2017年度 東京都予算等に関する請願【前編】

公開日 2016年07月20日

 東京保険医協会は、2013年7月20日、東京都知事宛に来年度の都予算等に関する請願書を提出しました。
 また、この内容に基づいて都福祉保健局およびと議会各会派と懇談を進めました。

2017年度 東京都予算等に関する請願

2016年7月20日

東京都知事 殿

東京保険医協会
会長 鶴田 幸男

 

 東京都知事殿をはじめ東京都職員各位におかれましては、都民の暮らしを充実させるためにご尽力されていることに敬意を表します。巨大都市東京は、過密、多様性、格差、高齢化など多くの問題を抱えながらも、前向きに発展しているように感じております。

 私たち東京保険医協会は、都内で保険医療に従事する医師約5,400名を集める団体ですが、日ごろの医療、介護、疾病予防などの業務に携わって感じている事柄をお伝えして、ご検討をお願いする次第です。東京都には、他の都市が果たすことのできない様々な役割がありますが、東京都は地方交付税不交付団体として、比較的自由度の高い政策が可能と伺っております。

 東京都が先鞭をつけたことによって、全国に波及した政策は少なくありません。実際、ワクチン問題などで東京都が果たした役割は、高く評価されています。医療に関する問題を考えるとき、私たちは東京都から始めていただきたい、という期待を込めて請願している内容もございます。先例の有無ではなく、請願の意義についてご検討いただければ幸いです。

 今年はリオデジャネイロでオリンピアドが開かれますが、風土病であったジカ熱がクローズアップされました。2020年には東京での大会が予定されていますが、これまでワクチン後進国と言われてきた日本には、大挙して来日する選手や観客のために、ワクチンで防げる病気に対して、いっそうの対策が必要です。

 例えば日本は、昨年ようやく“麻しん排除状態”としてWHO世界保健機関から認定されましたが、一方で風しんについては、未だ膨大な数の免疫を持たない人(特に男性)を抱えたままとなっています。制度の不備やうち漏れを補う救済接種など、お願いしたいと考えます。

 またオリンピアドを好機としたバリアフリー都市への転換、選手村の一部を身体障害者施設に転換することなどをご検討いただければ幸いです。

 保険医療を提供する体制については、地域医療構想には慎重に対応し、病床数の激変を回避して頂きたいこと、国保の都道府県化が保険料の高額化を招かないための対策、医療特区構想が医療の高額化を来さないための対策などが挙げられます。

 国は病床数の削減と要介護者の在宅化を計画していますが、完成図のない計画が要介護者を野晒しにする危険を感じております。介護を提供する体制については、圧倒的に不足している介護人材の確保、高齢者の住まいの確保、区市町村における総合事業(訪問・通所サービスなど)の質の担保などがあります。

 公害・環境対策としては、老朽化ビルの取り壊しから出るアスベストへの対策、再生可能エネルギーの促進、国内・国外から飛散して蓄積する放射性物質の測定、などです。その他、柔道整復療養を正常化する問題、難病医療における制度の谷間の埋め方など、請願は多岐にわたります。

 いつも請願の場をご用意いただいていることに、感謝いたします。2017年度東京都予算編成等に当たって、以下の項目について請願いたします。

<請願事項>

1 重点項目

第1章 感染症対策について
第2章 健診事業について
第3章 医療・介護提供体制について
第4章 公衆衛生の確保について
第5章 国家戦略特区(東京圏)について
第6章 公害・環境対策等について
第7章 医療費の助成等について
第8章 健康保険制度について
第9章 医療機関への指導等について
第10章 東京の災害対策について
第11章 東日本大震災による被災者への継続的支援について
第12章 障がい者対策について

2 一般項目

第1章 後期高齢者医療制度について
第2章 健診・検診事業について
第3章 審査・指導等について
第4章 東京の災害対策について
第5章 東日本大震災による被災者への継続的支援について

3 東京都から国へ要望していただきたい項目

 

 このページでは「1 重点項目」のみ掲載しています。「2 一般項目」「3 東京都から国へ要望していただきたい項目」については、2017年度 東京都予算等に関する請願 [PDF:520KB]をご覧ください。

 

1 重点項目

第1章 感染症対策について

1.麻しん・風しん対策

(1) 第2期の接種率向上・麻しん排除の維持に向けた取り組みの充実
 今後もWHO認定の麻しん排除状態を維持していくために、第2期の接種率向上に向けた取り組みを充実させていただくこと。特に4月から6月の接種率を上げるために、「未接種者への再勧奨・再々勧奨」や「地域医師会等・学校・幼稚園・保育園と協同した啓発活動」について各自治体での取り組みが進むように、さらに支援していただくこと。

