保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【解説】消費税損税解消は『ゼロ税率』で―12月の税制改正大綱を前に重大局面迎える―

公開日 2018年12月20日


診療報酬は非課税とされており、医療機関は仕入れに係る消費税を納付額から控除することができず「損税」として負担し続けている。2019年10月に消費税10%への引き上げが実施されれば、医療経営に大打撃を与えることは必至だ。損税問題については年末に結論が出される。損税が解消されるのか、このまま負担し続けるのか―抜本的解決に向けての運動が正念場を迎えている。

181005_06【解説】損税負担額円グラフ

東京無床診の損税負担、平均176万円―抜本的解決は喫緊の課題

18年3月に保団連が実施した消費税概算調査では、東京の無床診療所は平均176万円もの「損税」を負担しており、非課税収入の2・37%にのぼることがわかった(円グラフ)。病院の損税負担はさらに深刻で、ある会員病院(189床)からは「年間9000万円」との報告も寄せられている。

一方、診療報酬は2014年度以降、実質マイナス改定が続く。2018年度改定ではネットでマイナス1・19%、本体プラス0・55%に過ぎなかった。消費税増税や人件費等の上昇によって、医療機関経営は困難を極めているのが実感であろう。協会が6月に実施した「ゼロ税率を適用するとともに消費税10%の引き上げ中止を求める院長署名」には、短期間に658人の会員の賛同が寄せられた。自由意見欄には、「消費税10%への引き上げを現状のまま実施することは、医療機関にとって致命傷となる」「度重なる診療報酬引き下げで、これまでの消費税分の診療報酬引き上げ分は相殺されている。いのち・医療にかかわる消費は『ゼロ税率』としてほしい」「診療報酬の上昇率に比べ、材料費、人件費等の高騰が著しく、医療機関の経営は非常に厳しい」といった切実な声が記されていた。

損税問題の抜本的解決は、診療所・病院の別なく、いよいよ喫緊の課題となっている。

重大な局面迎える損税問題―抜本的解決は「ゼロ税率」で

保団連・協会は医療への「ゼロ税率」を求めている。本来、消費税は最終消費者(医療では保険者や患者)が負担し、事業者が仕入れにかかった消費税を差し引いて納税する。診療報酬は非課税であるため、医療機関は仕入れにかかった消費税をどこからも差し引くことができない。

「ゼロ税率」とは、実務上は診療報酬を「課税対象」にして、消費税率を0%で計算し免税にするというものだ。非課税売上ではないので、仕入れにかかった消費税が全額還付され、損税負担が解消される。すでに輸出事業者は免税取引として消費税を0%と計算し、仕入れ税額の還付を受けている。
保険医療は、国民のいのちと健康に携わる高い公益性への政策的配慮から非課税とされている。診療報酬への上乗せでは患者負担増は避けられず、公益性そのものを損ないかねない。

181005_06【解説】「ゼロ税率(=免税)」では、患者・医療機関に税負担は生じない

厚労省の大罪、診療報酬補填率を下方に見積もり

厚労省は診療報酬で損税分を補填しているという。しかし、7月25日の中医協分科会で消費税損税の診療報酬による補填状況把握調査の誤りが明らかになった。
2014年度分の全体の補填率が102・07%から90・6%に訂正され、損税が診療報酬で補填されていないことが判明した。新たに報告された2016年度の調査でも補填率は92・5%で、100%を下回っている。

厚労省は「マクロでおおむね補填されている」との認識で、誤ったデータに基づき、2016年度、2018年度の診療報酬改定を実施した。医療機関を経営難に陥れ、医療水準を引き下げた厚労省の罪は重い。

この調査ではマクロでの把握しかできず、厚労省自身も数字のばらつきを認めており、補填率の信ぴょう性は低い。診療報酬での補填ではなく、個々の医療機関の申告により還付を受ける「ゼロ税率」が最善の解決策である。
18年度税制改正大綱では、医療の損税問題について「2019年度税制改正に際し、税制上の抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る」とされており、年末に策定される2019年度の税制改正大綱に向け重大な局面を迎えている。

1989年4月に消費税が導入されて約30年余り、医療機関が、制度の不備により損税を負担し続けている。医療者が団結して声を上げなければこの状況は変わらないだろう。協会は秋の国会で消費税10%への引き上げの中止とともに、医療への「ゼロ税率」適用の実現に向け、全力で取り組んでいく。会員の皆様のお力添えをぜひお願いしたい。

(『東京保険医新聞』2018年10月5日PR版掲載)

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