医院経営セミナー 税理士の活用法 学ぶ

公開日 2021年11月12日

 経営税務部は10月9日、医院経営対策セミナー「税理士の上手な活用法~税理士と二人三脚で経営に取り組むには~」を開催し、会場およびオンラインで47人が参加した。

 コロナ禍において、経営対策や新たな補助金の処理など、税理士との連携がこれまで以上に重要になってきている。

 共に医院を発展させていくための税理士との付き合い方について、井上礎幸税理士(多摩合同会計事務所)、平澤康大税理士(税理士法人第一経理)、また顧問税理士を変えた経験について吉田章医師(よしだ内科クリニック)が報告し、意見交換した。


税理士に相談できる内容や、医療分野に強い税理士の条件、顧問料など、具体的なケースを交えて報告し、意見交換した(10月9日、セミナールーム)

何でも相談できる税理士を 井上 礎幸 税理士

 
 井上 礎幸 税理士

 税理士は税務署OB等の試験免除制度利用者が3割近くおり、営業形態も税理士1人で職員30人という事務所もあるなど多様だ。

 付き合いやすさや話しやすさが税理士選びにおける一つの基準になる。合わないと感じるならば、ミスマッチが長く続くより顧問契約をやめた方が断然良い。

 税理士は懐事情を全て知っているため、嫌がらせ等を心配する方もいるが、今はそういうことが許される時代ではない。

 開業当初は、従業員の給料を払う、源泉徴収を行う、年末調整をするなど、勤務医時代にはなかった様々な手続きが出てくるので質問も多いが、徐々に少なくなる傾向がある。税理士には顧問料という形で毎月報酬を支払うため、何も相談しないのはもったいない。

 税理士は、なかなか話しづらいお金の相談を気兼ねなくすることができる存在だ。開業時の悩みと、その10年後の悩み、引退間近の悩みはそれぞれ違うはずなので、ぜひ様々なことを相談してもらいたい。

医療分野に強い税理士とは 平澤 康大 税理士

 
 平澤 康大 税理士

 医療分野に強い税理士の要素としては主に、医療機関への情報提供が早い、他院の動向やノウハウを教えてくれる、業界特有の相談ができる、の3つがある。

 たとえば昨年の感染拡大防止補助金で当初家賃は対象に含まれていなかったが、紆余曲折あり最終的に含まれるようになった。また、税務上は問題なくとも医療法上問題となるケースも多く、注意が必要だ。たとえば院長が使用する社宅について、税務上は家賃の半分を支払っていれば問題ないが、医療法上は福利厚生で従業員も同じように規定しなければならないケース等がある。

 医療法人といっても病院のような大規模なところから家族経営まで様々で、税理士への相談も多様であり、税金以外の内容も多い。増患対策や後継者選びの相談に始まり、弁護士やファイナンシャルプランナーの紹介、果ては子どもの家を選んでほしいという相談を受けることもある。

 相談にあたっては、断片的な情報が与えられているのと、顧客の置かれた状況の全体像を把握しているのとではアドバイスが全く違ってくることもある。税理士には税金のことだけではなく、お金に関する様々な問題をまとめて相談した方が良い。

大切なのは「自分に合うか」 吉田 章 医師

 
 吉田 章 医師

 最初は深く考えずに知り合いから紹介された税理士に決めたが、非常に細かい確認をするため、まるで調査されているかのような気持ちになり、会うのがストレスになっていった。

 税理士を変えるという発想はなかったが、保険医協会に相談したところ、変えるという選択肢があることを知り、新規開業医講習会を担当していた税理士を紹介してもらった。

 引継ぎはスムーズに行われ、新しい税理士は3カ月に1度の訪問の際に分からないところは相談に乗ってくれて、売り上げの分析もしてくれる。顧客の立場に立ってくれる姿勢が感じられ、ストレスが全くなくなった。

 税理士は自分に合うかどうかが一番大切だと思っている。

活発な質疑応答

 質疑応答では、顧問料の最低額や、医院でどの程度記帳すべきか等、具体的な質問があった。

 参加者からは、「色々な税理士がいることがわかった」「継承した税理士のままで良いのか考えていたので参考になった」「またさらに踏み込んだ話を聞きたい」等の感想が寄せられた。

(『東京保険医新聞』2021年11月5日号掲載)