医師の働き方シンポジウム 働き方改革の実感無し 人手不足や診療報酬の改善を

公開日 2025年04月01日

 勤務医委員会は3月9日、シンポジウム「医師の働き方改革施行後の現状と課題~医療安全と医師の健康は守られているのか~」を開催した。会場とZoom合わせて32人が参加した。

 

 全国医師ユニオン代表で会員の植山直人氏が司会を務め、東京慈恵医科大学教授の越智小枝勤務医委員が基調提案を行った。大学病院は臨床・研究・教育の3つの役割を持っているため極めて厳しい状態に置かれている。越智氏は自身の体験から、「アカデミアから見たキャリア」「給料から見たキャリア」「時間のゆとりから見たキャリア」「満足度から見たキャリア」の4つのモデルを示し、どのような選択を行うかが重要であるとした。

 次に総合診療科に勤務する専攻医が「一専攻医の働き方と子育て」をテーマに話題提供した。学生時代は働き方への意識は薄い。専攻医になると責任が大きくなると同時に、専門医制度のもとやらなければならない研修が自己研鑽扱いになるなど、自身が経験した働き方の理不尽さについて報告した。男性の育児休暇については反対する人は少なくなってきたが、いまだに理解されず、取得は難しい。しかし少しずつではあるが、良い方向には向かってきていると述べた。

 地域病院で勤務する医師は、「医師の働き方改革~医療安全と医師の健康は守られているか」をテーマに医師の過酷な労働実態について報告した。現状の医師不足では医師の過重労働なくして地域医療は成り立たない。厚労省は宿日直許可を乱発し、時間外労働を自己研鑽とするなど、長時間労働を合法化する動きを進めている。医師の労働環境がほとんど改善されていないと訴えた。

 最後に、病院有床部長の水山和之明和病院院長からは民間病院を経営する立場での報告があった。医療費抑制政策の下で過去最多786の医療機関が2024年に閉院を余儀なくされ、診療報酬の引き上げ無しには医師・看護師の確保、病院経営の継続はできないことを強調した。

 討論では医学生も参加し、これからの医師が働く環境をどうすべきかについて活発な議論が行われた。

 
 当日講演を行ったシンポジスト

(『東京保険医新聞』2025年3月25日号掲載)