【参加記】日常診療研究会 求められる適切な指示と対応

公開日 2019年01月07日

[写真]0927日常診療研究会(妊婦診療)

「妊婦に優しいお医者さんに」(参加記:墨田区会員)

 2018年4月から、「妊婦加算」が保険診療に加わった(※)。これは、たとえ産婦人科を標榜しない医師であっても、妊婦に対して適切な指示と対応が出来るようになることを、国が推奨、そのためのスキル磨きが医師全員に対して期待されていることなのだと、私は受け止めている。「妊婦に理解ある妊婦に優しいお医者さん」に、なりたいものである。

 そんな私の想いを汲み取ってくださったかのように、協会でも「妊婦の診療で気をつけたいこと」をテーマにした研究会が9月27日に開かれた。

 「知っておきたい妊婦さんと薬の上手な付き合い方」(村島先生)では、「動物実験で得たデータが必ずしもヒトにも適応するわけではない」にも関わらず、またヒトでの使用経験による実績の蓄積がなにより大事であるにも関わらず、動物実験結果で作成された「禁忌」が長く書き換えられることがないという実情、「妊婦と薬」をテーマにした研究の場に、いま現場で実際に診療をしている医師の積極的な参加(報告)がないことが問題であることを知った。

 そもそも胎児の発生(妊娠週数)によって、気をつけるべき問題が違うが、「妊婦だから一律この薬はダメ」という、なんでも一括りの安易な考えが有益な医療の妨げになる。一方、「外用薬なら安全ではないか」という妊婦側の思い込みによる湿布薬やイソジンガーグルの乱用が思わぬ問題を引き起こすことも。

 多くの薬剤が、自然流産率(15%)や奇形の自然発生率(3%)と変わらないレベルの危険度であり、いかに正しく妊婦に説明できるか、適切な場面で適切にお薬を処方する医師の裁量が最も大事であることが改めて心に刻み込まれた。

 後半の「妊婦での医療被ばくの考え方」(有泉先生)では、放射線の線量や単位などの基本から丁寧にご教授いただき、この手の話しは、からっきり苦手の私にも大変よくわかるご講演で、真に頭が下がった。

 臓器別の「しきい値」の考え方、ホルミシス効果、確定的影響と確率的影響の違いの詳しい説明も、とてもわかりやすく、非常に勉強になった。

 大事なポイントは、100ミリグレイ。胎児線量がこれ未満であれば、被ばくを理由に中絶を考える必要はないこと、それは骨盤CTで3回分、X線写真で20回分でも超えないレベルであるという明確な目安を知り、妊婦患者への説明に、わかりやすい指針をいただいた。

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◆演題
▼知っておきたい、妊婦さんと薬の上手な付き合い方
 村島 温子 氏
 (国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター
  主任副センター長/妊娠と薬情報センター センター長)
▼妊婦での医療被ばくの考え方
 有泉 光子 氏
 (東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 画像診断部 部長)
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(※)妊婦加算は、2019年1月1日から当面の間「凍結」とされました(関連記事)。

(『東京保険医新聞』2018年11月5日号掲載)

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