公開日 2025年06月25日
- 懇談の模様(5 月29 日、協会小会議室)
協会は5月29日、社会民主党東京都連合副代表で多摩市議会議員のいぢち恭子氏と、同議会議員の岩崎みなこ氏、岸田めぐみ氏(三者とも「ネット・社民の会」所属)との懇談を行い、①ワクチン行政、②マイナ保険証、③独法化された旧都立病院、について意見交換を行った。協会からは、須田昭夫会長、吉田章副会長、細部千晴理事が参加した。
急増する百日咳への対策
今年に入って百日咳の感染が拡大しており、2025年1月1日~4月27日の累計感染者数は1万1921人と、2018年の全数把握義務化以降で最悪のペースとなっている。
日本で乳児に接種する最初の百日咳ワクチンは、生後2カ月以降に実施される5種混合(DPT―IPV―Hib)ワクチンだが、ワクチン接種前の乳児の感染が増加しており、死亡例も発生している等、切迫した状況だ。
直近の厚労省調査事業では、妊婦に対して3種混合(DPT)ワクチンを接種することで胎児に百日咳に対する抗体移行が起こることと、その安全性が確認された。協会は厚労省に対し、妊婦に対するDPTワクチンの緊急優先接種を要請しており、いぢち氏らに対しては母子免疫ワクチンとしてのDPTワクチン接種の有効性の周知を要望した。
全世代への資格確認書の一律交付を要請
医療機関窓口でマイナ保険証に関するトラブルが収まらない状況を受け、厚労省は後期高齢者への資格確認書の一律交付を決めた。
厚労省はマイナ保険証利用率の低さを理由に後期高齢者への一律交付を決定したと説明しているが、45歳未満は後期高齢者よりもマイナ保険証利用率が低く、世代を問わず資格確認書を交付する必要がある。渋谷区や世田谷区では、区独自に国保加入者に対し資格確認書を一律交付するなど、国の制度の不備を自治体がカバーする事態となっている。
協会は、会員へのアンケート調査をもとに資格確認トラブルの状況を説明し、渋谷区・世田谷区と同様に、国保加入者に資格確認書を一律交付することを要望した。
保険証の発行再開の重要性を強調
ある健保組合では、紛失や破損で資格確認書を再発行する場合、手数料として1万円を徴収することを定め、国会でも取り上げられるなど問題となっている。
大企業の健保組合はマイナ保険証の取得を推進する傾向にあり、資格確認書の再発行を有料とする大企業の健保組合が存在する。このような状況から、被用者保険においては資格確認書を保有することのハードルが高まっている問題があることを指摘し、従来の保険証の発行を再開することの重要性もあわせて強調した。
都立病院の変容を懸念
2022年7月に独法化された旧都立・公社病院について、東京都は、「都立病院機構に対する運営費負担金は、独法化前の一般会計からの繰入と同水準に保っている。中期目標の基本方針3点(左表)にも変更はない。独法化の目的はより着実に行政的医療を提供することだ」としている。
しかし、独立行政法人法第81条には「常に企業の経済性を発揮するよう努めなければならない」と記載されており、実際に都立病院機構も、地域医療機関との連携、PFI事業の見直し、都に対する物価高騰対策予算の要求等を通じて収益の確保に努めている。
2025年3月1日時点では、患者数の減少や職員不足による休止病棟が21棟、705床(工事による休止を除く)にのぼるが、不採算医療とされる行政的医療の縮小や差額ベッド代等の患者自己負担の増額、医療従事者の労働条件切り下げによる離職等も懸念される。
協会はこれらの独法化の問題点を議員に解説するとともに、行政的医療の縮小をさせないための監視の必要性を訴えた。
活発に意見交換
議員からは、母子免疫ワクチンの有効性や安全性、マイナ保険証によるトラブルの内容、都立病院の独法化による影響等について次々と質問が出されるなど、活発な意見交換が行われた。
マイナ保険証については、「政府は、マイナ保険証を使用することで、従来の保険証の不正利用を防止できると説明している。しかし、不正利用の件数は非常に少ない。本質的な問題は、不正利用をしないと医療機関を受診できないような無保険者が国民皆保険制度において発生していることだ」等、政府の欺瞞を指摘する意見が出された。
都議からは、「脊柱側弯症専用の検査機器を使用することで発見率の向上につながるとのデータがあることから、導入の重要性を感じた」「子ども医療費助成制度について、都内の自治体間に残る格差を解消するよう、東京都に要請している。格差や不公正を是正できるよう、引き続き取り組みたい」等の発言があった。
協会は、9月12日に東京都保健医療局・福祉局との懇談を実施した。
(『東京保険医新聞』2025年6月15日号掲載)