意ください。

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(『東京保険医新聞』2018年4月15日号PR版掲載)