【談話】調査結果から見えてきたもの

公開日 2020年02月13日

協会理事 中村 洋一

 2019年11月に協会で実施したアンケートの結果から、開業医の働き方が多くの問題を孕んでいることが明らかになった。

 診療時間は総じて週40時間だが、書類記載、レセプト業務、労務、医師会業務、研究会など診療外時間も含めると、回答者の約2割が過労死ラインの週60時間、月80時間の残業時間を超えており、高収入な職業の代表のように思われる開業医でも実態は長時間労働に支えられているのが分かる。

 休日取得は平均で週1.6日であり、休日が全くない人も数%いることがわかった。健康のバロメーターとなる睡眠時間では7時間以上が3割に対して、5時間台が22.1%、6時間台が43.1%で、NHKの国民生活調査の値よりも短い。

 こうした労働について、「過重」、「やや過重」を合わせて67.2%と、非常に多くの医師が辛さを感じていることがわかる。在宅医療を担っていると更に負担は多い。抱える精神的ストレスも多く、10.5%の人は睡眠薬を常用している一方で、地域医療への責任感から働く意欲は高く維持されているのも特徴的だ。

 どの世代でも共通した問題は経営の不安である。開業当初は患者が少なく、自身の生活費をバイトで賄う、円熟期になる頃には競合医療機関が出現し患者が減る、老年期には患者が離れるなど常に経営上の不安がある。反対に大変患者数が多くて夜遅くまでの診療、書類記載業務に忙殺されている所もあった。診療に忙殺されると日頃の自身の生活にも影響が当然出てきて、不満が生じてくる。中には自由に診療時間を整えられて、仕事も生活も満足している方も複数いた。だが、実際には開業医の健康はかなり蝕まれていると考えるべきであろう。平均寿命の短さや労働時間の長さに比べて意欲が高いのは、過労に気づいていない証左でもあろう。

 開業医は自由に自分の目指す医療を行えるのだから一見理想の職業のようにも思える。しかし、自分の自由な時間を持てず、地域では孤独でもある。従業員の生活を担う責任ある経営者としての顔も持つことになる。少なくともこれらの重圧に耐えるために、医師個人の問題意識と共に、バイトの医師を雇用できるような診療報酬など社会的な問題意識が必要と思われる。

(『東京保険医新聞』2020年2月5日号掲載)