公開日 2026年01月20日
東京保険医協会は20日、中医協に「令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」に関するご意見の募集へのパブコメリックコメントを提出した。要求項目を紹介する。
「令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」に関する意見
2026年1月20日
外来・在宅分
Ⅰ-1 医療機関等が直面する人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等といった物件費の高騰を踏まえた対応
(1) これまでの物価高騰による医療機関等の物件費負担の増加を踏まえ、初・再診料等及び入院基本料等について必要な見直しを行う。また、令和8年度及び令和9年度における物件費の更なる高騰に対応する観点から、その担う医療機能も踏まえつつ、物価高騰に対応した新たな評価を行う。
【上記に対する意見】
大臣折衝を踏まえて示された今回の診療報酬の改定率は、全体で+3.09%とされている。東京都や多くの医療団体が10%以上の引き上げを求めてきた中で、極めて低い改定率だと考える。この中で物価高騰への対応はわずか+0.76%である。昨年12月に公表された最新の消費者物価指数(2025年11月分)では、総合指数が前年同月比で2.9%の上昇とされており、上記物価高騰対応分は過去1年分の物価高騰にすら相当しない。医療機関が日常的に負担している人的・物的コストの恒常的な上昇を十分に反映していないのは明らかだ。特に基本診療料は、すべての医療機関に共通する基礎的な収入であり、インフレの実態に見合わない水準に抑制され続けることは、医療提供体制そのものの持続可能性を損なうものである。
診療報酬本体改定率の物価上昇率が大きく乖離したのが、2022年度改定であった。基本診療料については、少なくとも前回2024年度改定以降の物価上昇率を確実に反映した上で、今後予測されるインフレ率を加味した水準まで大幅に引き上げるべきである。また、物価高騰に対応した新たな評価については、特定の医療機能や加算の届出状況にかかわらず、すべての医療機関の経営改善に資する内容でなければならない。物価高騰が常態化する現状において、基本診療料での十分な評価および検査や手術等物価高騰の影響が大きい特掲診療料においても、上昇率に応じた引き上げを強く求める。
Ⅰ-2-1 医療従事者の処遇改善
(1) 看護職員、病院薬剤師その他医療関係職種の確実な賃上げを更に推進するとともに、令和6年度診療報酬改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種についても他の職種と同様に賃上げ措置の実効性が確保される仕組みを構築する観点から、賃上げに係る評価を見直す。
【上記に対する意見】
現行のベースアップ評価料は、様式が当初より一定程度簡素化されたが、未だ賃金改善計画書や賃上げ状況に関する報告等の事務負担が大きく、届出を行っている医療機関が限られている。そのため、すべての医療機関・医療従事者に対して賃上げ原資を行き渡らせる仕組みとはなっていない。医療従事者の人材確保が喫緊の課題となる中で、賃上げは一部の医療機関に限定されるべきものではなく、より広く確実に配分される必要がある。こうした点から、賃上げに係る評価は、ベースアップ評価料といった加算による対応ではなく、基本診療料の引き上げによって行うことが望ましいと考える。
また、中医協で支払側が各種加算について「一定の役割を果たし終わった」として見直しや廃止を求めている中で、ベースアップ評価料も一時的な措置であると考える医療機関も多い。一度上げた基本給を下げることは困難であることから、継続性が担保されていない評価料を賃上げの原資とすることに躊躇するとの声も多く聞かれる。賃上げ措置の実効性を確保するためには、届出や事務負担なく、すべての医療従事者に対して恒常的な賃上げが可能となるようにしなければならない。こうした観点からも、個別の加算ではなく、基本診療料を通じた評価の引き上げを強く求める。
仮に今後もベースアップ評価料による対応を継続する場合であっても、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)については、2024・2025年度のベースアップ分を別に評価するのではなく、初・再診料に溶け込ませて、初・再診料を引き上げるとともに、新たに2026・2027年度分のベースアップ評価料を設定することを求める。可能な限り簡素化をはかることで届出のハードルを下げること。
