2017年度 東京都予算等に関する請願【後編】

公開日 2016年07月21日

(前編からのつづき)

第7章 医療費の助成等について

1.子ども医療費助成と子どもの国保料の軽減について【新】

 子育て世代の経済的負担を軽減するため、都の医療費助成制度を拡充させ、三多摩格差となっている窓口負担200円を撤廃し、助成の対象を18歳まで拡大すること。
 また、国民健康保険は、稼働所得のない子どもにも保険料が賦課されており、子育て支援に逆行しているといわざるを得ない。区市町村国保における18歳までの子どもの均等割を軽減する制度を、都として独自に創設すること。国保組合加入の子どもの保険料に対しても軽減を行うこと。

2.「難病」医療費助成等について

(1) 患者の実態に合わせた認定判断基準の運用
 障害認定のための、肢体不自由の総括的解説には、「肢体不自由者が無理をすれば1kmの距離は歩行できるが、そのために症状が悪化したり、又は疲労、疼痛等のために翌日は休業しなければならないようなものは1km歩行可能者とはいえない」と書かれている。
 しかし、例えば筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群患者や線維筋痛症患者においては、通常以下の労作によって、翌日以降まで遷延する極度の疲労・疼痛のため当該患者の日常生活がほぼ不可能になるわけであって、肢体不自由者に対する身障者手帳取得時の審査において、審査のために強制されて行った労作が可能かどうかによってのみ肢体不自由の評価することは、甚だ公正を欠くものである。
 身体障害者福祉法の趣旨に照らして、「日常生活能力を回復する可能性が極めて少ないかどうか」に重点をおいた審査を実施していただくこと。

(2) 専門の医師による審査員向け講習会の実施【新】
 身体障害者手帳の認定審査において、身体障害者福祉法に定める内部疾患の認定基準では審査員には判断がつかない場合、当該疾患の専門の医師による審査員向けの講習会を開催すること。

3.医療費助成制度の申請手続きにかかるマイナンバー記入について【新】

 マイナンバー記入欄について、やむを得ず空欄で提出した場合にも不利益な取り扱いを受けない旨を申請者へ丁寧に説明すること。

4.70歳以上の医療費助成制度の創設

 70歳以上の医療費無料化を目指す日の出町の取り組みに学んで、70歳以上の都民の医療費一部負担金を無料とする制度を復活すること。

第8章 健康保険制度について

1.国保加入者の負担軽減と広域化に伴う都の役割発揮について

 国保に対する区市町村の法定外繰入金は増加し続けている。都道府県化に向けて、国は毎年約3,400億円の財政支援を行うが、全国の区市町村の繰入金総額よりも少ない。国保の広域化に伴い都は区市町村とともに保険者となることから、率先して国保料減免制度の拡大や、都財政よりの法定外繰入金等の財源投入強化をはかり、「高すぎて払えない保険料」を「払える保険料」とすること。資格証明書を発行させず、短期保険証や差し押さえを減らす努力を行うこと。

2.必要な者に必要な給付を保障する社会保険制度の原則を形骸化させないこと

 医療保険制度改革法の保健事業に関する事項では、疾病予防や健康増進等に取り組んだ被保険者に対して、「支援」することが保険者の努力義務として加えられた。厚労省の資料によると「支援」とは、予防・健康づくりの取り組みに対して、商品やサービスと交換できるヘルスケアポイントの付与や現金の給付などである。これでは、ポイントを得るために早期受診が抑制される恐れがある。
 疾病予防と健康増進に取り組めない「不健康な」被保険者こそ、保健事業の介入を必要としていることから、国保保険者ともなる都は、必要な者に必要な給付を保障する社会保険制度の原則を形骸化させない姿勢を堅持すること。

3.医療の必要があるときは短期証を発行する旨、周知徹底すること

 国保加入者について、資格証明書を発行されていても、医療を受ける必要が生じた場合は、被保険者証の交付が可能であること(2009年1月20日 国答弁書)を都民および医療機関へ周知徹底すること。

4.無保険状態となる人を出さない取り組み

 社保加入者が退職等で資格喪失した後、適切な手続きをとらずに無保険状態となるケースが増加している。社保の資格喪失をその後の無保険状態の契機とさせないために、日本年金機構と区市町村国保の覚書の取り交わしによる「ねんきんネット」活用を進めるよう、引き続き区市町村に働きかけること。また、将来的に都が保険者となる場合も、都として覚書を締結すること。

第9章 医療機関への指導等について

1.個別指導のあり方

【新】 (1) 厚労省告示と違って、通知・通達・事務連絡には保険医を拘束する法的根拠がないため、点数表の留意事項通知・疑義解釈事務連絡に規定されている算定要件に合致していないという理由で、個別指導において指摘したり自主返還を求めることをやめること。

