新型コロナ 診断・治療・予防を学ぶ

公開日 2025年12月03日

 研究部は10月24日、新型コロナウイルス感染症研究会を開催し、32人が参加した。忽那賢志氏(大阪大学大学院医学系研究科教授、大阪大学医学部附属病院感染制御部部長)が「新型コロナウイルス感染症 診断・治療・予防アップデート」と題し、講演した。

 忽那氏は「COVID―19で明らかになった課題について振り返り、対策を検討すべき時期に来ている」と問題提起し、豊富なデータをもとに、▼COVID―19の社会的負荷は未だに大きい一方、ワクチン接種率の低下が大きな課題である。▼重症化リスクの高い患者には抗ウイルス薬が推奨される。▼後遺症は未だに解決されていない大きな課題である。▼新興・再興感染症はこれからも出現する。次のパンデミックに備えて感染症に強い医療体制を地域で構築する必要がある、と指摘した。

 厚⽣労働省の⼈⼝動態統計において、COVID―19による死亡数は2024年も3万5865⼈(死因順位第8位)と⼤きな減少は見られず、その約97%は65歳以上の⾼齢者である。

 COVID―19の感染者数・死亡者数について、忽那氏は「オミクロン株の流行までは感染者数を抑えることができ、初回のワクチン接種も進められた結果、オミクロン株の流行後も、感染者数は増えても他国と比較して死亡者数を抑えることができた。一方で他国よりも緩和が遅れたことで大規模な流行が今も続いている」と指摘した。

 新型コロナワクチン接種について、忽那氏は「重症化の予防というワクチン接種の意義は変わっておらず、引き続き重症化リスクの高い集団では定期的な接種が推奨される。また、ワクチン接種者では後遺症の頻度が少ないとの報告がある」と述べた。

 治療について、忽那氏は「オミクロン株が流行している現状では中和抗体薬を使用しにくいことから、特に重症化リスクのある軽症患者について、ニルマトレルビル/リトナビルをはじめとする抗ウイルス薬を適正に処方することが推奨される。後遺症を減らすという観点からも急性期に抗ウイルス薬を処方することは重要である」と述べた。

 参加者から活発な質疑・応答があり、盛会のうちに閉会した。

 
 忽那賢志氏

 
 講演後には演者とフロア双方向での活発な質疑応答が行われた(10月24日、セミナールーム)

(『東京保険医新聞』2025年11月25日号掲載)