Ⅱ-3 かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価
(2) 生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点から、生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)を見直す。
(3) 特定疾患療養管理料は、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したものであることを踏まえ、当該管理が適切に実施されるようその対象疾患の要件を見直す。
【上記に対する意見】
生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)については、前回の診療報酬改定において算定要件や運用が大きく変更され、現場では患者への説明負担の増加、事務作業の増大など、限られた診療時間の中で、本来重視すべき診察に割く時間が圧迫されたとの意見も多数出されている。こうした問題点について十分な検証が行われなければ、生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進することは不可能である。生活習慣病管理料は2024年度改定で大幅な変更があったばかりであり、拙速な改定を行うべきではない。
現在、生活習慣病管理料は傷病手当金意見書交付料や悪性腫瘍特異物質治療管理料、療養費同意書交付料等が併算定できないこととなっている。これらは生活習慣病の管理とは全く異なる行為を評価した算定項目である。さらに、糖尿病を主病とした場合に在宅自己注射指導管理料が併算定できないが、関節リウマチの治療薬等、糖尿病とは別の自己注射も包括されている。いずれも極めて不合理である。
また、検査回数が少ない場合に算定上の制限を設けること等が議論されているが、検査の頻度は患者の病状や年齢、合併症の有無等に応じて、医師が専門的判断のもと個別に決定すべきものである。生活習慣病管理料の見直しにあたっては、医療機関の事務負担を軽減するとともに、不合理な包括範囲を是正し、検査や管理内容について医療機関の裁量を認めることが必要だ。
中医協では主病名を特定疾患にした上で、副傷病名を高血圧症等の生活習慣病管理料の対象疾患とするケースを問題視する意見が出されているが、主傷病や副傷病は、都度ごとの患者の症状や医師の医学的判断によって変更されうるものである。現行でも審査機関が投薬状況等を踏まえ医療機関に事情聴取し、審査するケースがある。「対象疾患の要件の見直し」の意味するところが判然としないが、仮に副傷病に生活習慣病の疾患名があることをもって特定疾患療養管理料の算定が制限されるとの趣旨であれば許されるものではない。患者一人ひとりに応じた最適な管理が行える制度設計とすることを強く求める。
Ⅱ-5-1 地域において重症患者の訪問診療や在宅看取り等を積極的に担う医療機関・薬局の評価
(5) 在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院について、災害時における在宅患者への診療体制を確保する観点から、要件を見直す。
【上記に対する意見】
中医協において業務継続計画(BCP)策定を在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院の要件とする意見が出されている。災害時において在宅患者の生命・生活を守る上で、訪問診療を行っている医療機関のBCP策定が必要であり、在宅のみならず、すべての医療機関に求められるものである。
一方で、要件化による実質的な強制や、介護分野における業務継続計画未策定減算のように、BCPを策定していないこと自体を理由として診療報酬を減算する仕組みを導入することには、強い懸念がある。
BCPは、各医療機関の規模や地域特性等に応じて柔軟に策定されるべきものであり、形式上の書類整備を目的とした要件化や、減算による事実上の強制は、実効性のある災害対策につながらない。本来、災害時における医療提供体制の確保は、都道府県で定める医療計画に位置づけられているものであり、診療報酬で誘導するものではない。政府の責任においてすべての医療機関にBCPの策定を支援するべきと考える。