(2) 「高点数」を選定理由とした個別指導は行わないこと。

(3) 新規個別指導は保険診療を初めて行う保険医への指導であることに鑑み、結果措置から「再指導」を廃止し、当日のみの指導で完結すること。また、自主返還を求めないこと。

(4) 個別指導は行政指導であることから、行政手続法の趣旨に則って行うこと。指導大綱は局長通知に過ぎないことから、指導を受ける保険医は自主返還に応じる義務がないことを確認していただきたいこと。また、保険医が自主返還に応じないことをもって不利益な処分を行わないこと。

(5) 個別指導時には、被指導者が希望する医師の同席も認めること。

(6) 健康保険法73条2項は「診療又は調剤に関する学識経験者をその関係団体の指定により指導に立ち会わせるものとする」と規定している。この規定の趣旨に則り、東京保険医協会に対しても個別指導時の立会人の依頼を行うこと。

(7) 個別指導において指導大綱に存在しない「中断」は行わず、指導当日に完結するよう努めること。

(8) 個別指導は行政手続法の趣旨に則り、被指導者から求めがあった場合には、患者からの情報提供によるものも含めて、選定理由を具体的に開示すること。

(9) 個別指導や新規指導で再指導となってしまった場合、再指導の際に指導医療官が変わり、前回の指摘事項をまったくふまえずに指導がなされる場合がある。再指導の際の指導は必ず前回と同一指導官が務めること。

(10) 電子カルテを使用する医療機関が増加している。医療機関が対象者の診療録等を電子的に持参した場合に閲覧できるパソコンを東京都・厚生局・東京事務所の責任で設置すること。

(11) 医療機関に送付する集団的個別指導の選定通知に、「該当した類型区分」、「当該医療機関の点数」を記載すること。

第10章 東京の災害対策について

1.大規模停電時の医療機関の電力確保

(1) 医療施設自家発電設備整備事業の継続
 緊急時の電力確保のため、2013年度で終了した医療施設自家発電設備整備事業を再開すること。

(2) 人工透析を行う医療機関への電力、水の供給
 人工透析を行う医療機関には電源車などによる電力供給ができるように、電力会社として対応するよう働きかけること。また、福祉保健局と水道局とが連携し、透析に使用する水の確保を行うこと。

(3) 自家発電用重油の補充体制の確保
 自家発電装置のある病院では重油の備蓄が制限されており20時間程度で消費するため、停電が長時間続いた場合の重油の供給体制を確保すること。

(4) 再生可能エネルギー発電システム及び蓄電装置の補助
 緊急時の電力確保のため、都内医療機関に対して太陽光発電など再生可能エネルギーシステム及び蓄電装置の補助を行うこと。

2.仮設診療所の設置、自治体間の協力体制の周知

 広範囲で多くの医療機関が機能を停止することを想定して、仮設診療所の設置体制を構築すること。また、隣接区市町村間の連携を強化するとともに、災害時医療連携について、医療機関、都民に周知すること。

第11章 東日本大震災避難者への継続的支援について

1.都内避難者への支援

(1) 年少避難者の被曝にかかわる健康支援
 原発事故当時18歳以下だった福島県民36万人に対して、県外避難者も含めて、福島県は甲状腺エコー検査を進めているが、被曝関連の疾患は甲状腺の異常にとどまらない。子どもたちの健康を守り、家族の不安を取り除くために、プライバシーに配慮しつつ、都内に避難している子どもたちを対象とした継続的な健康調査を無料で行うこと。

(2) 住宅の確保
 国の要請に基づき、都内避難者への「住宅支援」は、岩手県、宮城県の避難者については入居日から6年間に、福島県の避難者については2017年度末まで延長することとなった。総務局の調査では「避難生活の先行きやご自身の健康面への不安、応急仮設住宅の入居期間の延長を望む意見等が多数寄せられた」ことや、都内避難者のうち22.5%しか正規雇用されていないことなどが報告されている。国や避難元である県の意向ではなく、避難者自身の意向を尊重した「住宅支援」を都独自に延長すること。

第12章 障がい者対策について

1.障がい者差別の根本的な解消

 2006年に成立した障がい者権利条約に基づき、本年4月から障がい者差別解消法が施行された。条約の理念を遵守し、世界水準にならった諸施策を通じて真に利用しやすいバリアフリー体制の実現や雇用・就学支援等を行うこと。世界中から多くの人々が集まる2020年オリンピック・パラリンピックに向けて、障がい者差別の根本的な解消を図ること。

以上

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