“オンライン請求”原則化に抗議

公開日 2023年04月06日

オンライン請求 24年9月末に原則化の方針

 厚労省は3月23日に開催された第164回社会保障審議会医療保険部会で「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ(案)」を示し、今後進める医療保険におけるオンライン化の取り組みと基本的な考え方について提案した。

 主な内容は①2023年度末にかけたオンライン請求に係る周知広報、②光ディスク等機関の2024年9月末までの原則オンライン請求化、③紙レセプト機関の新規適用終了の3点。

 ②については、光ディスク等請求の新規適用を2024年4月に終了し、既存機関は同年9月末までに移行させるとした。光ディスク等請求を続ける機関(レセコンを保有していないが、外部委託により光ディスク請求を実施する機関などを想定)には移行計画の提出を求め、1年単位の経過的な取扱いとするとした。

 原則オンライン請求化について厚労省は、2024年秋を目標とした紙の保険証廃止(マイナンバーカードの保険証化)と一体の動きとして取り組みを進める構えだ。

 現在、「オンライン資格確認に接続可能な光回線のネットワークが整備されていない医療機関」は猶予届出の対象となっているが、オンライン請求を原則化することで、実質的にオン資システム導入に追い込まれることが懸念される。

 協会は声明「レセプトオンライン請求「義務化」強要方針に対し、強く抗議し撤回を求めます」を発出した。

健康保険証廃止で無保険者が続出

 部会では、3月7日に閣議決定されたマイナンバー法等の一部改正法案についても取り上げられた。厚労省は健康保険証の廃止と連動して、短期被保険者証の仕組みを廃止し、特別療養費の支給(償還払い)に変更する旨の事前通知を行う規定を整備することなどを盛り込んだ国民健康保険法等改正の施行期日を「公布の日から1年6月以内の政令で定める日」としたことを報告した。

 これに対して、菊池馨実委員からは、短期被保険者証とその後の被保険者資格証明書の交付によって自治体が接触の機会を持つことは保険料未納者に対する相談支援の契機となっており、この機会が失われることへの懸念を示す声が挙がった。

 マイナンバーカードの取得は番号法の申請主義に基づき「任意取得」が原則である。新たに発行される「資格確認書」も申請に応じて保険者が発行するとされており、いずれの場合も、窓口で申請等手続きが必要となる。さらに資格確認書の期限は1年で、そのたびに更新手続きを行うこととなる。申請忘れ等により無保険者が発生することは明らかである。

 健康保険証を廃止し、記載された内容が健康保険証と相似する「資格確認書」を発行する利点はなく、国民にマイナンバーカード取得を強要する以外の意味を持たない。不合理な政策は撤回し、現行の保険証の仕組みを存続させるべきだ。

オン資システム「義務化」・保険証廃止の撤回を

 マイナンバー法等改正案では、健康保険証の廃止以外にも、これまで社会保障・税・災害対策等に限定されていたマイナンバーの利用範囲や情報連携範囲の制限を外すことが提案されており、際限なく個人情報が集積、紐づけされる恐れがある。

 マイナンバーカードを用いたオンライン資格確認は、単なる保険資格の確認方法にはとどまらず、政府の計画する医療DX、全国医療情報プラットフォームの基盤とされている。計画では、個人の生涯にわたる医療情報を共有し、民間も含めた利活用が想定されており、個人情報保護の観点で重大な問題を抱えている。求められるのは、個人情報の野放図な収集・利活用やマイナンバーカードを強要する健康保険証廃止ではない。自己情報のコントロール権を中心に据えたIT化、そのための法体系整備こそが必要である。

 協会は「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」と共に、健康保険証廃止の撤回を求める運動に取り組んでいく。

(『東京保険医新聞』2023年4月5日号掲載)

 

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