地域とつながる在宅医療 活発に意見交わす

公開日 2023年06月24日

在宅医療の経験も様々な会員が集まり、活発
に意見交換した(5月24日、セミナールーム)
司会の中村洋一副会長

 組織部と研究部は5月24日、在宅医療会員懇談会を協会セミナールームで開催し11人が参加した。今回は「地域とつながる在宅医療」をテーマに標榜、経験を問わず在宅医療に従事もしくはこれから実施しようとする会員を対象に、日頃感じていることや地域医療連携の課題と展望を話し合った。会場には30年以上在宅医療に従事する会員から1カ月前に開業した会員、開業から10年以上経過し、これから在宅医療を始める予定の会員などが集まった。

 司会の中村洋一副会長の挨拶で開会し、自己紹介ではそれぞれ連携医療機関の有無や患者数と最近の増減傾向など状況を紹介した。エコーや輸液、輸血治療を在宅で行う上での機器購入、使用する抗生剤の種類といった話題では経験のある参加者が中心となり、事例を紹介した。

 その他、施設への訪問診療、他科との連携、在宅患者の入院の課題などで活発な意見交換が行われ、その中で特に議論が集中したのが、①患者獲得の方法、②訪問看護ステーションとの連携、③24時間医療体制への向き合い方、の3点だった。

地域に根差した活動が患者獲得に繋がる

 患者の獲得方法については、近隣の病院、開業前に勤務していた病院など個人的につながりのある医療機関、訪問看護ステーション(以下訪看)やケアマネジャー(以下ケアマネ)からの紹介が多かった。

 また、開業当初は外来のみを行っていたが、診ていた患者が通院困難になったことをきっかけに在宅に移行した例もあった。

 地域の講習会に講師として出席した際、参加しているケアマネから紹介を受けたケースが紹介され、地域に根差した活動が患者増に繋がった事例に共感の声があがった。

訪問看護ステーション 顔の見える連携を

 次に訪看との関わり方や課題について意見交換を行った。広域展開する組織が運営する訪看では、所属の看護師が遠方で待機していることがあり訪問するまでに時間を要する、あるいは電話での対応のみを行った例などが紹介された。「地域に根差した小規模の訪看が一番信頼できる」とベテランの参加者は経験を語った。「自院に在宅医療を大規模に展開する法人の営業が来た」「医師の意見を聞かずに訪問看護指示書の記入依頼が来た」などの報告もあり、解決策として、「高いスキルを持つケアマネと連携する」「ケアカンファレンスなどを通じ、顔の見える連携を意識することが大事だ」などの意見があった。

夜間・休日往診を請け負う企業参入も 様々な意見

 24時間医療体制への向き合い方、特に休暇がとれているかについて、「自分以外に常勤の医師がおり、看護師も待機しているため予定通り取れることが多い」等の報告があった一方で、「強化型の連携医療機関に一部は依頼するがほとんど自分一人で対応している」「末期がんの患者を複数診ている時は休めなかった」といった意見もあった。また、近年医療機関と契約し夜間・休日の往診を専門に行う事業体が参入していることについて意見交換を行った。「心身の休息時間を確保できることを考えれば助かる」との発言があった一方で、「自分の患者を一度も診ていない医師に診てもらうことに抵抗がある」「訪問時間をあえて深夜にし、加算を算定する事例を耳にした。医療の在り方としては疑問」など、自身が目指す在宅医療とかけ離れているとの意見も出た。

 最後に在宅医療の診療報酬について、同一建物居住者の概念や、特別訪問看護指示ができる期間の制限については撤廃を求めることで意見が一致した。

 参加者からは、「他の人も自分と同じ悩みを持っていることがわかった」「手探りでやっていたが、懇談会に参加したことにより、これでいいのだと確認でき安心した」と来年の開催を望む声も寄せられ、盛会のうちに閉会した。

(『東京保険医新聞』2023年6月15日号掲載)