医師の働き方シンポジウム 医療現場の"今"語り合う

公開日 2026年02月06日

 1月11日に勤務医委員会は「医師の働き方改革施行後の現状と課題~新専門医制度と医師の労働時間~」を開催した。会場とWeb合わせて20人が参加した。

 全国医師ユニオン代表で勤務医委員会委員の植山直人氏の司会の下、まず、東京慈恵医科大学教授の越智小枝勤務医委員会委員が基調提案を行った。

 働き方の側面から見ると大学病院は臨床・研究・教育の3つの役割を持っているため極めて厳しい状況に置かれている。越智氏は自身の体験から、4つのキャリアモデルを示し、どのような選択を行うかが重要であるとした。また、道楽(仏教的な意味合いで、道を修めることで得られる楽しみ)としての診療を考える必要があるとし、今は権利としての労働を見直す局面が到来していると述べた。

 シンポジストの日本女医会会長・前田佳子氏は、「ジェンダーバイアスと医師の働き方改革」をテーマに報告した。一般的な「働き方改革」が目指すものを説明したうえで、医師の労働時間の現状を伝えた。これまで働いていた時間は誰が埋めるのか、最も知識や技術を身につける時期に勤務制限はどこまで必要なのか法律上での規制だけでは解決できない。女性医師の年齢別の就業や労働時間について触れ、30歳前後~50歳までの間は、就業率、診療時間共に少なくなり、専門医としての復帰も難しいと現状を報告した。日本のジェンダーギャップは未だ大きく、医療現場にもジェンダーバイアスが存在している。性別による役割分担でなく、能力にあった適材適所への配置をする方が、効率的に診療に集中できると述べた。

 総合診療科の専攻医(国立大学病院勤務医)・前島拓矢氏から、自身の経験を基に「新専門医制度と医師の労働時間を考える」をテーマに報告があった。新専門医制度の理念自体は大切なことであり、また、少しずつ改善もしてきていると評価したうえで、問題点を指摘した。まずJ―OSLER(専攻医登録評価システム)入力に1・4カ月分(中央値)の労働時間を割いているにもかかわらず、自己研鑽扱いにされている現状、専攻医の取得、更新のための費用が発生すること、臨床の現場で制度の内容が浸透していないことを挙げた。まとめとして専門医機構も試行錯誤しているものの、より専攻医の意見を反映させた制度を目指し、根本の医師不足に目を向けてほしいと訴えた。

 最後に司会の植山氏からも現場の報告があった。専攻医は学ぶ立場で専門家としての能力がないが、医師スタッフとして通常診療を担っている。しかし、学ぶ時間が十分確保されておらず精神的・身体的な健康障害を抱える専攻医は少なくない。植山氏は2015年に起きた国立大学医学部大学院生の過労死事件を紹介し、医療機関として専攻医に対する安全配慮義務の具体化が確立されていないと訴えた。

 討論では、シンポジスト各々がこれからの医師が働く環境をどうすべきか、活発に議論した。

 
 左から、植山直人氏、越智小枝氏、前田佳子氏、前島拓矢氏 (1月11日、セミナールーム)

(『東京保険医新聞』2026年2月5日号掲載)