公開日 2025年06月27日
地域医療部は5月28日、小川郁氏(オトクリニック東京院長・慶應義塾大学名誉教授)を講師に、講演会「人生100年時代の認知症対策―難聴と補聴器―」を協会セミナールームで開催し、会場とZoom合わせて32人が参加した。
小川郁氏
増え続ける難聴患者 予防と早期介入が重要
日本の百寿者は、2024年時点で約9万5000人であり、約70年間で900倍に増加したが、欧米に比べて「寝たきり」や「視聴覚障害」が多い。
厚生労働省によれば、65歳以上の日本人の約45%が難聴者である。WHOも高齢者の3人に1人が介入を要する難聴であり、2050年までに世界で約25億人が難聴を抱えて生活すると指摘している。超高齢社会において、難聴の患者は今後も増え続けると予測されていることから、健康長寿のための予防医学の重要性を小川氏は指摘した。
難聴が進行すれば、コミュニケーションの不足から心理的・社会的に孤立することで、認知機能の低下やうつ傾向の増大につながる。同時に、加齢性難聴を含む慢性感音難聴は、治療薬や治療法が確立されていないことから、補聴器の装用や、聴覚リハビリテーション等、早期の介入が重要だと小川氏は強調した。
国内での補聴器普及へ 公的補助の拡充を
難聴者における補聴器の装用率は、欧州では約3~5割であるのに対し、日本は15%に留まっている(Japan Trak2022調査報告)。補聴器の購入に際し、日本では公的補助が少ない点を小川氏は課題に挙げた。同調査によれば補聴器1台の価格は、ほとんどが10~30万円だ。EU全体では約8割の国で補聴器の購入に全部または一部の保険が適用されるなど、欧州では、ほとんどの国が手厚い公費補助を実施している。東京都が2024年度に「高齢者聞こえのコミュニケーション支援事業」を開始したことで、高齢者が補聴器を購入する際に助成する都内の自治体数は増加したが、助成額は不十分な場合が多い。
小川氏は、日本においても公的補助をさらに拡充する必要性を訴えた。
(『東京保険医新聞』2025年6月25日号掲載)