Ⅱ-8 医師の地域偏在対策の推進
(3) 改正医療法に基づき都道府県知事が行う、地域で不足している医療機能等に係る医療提供の要請に応じず、保険医療機関の指定が3年以内とされた医療機関は、地域医療への寄与が不十分との位置付けであることを踏まえ、当該医療機関については機能強化加算、地域包括診療加算及び地域包括診療料の対象としない等、評価を見直す。
【上記に対する意見】
医師の地域「偏在」対策の推進とされているが、偏在以前に医師の絶対的な人数不足がより深刻な問題であると考える。OECD加盟国の平均値である人口1,000人当たり3.5人と比較しても、日本の医師数は同2.4人と低水準にあり(OECDヘルスデータ、2019年実績)、医療需要の増大や高齢化の進展を踏まえれば、偏在ではなく医師数不足が根本的な問題である。
厚労省の「医師偏在指標」の算定式は、単に地域の医師数や人口状況等を基準としている。この指標は診療科等を考慮しておらず、不十分な指標で偏在の評価を行うことは、地域において特定の診療科や専門分野の医師不足を一層深刻化させるおそれがある。さらに、地域医療を支えるため、医療機関はそれぞれ連携や役割分担を行っているところ、画一的かつ単純な基準による評価の見直しは、かえって医療機関間の協力関係を損ない、地域全体の医療提供体制の弱体化につながりかねない。
また、地域で不足している医療機能等に係る医療提供の要請に応じなかったことを理由として、機能強化加算や地域包括診療加算等の算定対象から除外することは、診療報酬を用いた事実上の制裁措置である。本来、診療報酬は医療の質を維持向上し、評価するためのものであり、医師の開業地や進路選択に対する誘導に用いるべきではない。そもそも、医療機関はその地域の実情に応じて各々地域医療を支えており、行政の画一的な判断で「地域医療への寄与が不十分」と判断されることは問題である。
さらに、医師がどの地域で、どのような医療機能に従事するかは、自身のキャリア形成、あるいは家庭の事情等を踏まえた選択であり、憲法に保障された職業選択の自由にも深く関わる問題である。行政からの要請に応じなかったことのみをもって評価を引き下げることは、医師の自由なキャリア形成・ワークライフバランスを損ない、結果として医師という職業自体の魅力を低下させ、長期的には一層医師不足が進行するおそれがある。
医師の地域「偏在」対策を進めるにあたっては、減算等の脅迫的な対応ではなく、医師数全体の底上げや、地域医療に従事することが優位に選択されるような労働環境や研修体制等の整備、支援策の充実を通じて取り組むべきである。診療報酬において、「行政が求める医療を提供できない」とされた医療機関に対する、一律の評価見直しは行わないよう強く求める。
Ⅲ-2-1 データを活用した診療実績による評価の推進
(2) 外来医療について、データに基づく適切な評価を推進する観点から、データ提出に係る評価を見直す。
【上記に対する意見】
データ提出加算は、本来国が主体となって整理・分析すべき医療データを、医療機関に実務として肩代わりさせる仕組みであり、診療報酬によって評価すべき性質のものではない。
特に、2024年度診療報酬改定においては、訪問診療回数の多い医療機関に対しデータ提出加算の届出が義務付けられ、過大な事務負担を生じさせている。データ活用の重要性自体を否定するものではないが、提出を前提とした評価や義務化は、診療の質向上よりも医療現場における事務作業の増大を招き、医療提供体制を圧迫するおそれがある。データ提出を強制する仕組みを廃止するとともに、新点数においても義務化しないことを求める。
Ⅲ-3 医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価
(1) 医療DX関連施策の進捗状況を踏まえ、普及した関連サービスの活用を基本としつつ、更なる関連サービスの活用による質の高い医療の提供を評価する観点から、診療録管理体制加算、医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の評価を見直す。
【上記に対する意見】
