2021年度 対都予算請願 都福祉保健局と懇談

公開日 2020年10月07日

福祉保健局Ⅱ
コロナ禍の中で浮き彫りになった都の医療体制の課題について、要請を行った(9月9日、東京都第二本庁舎会議室)

 協会は小池百合子都知事に提出した「2021年度 東京都予算等に関する請願」(『診療研究』11月号掲載予定)に基づき、9月9日に東京都福祉保健局および病院経営本部と懇談した。当日は須田昭夫会長をはじめ、協会役員8人が2時間にわたり要請・意見交換を行った。主な内容を紹介する。

感染症対策と保健所機能の拡充

 COVID―19の感染拡大により保健所機能がパンクし、PCR検査を受けられない事態が多発したことは記憶に新しい。

 協会は保健所の業務量に応じた人員配置、保健所数と保健所機能の拡充を求めた。都は保健所内の応援体制の確保、非常勤職員の活用等に加え、都職員の各保健所への派遣等、保健所の体制の充実や負担軽減を図っていると回答した。

 これに対し、協会は、保健所の業務には高い専門性が求められ、応援要員では一朝一夕には担えないことを指摘し、COVID―19に限らず、今後の新興・再興感染症への対応のためにも、保健所数や職員数を増やす等、保健所機能を抜本的に拡充するよう改めて要望した。

 また、感染症対策としてHER―SYSの記入事項の簡素化を国に求めること、新興・再興感染症患者が発生した際には、医療機関に対して速やかに情報を周知するよう要望した。

都民に必要な病床の確保を

 COVID―19の拡大を受け、病院経営の悪化が深刻だ。協会は病床確保のための積極的な財政支援を要望した。

 これに対し都は「入院患者を受け入れた医療機関に対しては、臨時支援金を交付するなど、さまざまな支援策を講じている。医療機関の実情をふまえた支援の拡充について国に要望していく」と回答した。

 協会からは、「COVID―19患者を受け入れていない病院でも、院内感染防止のために非常に神経を使っている」「融資を受けた医療機関は5年後から返済する必要がある。5年後が本当の修羅場になる」「病院経営は本当にぎりぎりまで追い詰められている。医療崩壊しないよう、積極的な財政支援を行っていただきたい」と強く申し入れた。

都立病院独立行政法人化の撤回

 コロナ禍で、都立病院や公社病院が都民の健康と安全の砦として機能している最中にもかかわらず、東京都は3月31日、すべての都立8病院と都保健医療公社の6病院を、2022年度内をめどに地方独立行政法人化する方針を決定した。独法化方針の撤回を求めた協会に対し、都担当者は、「患者数の動向や、他の医療機関との役割分担をふまえながら、必要な病床の確保とその運営に必要な体制の整備を行う等、重要な役割を果たしてきた」と都立病院・公社病院の重要性を認めながらも、「高齢社会の本格化に伴う医療環境の変化や都民ニーズに迅速かつ柔軟に対応できる病院運営を実現するために独立行政法人化が必要だ」として独法化の方針に変わりがないことを強調した。これに対し協会は、「感染症に対応できる都立病院・公社病院があって良かったと地域住民はもとより、医療者も心から実感している。少なくともCOVID―19が落ち着くまでは独法化の議論は中断、凍結してほしい」と再考を強く促した。協会は引き続き、粘り強く要請を続けていく。

指導大綱を逸脱した個別指導の改善

 協会は、個別指導の際に指導を受ける保険医を揶揄、恫喝する等、指導大綱を逸脱する行為があった場合、同席する都職員に保険医を擁護するよう要望した。

 都側からは「指導大綱から逸脱する言動等があった場合には、会場にいる東京都の職員に報告していただきたい。都としても、具体的な事例報告があれば厚生局東京事務所や指導医に報告することができる」との回答を得た。

 個別指導時に恫喝等を受けた場合は、会場内の東京都職員に訴え出るとともに、保険医協会にもぜひご一報のうえ相談されたい。

(『東京保険医新聞』2020年9月25日号掲載)

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