公開日 2024年09月01日
2024年8月22日
内閣総理大臣 岸田 文雄 殿
厚生労働大臣 武見 敬三 殿
厚生労働省保険局医療課長 林 修一郎 殿
中央社会保険医療協議会会長 小塩 隆士 殿
東京保険医協会
審査指導対策部長 浜野 博
研究部長 申 偉秀
2024 年度診療報酬の再改定及び不合理是正等実施に係る緊急要望書
2024年度診療報酬改定が6月1日に実施されました。新点数運用に伴う保険請求状況によれば、改定の目玉とされた賃上げ対応を見ても、医療関係職種(医師・歯科医師・薬剤師・看護師を除く)の改善には程遠いものであることが明らかになりつつあります。月給与平均が全産業平均を10%近く下回る現状に加えて、その他の診療報酬も物価上昇に全く見合わない水準に設定されており、「今次改定」は実質マイナスであり、地域医療を支える医療機関等の存続も危ぶまれる状況を呈しています。
特に本体改定率から0.25%もの引き下げが強行された「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)」への再編・移行は、内科系診療所にとっては名目以上の大幅なマイナス改定となっており医業経営に深刻な影響を与えています。「生活習慣病を中心とした管理料・処方箋料等の効率化・適正化」を掲げたものの、『医療費削減効果』を見込んだだけの、医学的根拠を欠いた机上の空論であると指摘せざるを得ません。さらに追加された算定要件等においても問題や不明な点が多く、当協会には会員である医療機関から、算定要件や疑義解釈に関する問い合わせが殺到しています。医療現場に無用な混乱を持ち込んだ厚労省の責任は重大です。
在宅医療では5月から7月の自院での訪問診療の回数が2,100回を超えた医療機関に対し在宅データ提出加算の届出が義務化されました。データ提出加算の算定にあたっては希望する医療機関が自発的に届出を行うべきであり、地域医療に貢献する医療機関に対してデータ提出を強制する手法は看過できません。
10月には長期収載医薬品への選定療養導入の実施が予定されていますが、患者の受療権を侵害するとともに、事実上の混合診療解禁に等しく、国民皆保険制度を根底から崩すことにつながり、到底容認することはできません。
一方、今次改定は例年より実施期間を2カ月後ろ倒しで実施されましたが、その内情は、システム事業者の業務負担を平準化し、システム構築に係る必要最低限の期間を確保するよう配慮したに過ぎません。そのため医療機関に対しては、診療報酬改定内容の複雑かつ難解な算定要件や各種手続きに関して、度重なる訂正通知の発出をはじめ行政当局からは十分な情報提供が行われたとは言えません。所管官庁である厚生労働省および地方厚生局の今次改定への対応に、当協会は強く抗議するものです。
今次診療報酬の改定内容を勘案し、当協会は改めて、基本診療料を中心とする診療報酬の十分な引き上げによる再改定の実施と、不合理是正等について速やかに実現することを政府・厚労省に対して緊急に要望致します。
記
1.すべての医療機関の医療従事者の賃金引き上げを可能にし、併せて諸物価高騰への対 応と診療報酬の不合理が改善できるように、今次診療報酬を速やかに再改定し、初・再 診料をはじめとする基本診療料を十分に引き上げること。
2.特定疾患療養管理料の対象から糖尿病、高血圧症、脂質異常症の3疾患を除外するこ とを速やかに見直すこと。さらに生活習慣病管理料と外来管理加算および特定疾患処方管理加算の併算定を認めること。
3.初・再診料への加算点数である外来感染対策向上加算に定められた「第二種協定指定 医療機関又は医療措置協定に基づく措置を講じる医療機関である」との施設基準を廃止すること。少なくとも経過措置期間を次回診療報酬改定の実施日まで延長すること。
4.各年度5月から7月の訪問診療の実施回数が 2,100 回を超える強化型の在宅療養支援 診療所・支援病院に対する「在宅データ提出加算に係る届出を行うこと」との施設基準を撤廃すること。
5.混合診療の拡大につながる長期収載品への選定療養導入は撤回すること。
6.診療報酬改定にあたっては、保険医療機関や調剤薬局が万全の体制で新点数の算定が 行えるよう、行政の責任において、十分な周知期間の確保を講じるとともに改定内容の周知に取り組むこと。
以 上