オンライン資格確認については、医療機関に対して事実上の「義務化」がなされており、導入後も月額利用料や保守料等のランニングコストが継続的に発生している。義務化自体も問題だが、現時点で強制的に導入を求められている施策である以上、その運用に伴うコストについては、安定的・継続的に評価されなければならない。機器の導入が普及したことを理由に評価を引き下げることは、今後の医療DX施策全体に対する信頼を損なうと指摘せざるを得ない。
また、医療DX推進体制整備加算の算定要件の一つとされている電子カルテ情報共有サービスについては、運用開始の遅れが生じており未だ本格稼働できておらず、経過措置の延長が行われている状況である。国が開発を主導するシステムでありながら、当初のスケジュールどおりに提供されていない。オンライン資格確認についても別人の情報が表示されるといった不具合が相次ぎ、日常診療に大きな悪影響を及ぼしている。このように制度自体が未成熟であり、また国でも実装時期を遵守できていないシステムへの参加までも含めた、複雑な算定要件を医療機関に求めることは、現場の混乱や事務負担を増大させるだけでなく、DX本来の目的である医療の質向上から乖離するものである。
そもそも、マイナ保険証の取得は任意であり、様々な理由で資格確認書を利用する患者も多い。医療DX推進体制整備加算はマイナ保険証の利用促進のために、その利用割合に応じて点数に差が設けられているが、マイナ保険証の利用率が低いこと自体は医療機関の責任ではなく、診療報酬上の評価に差異を設けるべきではない。
上記から、医療DXの推進にあたっては、加算や複雑な算定要件を求めるのではなく、基本診療料に包括した形で評価することが望ましいと考える。医療DXを恒常的に推進するならば、一時的な加算で評価するのではなく、医療提供体制の一部として基本診療料に位置付けることを強く求める。
Ⅲ-4 質の高いリハビリテーションの推進
(3) 適切な疾患別リハビリテーション料の算定を推進する観点から、運動器リハビリテーション料等に係る算定単位数の上限が緩和される対象患者を見直す。
【上記に対する意見】
前回の診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟における運動器リハビリテーションの算定上限が原則1日6単位までとされた。一方で、一般病棟等では一定の条件を満たすことで1日9単位までの実施が認められている状況である。病棟が異なるだけで患者が受けられるリハビリテーションの量が異なることは、合理性がない。ましてやリハビリを行うことを目的とした回復期リハビリテーション病棟の上限を6単位としたことは、評価のあり方として不適切である。
この見直しの根拠として、1日6単位を超えて実施した場合に、実施単位数の増加に伴うADLの明らかな改善が認められなかったことが示されている。しかし、その評価は主としてFIM(Functional Independence Measure)の数値に基づくものである。FIMは有用な指標ではあるものの、リハビリの効果を一面的に評価する指標に過ぎず、それのみをもって算定単位数の上限を判断することには慎重であるべきである。
実際の臨床現場では、FIMの点数が直ちに上昇しない場合であっても、将来的な自立度向上や生活の質の改善を目指して継続的なリハビリテーションが必要となる患者は少なくない。例えば、FIMの移動項目では歩行と車椅子での移動が同様に評価されるが、日常生活において「自らの足で歩行できるようになる」ことのメリットは多大である。こうした状態を目標としたリハビリテーションには、患者に応じて十分な時間と反復が必要となる。また、疾患の種類や重症度、患者の年齢等の個別の事情によって、機能回復に要する期間には大きな差がある。患者によっては9単位程度の実施により、生活の質の向上が確認できるケースも存在する。
このような実態を踏まえると、FIMの数値のみをもとに算定単位数を一律に制限する、これまでの議論を前提にすることは、個々の患者に最適なリハビリテーション提供を妨げ、回復の機会を狭めるおそれがある。算定単位数の上限が緩和される対象患者の見直しにあたっては、安易な単位数削減とならないよう慎重な検討を強く求める。さらに、合理性のない病棟種別による上限の差の撤廃を求める。
Ⅳ-1 後発医薬品・バイオ後続品の使用促進
(1) 後発医薬品の使用促進等の観点から、処方等に係る評価体系を見直す。
【上記に対する意見】