(2) 20~40歳代のすべての成人男女に対するMRワクチン接種の実施
 区市町村が、男性も含めた20~40歳代のすべての成人に対してMRワクチンを接種できる環境を整えること。居住地以外で接種した場合も、都内については「償還払い」が受けられるよう、積極的に働きかけること。
国立感染症研究所では、「抗体検査を実施せずにMRワクチンを接種しても医学的に問題はない。抗体検査で抗体陰性あるいは低値判明したまま放置することがないよう注意が必要である」との見解を示している。大人のMRワクチンについて、希望する対象都民すべての費用を助成すること。

2.B型肝炎ワクチン定期予防接種

(1) 費用助成期間と接種回数の広報・周知徹底 【新】
 本年10月より定期化されるB型肝炎ワクチン予防接種については3回接種が標準的だが、対象者は1歳未満となっており、接種漏れとなる可能性も高い。費用助成の期間内に確実に接種が完了することを呼びかける医療機関向けポスター等を作成し、都民へ周知徹底すること。

(2) 2016年4月から7月誕生児に対する救済措置 【新】
 費用助成の対象となる4月から7月に誕生した子どもは、助成期間が短いため、期間内に標準的な接種を終えられない可能性が高く、同年度内の対象者間に格差が生じることから、対象となる子どもが1歳を超えても接種を受けられる救済措置を早急に講じること。

(3) 助成対象を3歳未満まで拡大すること
 国は対象年齢を1歳未満としているが、3歳未満の子どもが感染すると持続感染者になりやすく、将来的に慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する危険性が指摘されている。都として、対象者を「3歳未満」に拡大すること。区市町村が独自に上乗せした場合の費用助成を行うこと。

3.日本脳炎対策

(1) 第2期の積極的勧奨への財政支援と広報・周知の取り組み 【新】
 当該年度中に9歳に達する者に対して、厚労省通知に基づく第2期接種の個別通知の発送、ポスター・リーフレットの活用等の十分な勧奨を区市町村が行えるよう、財政支援を行うこと。区市町村だけでなく都も、都民に向けて情報発信、広報・周知をしていただくこと。

(2) 特例対象者への積極的勧奨と広報・周知の取り組み
 積極的な勧奨差し控えなどの事情により接種機会を逃した特例対象者に対し、第1期の定期接種不足回数分を2期の期間内に接種できること等について、都民に向けて情報発信、広報・周知をしていただくこと。

(3)「生後6カ月」からの接種推奨 【新】
 日本小児科学会は2016年2月、「最近日本脳炎患者が発生した地域・豚の日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6カ月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨される」と提言している。近隣県での日本脳炎発生事例も鑑み、生後6カ月から接種が可能である旨を都民に周知していただくこと。

4.おたふくかぜ予防接種助成事業への財政支援 【新】

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)罹患は、約300人に1人が難聴の後遺症に苦しむことになる。流行を未然に防ぐためには、ワクチン接種が不可欠である。
 2015年度、都内では15自治体がおたふくかぜの予防接種助成事業を実施した。他の自治体も含めて都全体での流行を防ぐために、おたふくかぜ予防接種助成事業への財政支援を行っていただくこと。

5.ワクチンギャップ・自治体間における接種格差の解消と接種率向上に向けた取り組み

(1) 安定的なワクチン供給体制の確保 【新】
 2015年度は季節性インフルエンザワクチンが三価から四価へ変更されたことに伴い、価格が急激に高騰した。また、化血研問題もあり、ワクチン供給が極端に制限された影響で、都内でもワクチンの偏在が起こった。今後このようなことが起こらないよう、都内の安定的なワクチン供給体制を確保すること。

(2) 定期接種(B類疾病)ワクチンの自己負担軽減
 「高齢者インフルエンザ」および「成人用肺炎球菌」の予防接種について、都内全自治体で全額公費負担による接種が受けられるよう区市町村を支援すること。少なくとも、生活保護受給世帯および住民税非課税世帯については、いずれのワクチンも自己負担なく接種が可能となるよう財政支援を行うこと。

(3) 都内全域における予防接種事業相互乗り入れ体制の構築
 定期接種や都・区市町村が助成しているワクチン接種事業の接種率を向上させるため、実施主体の市区町村だけでなく、都をあげて積極的な取り組みを行っていただくこと。住民が身近な医療機関で予防接種を受けられるよう、区市町村間の相互乗り入れ制度のさらなる導入を促すこと。

(4) 里帰り先等で接種した場合の助成制度の促進 【新】
 里帰り出産や長期入院など、三多摩・23区間、あるいは東京都外で予防接種を受けた場合の自己負担について、文京区や千代田区が実施している里帰り先や長期入院先での定期予防接種費用の還付制度の導入を各自治体へ促すこと。

(5) 任意予防接種の自己負担額軽減
 A型肝炎、おたふくかぜ、インフルエンザ(64歳以下)、ロタウイルス等のワクチン接種について、国に先駆けて都独自の助成制度を設けること。少なくとも、助成内容が充実している自治体の水準が、他の自治体でも行えるように助成すること。

