保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

韓国医療視察 印象記(1)―厚労省が羨むPC審査90%の背景

公開日 2018年06月07日

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総医療費の半分が保険外診療―低公費・低給付・低報酬の実態に触れる

理事・研究部長 申 偉秀

保団連・韓国保険医療視察(5月3~6日)に同行した協会役員3氏(申偉秀・井上博文両理事、吉田章副会長)の印象記を今号から連載する。

日本の厚労省が目指す「支払基金業務効率化・高度化計画」は、電子レセプトの9割をPC審査で終了させ基金人員の削減につなげるとのことである。そこで、(1)レセプトの9割をPC自動審査している韓国の審査システム及び保険診療の把握と、(2)韓国とは似て非なる電算化レセプト体系の日本でPC自動化審査の実現性を見極めるために、11年前にともに韓国の保険医療視察を行った保団連情報通信部に同行した。

4月27日に急遽行われた南北首脳会議など半島情勢や荒天が心配な日程であったが、さらに驚くことになった。前政権で可決し4月に施行された「健康保険補償性強化対策(通称・文在寅ケア)」により3,800余りの保険適用外自費診療(法対外非給与)の一部が保険適用されたことに大韓医師協会が猛反発したあおりを受け、主訪問先の審査機関HIRA(健康保険審査評価院)訪問が直前にキャンセルされたのだ!

保団連と各協会参加者による綿密な事前質問も送付しており、上記(2)についての回答は事態が落ち着いてからとのことであり、つくづく政治情勢に翻弄される結果となった。しかし視察の便をとってくれた審査ソフト開発会社および11年前もお世話になった、柳韓大学関係諸氏の講演と調査でかなりのことが明らかになった(詳細は次号および『診療研究』誌にて)。

代わりに大きな収穫として、上記(1)つまり韓国の保険診療の実態についての率直な意見を訪問した病院、診療所で聞くことができた。

11年前の訪韓時にも強く感じたことだが、韓国の保険診療は「低負担(保険料が安く、国庫支援が少ない)」の結果「低給付(保険診療の対象が少ない)」で「低報酬(保険診療だけでは経営が難しい)」の3低政策であり、総医療費の半分近くを保険外診療で賄なってきた結果、患者の自己負担増を招いた。ここ数年、保険適用診療を急激に増やしてきたために、医療提供側との軋轢が激しくなり、今回その渦中での視察となったのである。

課題(2)のPC自動審査も保険医療が少ないために実施できていた面もあり、今後は予断を許さないのではないか、ほぼ保険診療の日本では韓国のPC自動審査をそのまま適応できないとの印象を深くした。

(『東京保険医新聞』2018年6月5日号掲載)