医薬品全体について、現在もなお医薬品の供給不足が解消されておらず、特に後発医薬品においては、出荷調整や供給停止が頻発しているところである。こうした中で、医療現場では代替薬の選定や処方変更、患者への説明対応など、様々な負担が生じている。後発医薬品の使用促進は、医療機関の業務負担の上に成り立っているものであり、供給状況の確認、患者の理解を得るための対応などは、いずれも診療報酬上十分に評価されているとは言い難い。
中医協では支払側委員から「後発品使用に関する加算を廃止し、むしろ後発品の使用割合が低い場合は減算とすべき」とする意見も出されているが、こうした意見は現場の実務負担を全く理解していないものである。加算の継続はもちろん、実務上の負担増加を踏まえた診療報酬の増点を求める。
Ⅳ-4-1 重複投薬、ポリファーマシー、残薬、適正使用のための長期処方の在り方への対応
(5) 長期処方及びリフィル処方箋による処方を適切に推進する観点から、計画的な医学管理を継続して行うこと等を評価する医学管理料の要件を見直すとともに、処方箋様式を見直す。
【上記に対する意見】
長期処方及びリフィル処方箋については、一部患者の利便性向上という側面がある一方で、高齢患者等では、対応に苦慮するケースも懸念される。また、医学管理上の観点からは慎重な対応が求められる。医師の診察を受けない期間が長期化することにより、重症化や合併症、薬の副作用の見逃しといったリスクが高まるおそれがある。
また、処方は本来、診察に基づく医学的判断として医師が行うものであり、長期処方やリフィル処方の推進を算定要件とすることは、医師の処方権を実質的に制約することとなる。受診間隔は患者の病状等に応じて判断されるものであり、医療費削減の名の下に誘導されるべきものではない。
リフィル処方については、薬剤師が患者の状態を確認した上で調剤の可否を判断することになるが、これは実質的に医学的判断を伴う行為であり、薬剤師の本来の役割や責任範囲を超えるおそれがある。さらに、リフィル処方箋は毎回異なる薬局で調剤を受けることができるが、こうした場合、服薬状況や残薬の把握が困難となる懸念を払拭できない。「計画的な医学管理を継続して行うこと等を評価する」のであれば、こうした医学管理の質の低下を招きかねない制度を前提とすべきではない。
以上の点を踏まえ、長期処方及びリフィル処方箋の推進については、医学管理上のみならず医療安全上の課題やリスクがあることから、医学管理料の算定要件とすることは適切ではないと考える。医師の医学的判断を尊重し、一部患者のみの利便性や医療費削減ありきではなく、何より患者の安全と医療の質を最優先とした制度設計を強く求める。
Ⅳ-4-3 医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方の推進
(1) 保険給付の適正化の観点から、栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の要件を見直す。
【上記に対する意見】
栄養保持を目的とした医薬品であるラコールやエンシュア・リキッド等については、添付文書上も経管栄養・経腸投与を前提とした栄養剤であるが、投与方法として経口投与も認められている。在宅医療や介護施設等の現場においては、低栄養状態により食事を摂る体力や機能自体が低下している患者に対し、通常の食事等では十分な栄養摂取が困難であることから、経口摂取がある程度可能な患者に対しても栄養保持を目的として使用されている実態がある。医学的妥当性を踏まえた上で経口投与されているケースも保険給付の対象外とすることは、現場の実情を十分に考慮しておらず不合理である。
これらの栄養剤は、一般的な食品や嗜好品とは異なり、嚥下機能や消化吸収能力が低下した高齢者やがん患者等にとって、栄養状態を維持し、体力を回復させるための治療そのものである。仮に、経口投与された栄養剤が一律に保険給付の対象外となった場合、患者や家族の自己負担は大幅に増加することとなり、経済的理由から必要な栄養管理が継続できなくなるおそれがある。
さらに深刻な懸念として、摂食・嚥下障害のリハビリをするよりも、栄養剤を経管栄養で投与したほうが保険給付され自己負担が減るとして、経済的な理由でリハビリを諦めざるをえない状況も想定される。食べる喜びは生きる喜びに繋がり、患者のQOLを引き上げるとともに治療効果に大きなプラスの影響を与えるものである。栄養剤の投与経路のみを基準とするのではなく、医師の医学的判断による栄養保持については、経口投与であっても今まで通り保険給付を認めるよう強く求める。
以上


