保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

柳原病院事件乳腺外科医の控訴に反対する声明

公開日 2019年02月20日

2019年2月20日

柳原病院事件乳腺外科医の控訴に反対する声明

東京保険医協会 会長  鶴田 幸男
〒160-0023 東京都新宿区西新宿3丁目2番地7号
電話03-5339-3601

 今回の東京地方裁判所の無罪判決は、警察庁科学捜査研究所のDNA鑑定およびアミラーゼ反応に対する非科学的手法とサイエンスリテラシーの欠如を認めた点や、術後せん妄に対する医学的考察を尊重した点からみて、極めて妥当な結果です。よって、この判決が法曹における判例になるだけではなく、医学においても症例として広く周知され、本邦の医療界で遅れている術後せん妄への対策議論を進め、同様の悲劇が再び起こらないようにするためにも控訴されないことを強く要望します。
 本事件は、全国医療施設の日常診療の中で起こる可能性があり、容易に控訴されるようであれば、医療崩壊を誘発する可能性のある社会性が強い事件です。再発防止のためには、現場医療者と医療界全体が真摯な姿勢で術後せん妄に正面から向き合う必要が確かにあります。しかし、現時点においては控訴しないことが最も重要であると思料いたします。
 2016年5月10日の手術から一審無罪まで実に1016日。本判決に対する控訴は、無実の罪で逮捕から105日間勾留され起訴された医師をより不幸にするだけではありません。真実はせん妄状態であったことを警察や検察が理解させようとしなかったために、今も性被害体験が現実のものであると誤認し続けている患者さんの不幸をも遷延させることになります。両者の人権を擁護すべき観点からも控訴すべきではありません。
 一審無罪判決で終わった福島県立大野病院事件において、検察が控訴しなかったことは、極めて冷静で医学の常識に沿った判断でした。この事件に鑑み、本件においても、警察の科学の前提を逸脱した捜査への反省、臨床現場における術後せん妄の実態、そして「ヒポクラテスの誓い」時代からの通常の医療倫理を具備した医師や、「ナイチンゲール誓詞」のもとに誓いをたてた看護師が法廷でも宣誓して陳述した内容を客観的に勘案し、控訴しないよう求めます。

以上

190220【声明】柳原病院事件乳腺外科医の控訴に反対する声明[PDF:89KB]

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