保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【寄稿】『ゼロ税率』導入に期待する

公開日 2018年09月10日

東京保険医協会 副会長 吉田章

周知の通り、消費税は原則として最終消費者が負担するものである。生産から流通等のいわば、途中の事業者は、「課税売り上げにかかる消費税から課税仕入れにかかる消費税を差し引いた額」を消費税として国に納めている。

医療機関の場合はどうか。消費税が導入された際、医療は国民の生命と健康に深く関わっており消費税が上乗せされると患者さんの負担が大きくなるとのことで、政策的に医療費は非課税とされた。しかし、仕入れにかかる消費税は非課税ではない。

通常事業者なら、課税仕入れにかかった分を課税売り上げにかかる分から差し引けるのに、売り上げ(診療報酬)にかかる消費税がないため、そのまま支払っている。すなわち、われわれ医療機関は最終消費者ではないのにもかかわらず、最終消費者とみなされ、本来支払う必要のない消費税を支払っているわけである。医療費の非課税は、医療機関の犠牲の上に成り立っているのである。

これがいわゆる損税で、われわれ医療機関の大きな負担になっている。当院の場合、概算で昨年度約170万円であった。税率が8%に上がった時に経営に大きな影響があったと各所から悲鳴が出たが、さらに10%に上がれば倒産する医療機関が続出するのではないかという危惧も聞かれる。これを解決する策として考えられているのがゼロ税率で、医療を課税とした上で税率をゼロ%とすれば、診療報酬にかかる消費税はゼロ円のままで、患者さんの負担も増えず、医療機関は仕入れにかかる消費税についても「課税売り上げにかかる消費税-課税仕入れにかかる消費税」の式から「ゼロ円-課税仕入れにかかる消費税」を納付、すなわち同税を還付されることになる。

一方、厚労省は損税対策として、損税に見合う分を診療報酬に上乗せしているとしている。最終消費者である患者さんに払ってもらうという点では一見よさそうだが、各医療機関によって、診療行為の種類や頻度、必要な器材は異なり、診療報酬に対する損税の割合もそれぞれ異なり上乗せも個別対応が必要なはずだ。
現方式では対応しきれないのは明らかである。

加えて、上乗せ額の計算根拠は厚労省から示されておらず、不透明な数字である。つまり、診療報酬上乗せという損税対策は不満をかわすだけの弥縫策に過ぎないといってよい。そもそも、患者さん負担軽減の観点から、診療報酬を非課税としたはずなのに、そこで生じる損税を補填するため診療報酬に上乗せすることは、当初の趣旨に反しているのではないか。

消費税はもともと低所得者層に負担が大きく問題が多い税制であるが、もし、このまま続くのなら、根拠が不透明で実効性が疑わしい診療報酬上乗せをやめ、本来負担する必要のない消費税を医療機関に課することのないよう、ゼロ税率を導入することが必要であると考える。

*輸出企業は国外から消費税を支払ってもらうことができないという理由で、仕入れにかかる消費税は全額還付されている。

(『東京保険医新聞』2018年8月25日号掲載)