篠田謙一氏講演会 古人骨から日本人のルーツを探る

公開日 2024年06月07日

 地域医療部は4月23日、篠田謙一氏(国立科学博物館長)を講師に、講演会「ゲノムが解明する日本人の成り立ち」を協会セミナールームで開催し、会場とオンラインを合わせて44人が参加した。

 
 篠田 謙一氏

 人類の足跡は長らくベールに包まれていたが、1987年のPCR法実用化で古人骨のDNA分析が可能になったことをきっかけに徐々に解明されつつある。DNA配列は親から子へ伝わる際に時々変化する(突然変異)ため、突然変異を逆にたどっていくことで、オリジナルからどのように変異が派生してきたのかを推定することができる。同じような違いを持つもの同士は同じ集団から派生したことが予想されるため、混血の度合いや集団成立の経緯がゲノム分析によりわかるようになった。

 400万年以上前にゴリラやチンパンジーとの共通祖先から分化した人類は進化を続け、20~30万年前にアフリカでホモ・サピエンス(現生人類)が誕生した。6万年前にアフリカを出た人類はヨーロッパ、アジア、オセアニアに展開していくが、その過程でデニソワ人、ネアンデルタール人と交雑していることが判明した。60万年前にホモ・サピエンスと分岐したデニソワ人、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスに滅ぼされたと考えられていたが、交雑によりホモ・サピエンスと一体化した可能性が浮かび上がっている。

 日本人のルーツについては、アジアに最初に拡散した集団のうち、日本に定着していた縄文人と、弥生時代に朝鮮半島から日本へ流入した渡来人が混ざり合って現在に至るという定説が大筋で正しいことが確認された(表参照)。

 ただし、縄文人と渡来人には共通する遺伝的な要素もあり、まったく異なる集団ではないことが判明した。また、弥生人と現代日本人のDNAの違いから、弥生時代以降に大陸から人の流入があった可能性が示唆された。

 質疑応答では、農耕や言語といった文化圏形成との関係性や、日本以外の世界の集団形成について等、活発な意見交換が行われた。

 


 

(『東京保険医新聞』2024年6月5日号掲載)