(6) 予防接種ナビ等に対する経費補助事業の延長 【新】
 都が2016年度に新設した「スマートフォン等による接種時期の情報提供」サービス(予防接種ナビ等)に係る経費の補助事業について、未実施の自治体に対して積極的な取り組みを促すとともに、同事業を2017年度も継続していただくこと。

6.感染症サーベイランスの充実

 現在、感染症については全都的なサーベイランスが構築される一方で、一部自治体では「保育園サーベイランス」の導入によって域内の流行状況をリアルタイムで共有できるようになった。感染症の流行予測や予防のため、「保育園サーベイランス」を現在未実施の自治体でも導入できるよう支援していただくこと。全都的に罹患状況をリアルタイムで把握できるシステムを都として構築すること。

7.新型インフルエンザ(強毒性)、ジカ熱、デング熱等への対策

 発熱時の受診方法等について、平時から医療機関および都民に対して広報するとともに、有事の際にもインターネット、テレビ、ラジオ等を通じて万全の対応がとれる体制を準備すること。人命を最優先とし、感染が疑われて医療機関を受診する必要がある場合は、資格証明書であっても医療保険の自己負担額で受診できる体制を構築すること。

第2章 健診事業について

1.いわゆる“無保険状態”者への健診確保

 いずれの健康保険にも加入できず、また生活保護の認定もない者(いわゆる“無保険状態”者)の全貌が明らかになっていないことから、東京都として実態調査を行うとともに、そうした都民へも十分な健診機会が確保されるように施策を検討すること。

第3章 医療・介護等提供体制について

1.地域医療構想への対応 【新】

 次期保健医療計画の策定に大きな影響を与える「地域医療構想」における基準病床数の急激な増減は、現に地域医療を担う多くの中小民間病院の医院経営に大きな混乱をもたらす恐れがある。また、医療従事者の確保なくして単に病床数を増やすだけでは、十分な医療提供は実現しない。引き続き、患者や医療現場からの声を丁寧に聴取するとともに、地域に必要な医療提供体制を堅持するために、東京都として以下の取り組みを進めていただくこと。

(1) 推計ツールによる将来の病床推計が、そのまま“地域の病床削減”に繋がることのないよう、次期の保健医療計画(特に基準病床数)の策定はいっそう慎重に行うこと。

(2) 今後、構想区域ごとに設置される「調整会議」について、中小病院・有床診療所等の意見も十分に反映されるよう、丁寧な運営を補佐すること。特に、有床診療所は専門的医療の提供や地域に根づいた療養の場として活用されているため、区市町村・住民の意見を積極的に取り入れるためのルールづくりを行うこと。

(3) 医療療養病床でも緊急患者の受け入れを行う場合には、緊急患者受入ベッドの確保や救急医療提供に係る費用等について一定の基準の下に財政援助をすること。

(4) 看護師等の養成・定着・再就業対策事業の実績や評価について明らかにすること。

(5) 東京都版CCRCにより都内でどの程度の規模で都民の生活の場が移動するのか明らかにし、地域医療構想との整合性がとれるか否か検討すること。

2.地域の介護提供体制の維持・強化に向けた支援

 2015年4月の介護報酬改定は、介護職員処遇改善加算などを差し引くとマイナス4.48%という過去最大の改定率となった。基本サービス費は軒並み引き下げとなり、さらに各種「減算」の直撃を受ける事業所にとっては、サービスの継続はもとより、事業所そのものの存続さえ危うくなるなど、地域の介護提供体制を深刻な状況に陥れている。
 本来は国の責任で、介護人材確保に必要な対策を講じるとともに、良質な介護サービスの提供に資する報酬設定とすることが重要である。しかし、とりわけ介護人材の確保については、2025年度には都内でおよそ3万6,000人の介護職員が不足するとされており、東京都としてのさらなる対策が求められる。
 現在の「東京都・介護人材確保対策事業」の利用者数など明らかにするとともに、必要に応じた人材確保対策課拡充を検討していただくこと。

3.高齢者の住まい確保の推進 【新】

 東京都では、2025年に向けて、特別養護老人ホームについては6万人分、認知症対応型グループホームについては2万人分を確保する目標を掲げ、施設整備費の補助などを先進的に実施している。一方で、実際に利用者が入居を希望していても、経済的な理由等により自宅介護を続けざるを得ない場合や、費用が高額となる介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などには入居ができない実態もある。
 高齢者が安心して療養できる住まいの確保に向け、引き続き施設整備を推進していただくとともに、特に低所得者や生活保護受給者についての施設入居費・居住費等の補助を検討すること。認知症の独居高齢者について、低所得者等でも必要に応じて認知症対応型グループホームに入居できる環境整備を進めること。

