[解説]病院の経営は危機的状況 緊急の対応求める声多数

公開日 2025年05月13日

 3月10日、病院関係6団体(※)は6団体共同で実施した「2024年度診療報酬改定後の病院経営状況」調査の結果を公表した。

 改定後、病床利用率が上昇傾向にあるにもかかわらず、医業利益、経常利益ともに悪化し、赤字病院割合が増加している。医業利益と経常利益の赤字病院割合はそれぞれ69%、61%まで悪化した。2018年度と2023年度の経費の変化を比較すると人件費よりも、医薬品費、委託費、水道光熱費などの経費が顕著に増加している。その結果、改定後の医業収益+1・9%に対し、医業費用は+2・6%となり、医業費用が医業収益を上回っている。日本社会全体での急速なインフレの進行が病院経営に打撃を与えており、公定価格である現状の診療報酬の範囲での対応は限界を迎えている。

 この結果を受け、6病院団体と日本医師会は合同声明を3月12日に発表し、「『高齢化の伸びの範囲内に抑制する』という社会保障予算の目安対応の廃止」と「診療報酬等について、賃金・物価の上昇に応じて適切に対応する新たな仕組みの導入」の2点を要望した。 

 日本病院会の相澤孝夫会長は「赤字は億単位なのに支援は千万単位。桁が異なる」として、当面は補助金による機動的対応が必要としつつも、それとは別に次回改定を待たずに期中改定が必要と危機感を示した。

 日本医療法人協会の太田圭洋会長は「病床利用率が90%を超えるくらいでなければ採算ラインを超えるのが難しい。ほぼ満床でなければ経営が成り立たないのは異常だ」との意見を表明。全国自治体病院協議会の野村幸博会長も「公立病院は人事院勧告で高い賃上げが求められている」と述べ、窮状を訴えた。

 全国公私病院連盟も光熱費や診療に必要な材料費などの高騰が診療報酬上で反映されていないとして、6月にも入院基本料の引き上げを求める要望書を提出する方針を示している。

 こうした声に対して福岡厚労相は「病院経営の厳しさについてお声は承っている。病院が継続して運営できないようなことがあってはならない」と述べ、対応の必要性は十分認識していると一定の理解を示した。

 協会は2024年11月6日に「入院医療を守るための緊急支援を求める要望書」を厚労相、財務相宛てに提出し、物価高騰や人件費上昇等、病院経営の改善に対する支援を要望した。地域医療、病院医療を守るために引き続き取り組んでいく。

(※日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、日本慢性期医療協会、全国自治体病院協議会)

(『東京保険医新聞』2025年4月25日号掲載)