公開日 2018年06月04日
医師数 OECD並みに
3月15日、衆議院第2会館で「医師の働き方を考える国会内集会」が開催され、全国から勤務医・開業医ら150人が集まった。
基調提案を行った本田 宏氏(元・埼玉県済生会栗橋病院院長補佐)からは、日本の医師数をOECDの平均水準にするには、現行の数に加えて約10万人が必要だとの訴えがあった。
全国医師ユニオン代表の植山直人氏は、同ユニオンが行った「勤務医労働実態調査2017」(最終報告2018年2月20日、1,803人の勤務医が回答)の結果をもとに報告。勤務医の過酷な労働環境をあらためて浮き彫りにした。
業務量は増えている「勤務医労働実態調査2017」
「前回2012年に実施した調査から5年が経過したが勤務医の過重労働は改善せず、むしろ業務量が増えていると回答する医師もいる。残念ながら、今も医師や研修医の過労死が続いている」。植山氏は厳しい口調で報告を始めた。
調査では、医師の交代制勤務の導入も進まず、84%が“未実施”(図1)。労働基準法が定める4週間に4日以上の休みが取得できない医師が32.9%、このうち月に1日も休みが取れない医師が10.2%もいた(図2)。健康状態では、約4割が健康に不安を抱えている(図3)。
労働時間をタイムカード等で管理しているのは27.5%で、反対に自己申告が51.5%、管理なしが17.2%と、悪しき慣習とも言うべき体制が今も根強く残っていることも浮き彫りとなった。
勤務医代表不在の“有識者会議”
2016年1月、新潟県内の市民病院で当時37歳の女性研修医が過労自殺した痛ましい事件は記憶に新しい。後に労災認定はされたものの、電子カルテの記録上は月に最長250時間超の時間外労働があった可能性が報告されている。
厚生労働省では「医師の働き方改革に関する検討会」を立ち上げ、全国医師ユニオンと同じく昨年2月末に中間取りまとめを発表した。しかし、集会で登壇した本田氏と植山氏からは「検討会には勤務医を代表する委員がいない。さらに医師数が絶対的に不足している点や、人員を増やすために診療報酬による十分な手当てが不可欠であることに全く触れていない」と指摘。まさに“働く側”ではなく、“働かせる側”の構成員だけで議論する歪んだ検討会といわざるを得ない。
あと何人犠牲が出れば
「あと何人犠牲者が出れば過労死はなくなるのか」
集会に参加した山添拓議員(参・共産)が、3月13日に参院・予算委員会の公聴会で公述人として意見陳述した中原のり子氏の言葉を紹介した。
1999年8月16日、都内の病院に勤務していた小児科医が過重労働からうつ病を発症し、44歳の若さで病院屋上から飛び降りて命を絶った。「医師にだけはなるな」と故人の言葉を胸に秘めつつも、ご息女は今小児科医として医療現場で日夜奮闘している。
国会では、“働き方改革法案”の成立が狙われているが、医師については、医師法の応召義務等の特殊性をふまえた検討が必要だとして、時間外労働の上限規制適用を「5年を目途に猶予する」と、対策を実質“先送り”にしている。“医師の働き方”は待ったなしの課題だ。
(『東京保険医新聞』2018年4月25日号掲載)