マイナンバー法等関連法案 「資格確認書」新たに規定

公開日 2023年03月24日

 政府は3月7日、マイナンバーの利用範囲を拡大する関連法案を閣議決定した。マイナンバー法をはじめ、健康保険法、国民健康保険法や国家公務員法、地方公務員等共済組合法等の健康保険法関連改正も束ねて一括提出されている。

際限なく広がるマイナンバー利用範囲

 改正の概要としてデジタル庁が提示しているのは、①マイナンバーの利用範囲の拡大、②マイナンバーの利用および情報連携に係る規定の見直し、③マイナンバーカードと健康保険証の一体化、④マイナンバーカードの普及・利用促進、⑤戸籍等の記載事項への「氏名の振り仮名」の追加、⑥公金受取口座の登録促進(行政機関等経由登録の特例制度の創設)の6点だ。

 現在、マイナンバーの利用範囲は社会保障と税、災害対策の3分野に限定されており、取り扱いができる行政機関、用途などが規定されている。改正案では「理念として社会保障制度、税制及び災害対策以外の行政事務においてもマイナンバーの利用の推進を図る」としており、法律でマイナンバーの利用が認められている事務に「準ずる事務」についても利用を可能とする。

 情報連携を可能とする範囲についても、これまでマイナンバー法で規定されていたが、省令で規定することとする。情報連携が許可された記録については、マイナポータルで照会が可能となる。

 また、2022年度に開始された、マイナンバーと紐づけた公金受取口座の登録を促進するための特例制度を創設する。年金受給者に対して当該の口座をマイナンバーと紐づけた公金受取口座として登録する仕組みだ。その際、行政機関が対象者に書留郵便等で通知を送付し同意を得るとしているが、回答が得られなかった場合も同意したものとして扱う仕組みとなっており、本人同意なしにマイナンバーと口座の紐づけが行われることが懸念される。

マイナ保険証使わない人には「資格確認書」

 医療分野においては、健康保険証の廃止に伴って、マイナンバーカードによりオンライン資格確認を受けることができない状況にある人に対して「資格確認書」を提供することが新たに盛り込まれた。本人の申請に基づき、保険者が書面か電磁的方法で提供する。

 2月17日に政府のマイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会が公表した「中間とりまとめ」では、資格確認書の発行は無償とすることが示され、有効期限は1年を限度として各保険者が設定することとされている。発行済みの保険証については、廃止後1年間は有効と見なす経過措置を設けるとしている。更新方法について、厚労省の担当者は「これから検討する」と回答しており(2月24日保団連・厚労省要請)、整理すべき課題は山積している。

 そもそも現行の保険証を活かせば良く、強引に保険証を廃止することで無駄な行政コストが既に発生している。今後、被保険者、市区町村、医療機関・施設等いずれも多大な事務コストを負担させられることになるのは確実だ。

保険証守る取り組みを

 マイナンバー制度は当初、個人情報の漏洩やプライバシーの侵害、国家による個人情報の一元管理等の懸念に対して、それらを防止するために利用範囲・情報連携の範囲を法律に規定し、目的外利用を禁止することとされていた。しかし、現在進められようとしているのは、マイナンバーの際限ない利用範囲拡大であり、懸念されていたことが現実となりつつある。医療情報も含めたあらゆる個人情報が、マイナポータルを通じて一元的に集約される仕組みが構築されようとしており、民間への情報提供も可能となっている。

 皆保険制度を利用し、保険証を人質に取る形で、国民にマイナンバーカードの取得を強要することは人権侵害であり、中止させなければならない。

 協会は全国の協会・医会とともに患者署名「健康保険証を廃止しないことを求める請願署名」を行っている。ぜひご協力いただきたい。また、「保険証を持参してください」ポスターも併せて活用されたい。

(『東京保険医新聞』2023年3月15日号掲載)