公開日 2025年03月27日
2025年2月8日
内閣総理大臣 石破 茂 殿
財務大臣 加藤 勝信 殿
厚生労働大臣 福岡 資麿 殿
東京保険医協会
会長 須田 昭夫
政策調査部長 吉田 章
地域医療部長 中村 洋一
高額療養費の負担上限額引き上げに抗議する声明
政府は2024年12月25日、高額療養費制度を見直し、2025年8月からすべての所得区分において月額の負担上限額を引き上げることを決定しました。東京保険医協会は医療者の立場から、患者の治療・療養を支える高額療養費制度の改悪に抗議するとともに、負担上限額の引き上げの中止を求めます。
高額療養費制度は、がんや難病などの重篤な疾患や長期に治療が必要な患者が、高額な医療費負担によって治療の継続が脅かされないように、支払う医療費を一定額以下にする制度として、公的医療保険制度の中に位置付けられています。いのちに関わる疾患で治療を受け、かつ高額な医療費を支払う患者にとっては、お金の心配なく安心して医療を受けるために必要不可欠な制度です。今回の負担上限額引き上げによって、すでに高額療養費の負担上限額まで支払っている患者が治療の継続を断念しなければならなくなることが危惧されます。患者のいのちまでも脅かす高額療養費制度の改悪を容認することはできません。
高額療養費制度を利用したことがない国民であっても、思いがけず大病を患い高額な医療費を負担する必要が生じることはどの世代にも起こり得ます。特に働く世代や子育て世代などの現役世代ががんや難病に罹患した場合には、長期にわたる高額な治療費により生活が困窮する事態にもなりかねません。
今回の「見直し」の中には、70歳以上の高齢者(年収370万円未満の場合)の外来医療費負担を抑える「外来特例」の負担限度額を大幅に引き上げることが示されています。特に後期高齢者(年収200万円以上の場合)は、2022年10月から医療費の窓口負担が1割から2割へ引き上げられましたが、2割負担の導入による受診抑制が厚労省の調査でも明らかになっています。高額療養費の負担上限額の改悪により、ますます必要な受診が妨げられます。
政府は、すべての世代における被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、負担上限額の引き上げを正当化しています。しかし、厚労省の試算では被保険者一人当たりの保険料軽減はわずか年額1,100円~5,000円程度(月額92円~417円程度)と限定的である一方、国の公費負担の削減幅は1,110億円程度と見込んでいます。保険料の負担軽減を口実にした国の財政責任の後退にほかなりません。政府は2027年度までに防衛費の大幅増を目論んでいますが、今回の高額療養費制度の見直しは、防衛費増額のために国民のいのちと健康を犠牲にするものだと言わざるを得ません。
お金の心配なく必要な医療をすべての国民が受けられるよう、高額療養費の自己負担上限額の引き上げは中止すべきです。
以 上