解説 OTC類似薬の保険外しをめぐる情勢

公開日 2025年04月24日

 2025年度予算案について、自民党、公明党、日本維新の会の3党で2月に取り交わした合意文書では、「社会保障改革による国民負担の軽減を実現するため、主要な政策決定が可能なレベルの代表者によって構成される3党の協議体を設置する」こととされた。

 3党協議会では①OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し、②現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底、③医療DXを通じた効率的で質の良い医療の実現、④医療介護産業の成長産業化、の4点を含む国民負担軽減策について、2025年度末までの予算編成過程(診療報酬改定を含む)で検討を行い、早期に実現可能なものについては2026年度から実行に移すとしている。

 3党合意に基づき自民党、公明党、日本維新の会は3月18日、社会保障改革の協議を開始した。協議は週1回程度のペースで開催され、5月中旬を目途に考えをまとめる方向で議論を進めている。

医療費4兆円の削減は重大な健康被害を招く

 維新の会は年間で国民医療費を最低4兆円削減し、現役世代1人あたりの社会保険料を年間6万円引き下げるべきだと主張している。これを実現するため、27日に開催した実務者レベルでの初会合で維新の会はOTC類似薬の保険適用除外を提案した。次回の協議で維新の会が改革案を示す予定だ。

 OTC類似薬の保険外しに関しては維新の会のほか、国民民主党も2024年9月に発表した「重点政策2024の実現に向けた医療制度改革(中間整理)」のなかで「市販品として広く定着した銘柄と同一の製品(所謂、OTC類似薬)について公的医療保険の対象から見直し、セルフメディケーションを推進する」と記載しており、予断を許さない状況である。

 一方、自民党の自見英子参議院議員は軽微な症状が重篤な疾患の兆候であるケースも多いとして慎重な検討が必要との姿勢を示している。日本医師会も①受診控えによる健康被害、②自己負担増加、③薬剤の適正使用が難しくなる、といった問題点を指摘し、強い懸念を示している。

 協議の結果は例年6月に閣議決定される「骨太の方針」に反映され、2026年度診療報酬改定の方向性を決定づけるものと見られる。

 OTC類似薬の保険外しは、患者が自らの判断で薬を選択し服用することで、適切な診断・治療が行われずに重篤化する危険性がある。またOTC類似薬が保険から除外された場合、患者の負担は実質的に増加する。特に全額公費助成されており、保険診療では自己負担がない乳幼児に対する影響は大きく、子育て支援の方針と逆行する。

 医療費削減を目的としたOTC類似薬の保険外しをさせない取組みを早急に強化すべきだ。

(『東京保険医新聞』2025年4月15日号掲載)