憲法学習会/五十嵐 仁氏が語る「9条はこれだけ役に立ってきた」

公開日 2018年06月01日

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政策調査部は5月12日、法政大学名誉教授の五十嵐仁氏を招いて、憲法学習会「改憲と日本の政治的状況」を開催し、40人が参加した。

“末期症状”の安倍政権

五十嵐氏は、森友公文書改ざん、防衛省の日報隠蔽、裁量労働制のデータ捏造等々、内政上の混乱と、朝鮮半島の急激な情勢変化によって、客観的には改憲を発議しうる状況にはないと考えられるが、安倍政権は支持基盤である保守層をつなぎとめるために、かえって改憲を止められなくなったのはではないかと指摘した。

また、「改憲」と「壊憲」を区別することの重要性に触れて、憲法第96条に規定されているように「改憲」することは認められているが、憲法改正にも限界がある。国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義という日本国憲法の三原則を変更することは「改憲」ではなく、もはや新憲法の制定(壊憲)であると語った。

日本は「平和の配当」で経済成長を成し遂げた

戦後日本が戦場で一人も殺し殺されなかったことや、防衛費をGNP比1%以下に抑制する政策によって「平和の配当」により経済成長を成し遂げたことは世界の手本となるもので、これらは憲法第9条があったればこそ実現したものだと語り、9条の歴史的意義と国際的価値を評価した。

さらに外交では、9条と99条(憲法尊重擁護の義務)によって対話と交渉をすすめ、東アジアの緊張緩和を促進すべきで、憲法を変える前に憲法を活かすべきだと主張した。

戦争に近づく自衛隊の憲法明記

自民党改憲案は第9条の2を新設し、「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織」として「自衛隊を保持する」ことを明記した。

これについて五十嵐氏は、後法優先の原則や自衛隊の根拠規定が自衛隊法から憲法に変わることで、自衛隊の性質は確実に変質し、日本は戦争に近づく。自衛隊が憲法に明記されれば、公益として徴兵制復活の可能性も否定できないとした。

安倍政権を支持する若者世代こそが狙われている。憲法は未来も拘束し、これから生まれてくる子どもたちは嫌とはいえない。70年かけて実現した自由で民主的な平和国家を守り、次世代に手渡すことが現世代の責任であるとして、「壊憲」阻止を訴えた。

(『東京保険医新聞』2018年5月25日号掲載)