主な助成・融資制度

公開日 2020年04月25日

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が出され、医療機関でもスタッフが出勤できない状況や診療時間を短縮するなど雇用管理の見直しを余儀なくされている。主な助成制度と労務管理のポイントを紹介する(助成額や申込期間、問合せ先は表1参照)。

新型コロナウイルスの影響で事業を縮小した場合

 「雇用調整助成金」は、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた雇用保険適用事業者について適用を拡充した。雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する。前年同月比で生産指標が5%以上減少した事業者が対象となり、雇用保険被保険者でない労働者も対象となる

学校の休校に伴いスタッフが欠勤した場合 

 「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」は、小学校等の臨時休業等により仕事を休まざるを得なくなった保護者に対し、正規雇用・非正規雇用を問わず、有給休暇とは別に賃金全額支給の休暇を取得させた事業所に対し助成する制度である。

国の事業所向けの給付金

 国の「持続化給付金」は、新型コロナウイルス感染症拡大により特に大きな影響(売上が前年同月比で50%以上減少)を受ける事業者に対し、事業全般に広く使える給付金である。なお、申請に関する詳細は4月最終週に公表予定。

無担保・無利子の融資制度 詳しくはこちらもご参照ください。

 独立行政法人福祉医療機構が、新型コロナウイルス感染症の影響により事業の継続に支障がある福祉および医療関係施設に対して、無担保・無利子で経営資金・長期運転資金の融資を行っている。

スタッフを休ませる場合

 欠勤中の賃金の取扱いについては、労使で十分な話し合いの上、協力して、労働者が安心して休めるよう体制を整える。賃金については、使用者の自主的な判断により休業させる場合、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければならない。この場合、支給要件に合致すれば「雇用調整助成金」の支給対象になる。労働者の申出で有給休暇を適用することも可能である。

感染したスタッフを休業させる場合

 新型コロナウイルス感染症は指定感染症のため、感染症法の就業不能となり、休業手当の支払い義務はなくなる。休業手当を支払い、要件を満たした場合は、「雇用調整助成金」の対象となる。この場合、傷病手当金の支給対象となり給与日額の3分の2が補償される。傷病手当金は本来は被用者保険の制度であるが、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受けて、国民健康保険(国保組合)でも支給するよう厚労省から通知が出されている。

スタッフが感染した場合の労災保険給付の扱い

 業務又は通勤に起因して発症したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となる。休業した場合、休業(補償)給付として給与日額の8割が給付される。なお、入院費については、感染症法の規定に基づき公費の対象となる。

感染拡大防止のための健康診断の延期

 労働安全衛生法に基づき、雇入れ時および1年に1回の一般健康診断が事業所に義務付けられているが、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下では感染拡大のリスクがあるため、健康診断の実施時期を5月末まで延期できる。

新型コロナウイルス感染患者を診療した場合

 適切に感染防護具を着用して診療した場合は濃厚接触者に該当しないので、就業を控える必要はない。「適切ではない」と考えられる行動を行った場合は、個別判断となるため保健所へ相談すること。

診療時間を短縮する場合

 管轄の保健所に「診療所開設届出事項一部変更届」(個人の場合)および関東信越厚生局東京事務所に「保険医療機関届出事項変更(異動)届」を変更から10日内に提出する。

医療崩壊防ぐため国と都は速やかな補償を

 助成金などについては上記の他に、各自治体独自で行っている場合があるので問い合わせをされたい。

 新型コロナウイルス感染症の拡大により脆弱な医療体制が浮き彫りになり、深刻な医業経営のもと、スタッフの雇用・働き方を見直さざるを得ない状況である。雇用調整助成金の支給決定はわずか2件(4月3日時点)と報道された。国および東京都には医療崩壊を防ぐためにも、速やかに簡便な方法での補償を求めたい。

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(『東京保険医新聞』2020年4月25日号掲載)

※上記の内容は、2020年4月15日に作成したものです。最新の情報とは異なる場合がありますので、各機関へお問合せいただくか、会員の方は東京保険医協会へお問合せください。