麻疹風疹研究会「早期診断・早期対応を」

公開日 2019年07月30日

 研究部は7月8日、「今、話題の麻疹と風疹について考える~東京オリンピック・パラリンピックに向けて~」と題して、麻疹風疹研究会を開催し、50人が参加した。講師は国立感染症研究所感染症疫学センター第3室長の多屋馨子氏。

 2020年には麻疹が流行している国からの来訪者が今年以上に多くなることが予想され、国内の風疹が外国へ出ていくおそれもある。麻疹も風疹も予防接種で防げる感染症であることから、多屋氏は身近にできる対策として医療機関職員への予防接種、早期診断・早期対応の重要性を訴えた。

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麻疹/医療機関、学校職員への予防接種を推奨

 今年は麻疹が世界中で大流行しており、国内においても海外からの輸入例が毎週報告され、特に都内での報告が急増している。

 患者は予防接種歴不明の若年成人に多く、医療機関や企業での集団発生も複数報告されている。2019年4月には、「麻しんに関する特定感染症予防指針」が改定となり、麻疹に未罹患、麻疹の罹患歴が不明の医療機関、学校等の職員には2回の予防接種を強く推奨することが盛り込まれた。

 軽症で感染力の弱い修飾麻疹は、潜伏期間が典型麻疹に比べるとやや長く、症状のみでの診断は困難なため検査診断が必要であり、また予防接種歴、接触歴だけでなく1カ月以内の海外渡航歴の確認も問診に必要であることを説明した。

 

風疹/クーポン券で風疹抗体検査が無料に

 また、2018年夏から首都圏を中心に流行が始まった風疹は、2019年に入ってからも流行が継続しており、医療機関、学校等の職員等も複数発症している。

 罹患者は予防接種を受けていない成人男性が多いことから、1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性を対象に、風疹第5期定期接種が実施されている(2022年3月31日まで)。クーポン券を持っていれば、全国どこでも無料で抗体検査が受けられ、抗体が低かった場合にはMRワクチンの接種も受けられる。風疹第5期定期接種の対象者は、この機会にぜひ抗体検査・MRワクチン接種を受けてほしいと訴えた。

 参加者からは、「妊婦や子どもも受診する、隔離施設の整っていない医療機関で、疑わしい患者が受診した場合、どのようにしたらよいか」「CRS(先天性風疹症候群)の乳児を診療することになったが、どのような注意が必要か」等の質問が出された。また、「日々の診療で活かせる内容で大変勉強になった」等の感想もフロアーから寄せられた。

 最後に申偉秀研究部長が「麻疹・風疹の流行は一年後にどうなっているのかわからないが、医療機関としてできることから取り組んでいきましょう」と挨拶し、盛況のうちに閉会した。

 

(『東京保険医新聞』2019年7月25日号掲載)