公開日 2024年11月08日
組織部と研究部は10月5日、在宅医療会員懇談会を協会セミナールームで開催し、11人が集まった。
2023年度に続いての開催で、会場には30年以上在宅医療に携わっている会員から、開業1年以内の会員、これから在宅医療を始める予定の会員等、様々な立場の会員が標榜科、経験を問わず参加した。
司会の中村洋一副会長の開会挨拶の後、事務局から2024年度診療報酬改定の要点について説明があった。今次改定では、いわゆるかかりつけ患者以外を往診した場合の休日、夜間、深夜の加算の引き下げ、訪問診療の平均回数が12回を超える医療機関に対する訪問診療料の引き下げ等、在宅医療に注力している医療機関には影響が大きい改定であることを解説した。
幅広い話題で活発に意見交換
懇談では、初めに在宅医療に取り組む理由、患者数やスタッフの状況等について、各参加者が紹介した。在宅医療に取り組む理由として「在宅医療が診療報酬として体系化される前から親が取り組んでいたので引き継いでいる」「勤務医時代に既に在宅医療に携わっていたので開業しても続けようと考えていた」「外来で診ている患者からの要望が出ており、これから始めたいと考えている」等が挙げられた。
在宅患者を診るきっかけは、近隣の病院、開業前に勤務していた病院など個人的につながりのある医療機関、訪問看護師(ステーション)やケアマネジャー(以下ケアマネ)からの紹介が多かった。また、開業当初は外来のみを行っていたが、診ていた患者が通院困難になったことをきっかけに在宅に移行した例もあった。
その後、中村集理事が提供した話題を基に意見交換を行った。
院長が休日、休暇または急病の場合の対応として、連携医療機関に依頼しているとの声が多く上がった。「以前は大型の法人経営の医療機関に依頼していたが、今次改定の影響でやめてしまった事業者が多く、現在は他の在宅医療機関に依頼することもある」といった意見も出た。
在宅医療で難渋する治療としては、褥瘡が挙げられた。現在は訪問看護の発展で褥瘡そのものを診る機会が減っており、若い医師は知識として知っていても、実際の対処が不安にならないかとの懸念も示された。
その他、他の専門科への依頼も難しい問題として挙げられた。
薬局、訪問看護師、ケアマネ等との連携の話題では、ケアカンファレンスについて書類提出のみで出席していない医師が多く、医師の参加率は5%ほどだとの情報提供があった。「患者のQOLに係る場であるため積極的に参加すべきだが、カンファレンス開始が月曜日の朝9時半に設定されて参加できないこともある。医師が出席できる時間帯に調整してほしい」「看護師に代行してもらっているが見直そうと思う」等意見があった。
その他、「負担金が高いことから訪問回数を減らしてほしいと希望する患者も増えている」「20年近く在宅医療に取り組んで、患者を取り巻く環境の変化(独居の増加など)を実感している」等、現状を懸念する声も出た。
過酷な在宅医療の環境を改善するために
今後の在宅医療の在り方については、過酷な在宅医療の環境を改善したいとの意見でまとまった。具体的には、①訪問看護を原則として医療保険での給付にすべき、②診療報酬・介護報酬の引き上げ、③今回改定の大人数の点数引き下げを元に戻す、④24時間体制について、医師の拡充や地域連携での対応、等が挙げられた。
参加者からは、「他の医師も自分と同じ悩みを持ちながら、在宅医療に取り組んでいることが分かった」「これまで手探りでやっていたが、会に参加したことで色々な意見が聞けて、今後の参考になった」と来年の開催を望む声も出る等、盛会のうちに閉会した。
当日の模様(10月5日、セミナールーム)
(『東京保険医新聞』2024年10月25日号掲載)