解説 医療DXの動向~電子処方箋・スマホ保険証~

公開日 2025年02月17日

◎電子処方箋 25年3月までの導入目標を見直し

 厚生労働省は2025年1月22日に開かれた、医療分野のデジタル化実現に向けた「医療DX令和ビジョン2030」に関する会合で、2025年3月末までに概ねすべての医療機関と薬局に電子処方箋を導入するという目標の達成時期を見直すとした。

 1月12日時点での電子処方箋の導入率は医療機関が6・3%、薬局が63・2%であることから、年度内の目標達成は難しいと判断した。医療機関において導入率が低いところから阻害要因を分析し、さらなる導入策の検討を進め、夏頃に新たな目標を設定したいとしている。具体策としては未導入の施設へのフォローアップ、公的病院などへの導入再要請、医療者向けの周知活動強化などが挙げられた。

 電子処方箋を巡っては、2024年12月19日に、薬局側で医師の処方と異なる医薬品名が表示されるトラブルが7件確認され、システムが停止する事態となった。一部の医療機関や薬局で、薬の番号の紐づけに誤りがあったことが原因とされ、厚労省は設定ミスが起きにくい仕組みについても、夏頃までに検討したいとしているが、処方したものと異なる医薬品が処方されるような事態は本来1件たりとも許されないはずだ。普及目標を立てるよりも前に、安心して業務に使用するに足るシステムを再設計すべきだろう。

 また、医療DX推進体制整備加算の施設要件である「電子処方箋を発行できる体制」の経過措置は2025年3月31日までだったが、電子処方箋体制の有無により点数に差をつける形で加算1~6に再編する案が中医協総会で出された。元々の要件からは緩和されるが、未完成で不安定なシステムの導入を点数で誘導すること自体不当であり、見直すべきだ。

◎スマホ版マイナ保険証 今春に実証実験を開始

 マイナ保険証機能をスマートフォンに搭載し、利用できるようにするサービスについて、厚労省は今春に複数の医療機関で実証実験を行い、将来的に医療機関等での普及をはかるとしている。スマホ搭載型のマイナ保険証を利用する場合、患者は顔認証機能付きカードリーダーの画面からスマートフォンによる手続きを選択し、Android版では暗証番号を入力、iPhone版では生体認証で本人確認を行う。汎用カードリーダーにスマートフォンをかざし、顔認証付きカードリーダーの画面上で医療情報提供の同意に関するボタンを押すことで手続きが完了する。

 従来の顔認証付きカードリーダーにはスマートフォンを読み取る機能は搭載されていないため、新たに汎用カードリーダーが必要になる。厚労省は2025年度中に医療機関の購入費補助の方向性を決めるとしているが、そもそも現在医療機関に課されている「オンライン資格確認」の導入義務は、スマートフォンによる確認まで想定しているのか。新しい機能が後付けで追加される度、費用負担が医療機関に押し付けられることになりかねない。

 また、複数の機器を操作する手続きが必要になるため、高齢者など対応できない患者が多数発生する恐れもあり、事務的負担の増加も懸念される。

(『東京保険医新聞』2025年2月5日号掲載)