ジェネリック・シンポジウム―ジェネリックにどう向き合うか

公開日 2023年02月02日

研究部長 申 偉秀

 12月18日、研究部はジェネリック・シンポジウムを開催し、会場13人、Zoom35人が参加した。国がジェネリック医薬品(GE)使用促進を開始して20年が経過したが、近年はGEメーカーの不祥事を契機に医薬品全般の供給不足が続いている。本シンポジウムはGEとの向き合い方を再考する一助として企画した。

 協会からは会員向け10月11日~11月30日の期間で実施したオーソライズドジェネリック(AG)についてのアンケート報告(下図参照)を佐藤一樹理事が行った。AGは、GEのうち有効成分のみならず、原薬、添加物、製法、製造工場、製造技術が同一である(一部のAGは異なることがある)医薬品で、安定供給と品質の点で優れている。AGは先発品との比較によって種類が分けられるが、アンケートでは約7割が「AGの種類の違いを知らない」と回答しているため、「医のプロフェッショナルとしてAGの普及を推進することが重要」と述べた。

GEの品質情報の公開・承認審査体制の整備

 シンポジスト報告では、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課課長補佐の林亜紀子氏から後発医薬品承認審査関連業務の最近の取り組みについて報告があった。ジェネリック医薬品品質情報検討会の結果や医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)の公表を開始しているほか、昨今のGE医薬品供給不足についても承認審査体制の整備を進めているとの報告があった。

供給不足への対応

 公益財団法人佐々木研究所の大谷道輝氏は、薬剤師の立場から不祥事発覚後の供給不足とGEへの不信の増大に対して、①フォーミュラリーの採用による包装単位種別の減少、②医療現場からの過剰な発注の抑制、③出荷調整や代替品の確認など情報収集方法の周知を提案した。情報収集の手段として代替品の検索が可能な「医療用医薬品供給状況データベース:DrugShortage.jp」の紹介を行ったほか、内服薬はブルーブックを活用しても選択が困難であるため、AGは重要な選択肢だと強調した。

患者へのAGの周知を

 第一三共エスファ株式会社代表取締役社長の新堰毅氏は、第一三共のGE専門子会社である第一三共エスファがAG事業を強化してきた経緯を説明した。現在GE市場におけるAGの割合は数量・金額ベースともに増加しており、先発品と品質が同等で患者への説明がしやすいなどのメリットがあるが、患者の認知度は1割程度のため、患者向け資料などを通して周知が必要だと指摘した。

GEをとりまく問題

 サワイグループホールディングス株式会社代表取締役会長で、日本ジェネリック製薬協会副会長の澤井光郎氏は、AGは作らず、一般GEの品質向上によりGEの普及向上を続ける方針を示した。現在の薬価制度の中でGEの薬価は削られる一方であり、業界の存続が危ぶまれていること、GEメーカーの多くは収載品目が50品目未満のため、緊急の増産に対応できないことなどの問題を解説した。

患者中心の政策を

 全国薬害被害者団体連絡協議会代表の花井十伍氏は、GE普及が医療費抑制策として促進され、患者の声が置き去りにされてきたことを指摘し、「患者中心の議論の高まりを期待する」と述べた。昨今のGE供給不足問題については、GEの急速な普及を誘導した医療保険行政および薬事行政にも責任の一端が存在すると指摘した。薬害問題を経て、血液製剤は行政の指導が徹底していることを挙げ、行政による適切な指導を求めた。

 参加者からは「あまりに低いGEの薬価は安くて良い医薬品をなくすのではないか」「数値目標だけでなく、GEメーカーの育成策を国が出すべきだ」などの意見が出た。患者及び医療者にとって安全・安心のGEの安定供給が構築されることを願って閉会となった。

※アンケートの詳細はこちらをご覧ください。

(『東京保険医新聞』2023年1月25日号掲載)