[解説]高額療養費制度見直し案の問題点

公開日 2026年02月26日

 政府は2025年12月24日、高額療養費制度について、2027年夏までに段階的に、所得に応じて自己負担の月額上限を7~38%程度(非課税世帯は4~5%程度)引き上げることを決めた。2024年度に大きな反発を招いた全世代への引き上げや「多数回該当」の上限引き上げは見送ったものの、大多数の利用者には引き上げとなることが見込まれる。

 高額療養費制度(以下、高額療養費)は、公的医療保険で医療を受ける患者の自己負担金が一定額を超えた場合にその超えた金額を支給する制度だ。2024年度にも高額療養費の見直し案が政府から出されたが、患者団体を中心とした国民からの大きな反発を受けて凍結された。2025年度は患者団体からのヒアリングを行う等政策決定プロセスは改善されたものの、この改悪が一部の患者に負担を集中させるものであることに変わりはない。

 高額療養費は、医療保険だけでは窓口負担が天井知らずとなってしまう患者のために創設された。改悪により、不意に重い疾患にかかった時の患者負担が増加する。困ったときに十分に保障を受けられないのであれば、比較的疾患にかかりにくい現役世代は公的医療保険に加入し続けるメリットを感じなくなるだろう。政府は2450億円ほどの医療費削減を見込んでいるが、保険料削減額は国民一人当たり年間わずか1400円程度にとどまる。

 高額療養費の見直しにあたって、政府は「応能負担」を主張し、所得の高い利用者の負担を加重する方針を打ち出している。

 しかし、休職・休業等による収入減を伴うことの多い、重篤な疾病の患者に高額な支払い能力を見込むのは妥当なのか。「応能負担」を主張するのであれば、保険料等で大企業・高所得者に広く負担を求め、高額療養費の限度額を引き下げるべきだ。政府が実施しようとしているのは応能負担による「医療費削減」ではなく、今まさに疾患にかかっている少数の利用者を狙い撃ちにした単なる「コストシフティング」だ。

 この改悪での削減額には、給付率減少に伴う受診抑制分1070億円が含まれている。高額療養費を利用するほどの疾患を持つ患者に対して受診抑制を見込んだ政策を打ち出すことは、政府が国民のいのちを軽んじているといっても過言ではない。協会は不合理な制度改悪に断固として反対する。

 

(『東京保険医新聞』2026年2月25日号掲載)