4.都内の要支援者に対する訪問・通所介護サービスの確保

 昨年の介護保険法改正により、全国一律だった要支援者の訪問介護・通所介護は、2017年4月までに段階的に、区市町村が行う「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」に移行することとなった。
 住民のニーズを把握し、地域の実情に応じた細やかな介護サービスの提供は重要ではあるものの、一方で従来サービスの質・量が低下したり人員体制が十分に確保できないようでは、利用者にとっても、また介護を担う事業所・職員にとっても望ましいものではない。
 何よりも問題なのは、国の新しい総合事業の主眼が、右肩上がりの介護予防給付の増加を後期高齢者の伸び率以下に抑制することに置かれている点だ。また、基本チェックリストの運用についても、自治体の運営方針や窓口職員の力量に大きく左右される。さらに国会でも取り上げられた「介護保険からの“卒業”」のために使われることもいっそう危惧されている。
 国の法改正による制度変更とはいえ、都内の給付水準が後退することのないよう、ガイドラインで示されている役割に加えて東京都として以下の取り組みも進めること。

① 総合事業へ移行した区市町村が3年ごとに事業の評価・検証を行うに当たって、東京都としても各地の「基本チェックリストの運用状況」「利用実績」「利用者からの苦情」等の実態を定期的(年1回など)に把握するとともに、その内容を広く都民に知らせること。

② 総合事業へ移行した区市町村のうち、「基準緩和型(サービスA)」および「住民主体による支援(サービスB)」を行う場合について、区市町村が「介護従事者」や「事業責任者」などに対する適切な研修が実施できるよう、財政支援を検討していただくこと。

第4章 公衆衛生の確保について 【新】

1.柔道整復療養費への正しい理解の促進について

(1) 都民に対して、制度の概要、保険適用の範囲、受療時の注意点などを分かりやすく解説したポスター・リーフレット等を作成するなどし、正しい理解の普及を行うこと。

(2) 地域に開業する接骨院に対して、以下の取り組みを行うこと。

① 柔道整復師法に規定された広告表示を遵守するよう、東京都所管の地域保健所と連携するなどして指導・是正を行うこと。また特別区等の保健所とも情報共有するなどして、都内全域の法令順守を主導すること。

② 区市町村・保健所等において、上記に関連する十分な人員体制が確保されるよう、必要な財政支援を行うこと。

第5章 国家戦略特区(東京圏)について

1.東京都における特区構想の運用について

 東京の国家戦略特区において、医療分野ではすでに「保険外併用療養に関する特例」「病床規制に係る医療法の特例」「外国人医師による外国人患者の診療に関する特例」などの運用が始まっている。
 さらに昨年12月には、すでに神奈川県や大阪市の特区で先行する「家事代行サービスに従事する外国人の入国・在留資格の付与」についても、東京圏として検討を始める方針が示されるなど、特区を活用した規制改革は前進の一途である。
 そもそも国家戦略特区の理念である「岩盤規制全般について突破口を開く」ことが、医療分野では“医療の営利ビジネス化”を招いた自由診療が公的医療保険制度を形骸化させたり、安全性やサービスの質を低下させ、地域医療の骨組みを切り崩す危険性をはらんでいる。
 都民が安心して地域医療を享受できるよう、以下の取り組みを東京都として行うこと。

① 既存の人材・財源・施設等の医療資源は「世界で一番ビジネスがしやすい国」を目指すためではなく、都民の地域医療の充実のために活用すること。

② 当初提案していた東京発グローバル・イノベーション構想のうち、とりわけ医療分野に関連する「創薬のメッカ形成」、「東京都版PMDA創設」、「株式会社による医療ツーリズム受け入れ病院開設の容認」について、現状と今後の見通しを明らかにするとともに、広く都民にも知らせること。

第6章 公害・環境対策等について

1.アスベスト被害対策への強化

(1) 解体・改修工事を担当する業者へのアスベスト対策指導と実態調査
 建築物などの解体・改修によるアスベスト飛散の増加が懸念されている。工事を担当する業者に対して、大気汚染防止法を遵守した適切な対応を取るよう改めて指導すること。また、アスベストの飛散と曝露の防止、廃材の処理の状況等について都として実態を把握し、不適切な事例に対しては改善指導を実施すること。

(2) X線検査を含むすべての区市町村検診の問診票に職歴欄を設けること

 アスベスト疾患は曝露から長期の年月を経て発症するうえ、ひとたび発症すると進行が極めて早いことが知られている。アスベスト疾患を鑑別できる呼吸器専門医が少ない現状では、肺・呼吸器疾患の多くがアスベストとの関係を見落されているおそれがある。特定健診やがん検診など、区市町村が実施する肺のX線検診の際は、肺がん検診以外の場合でも問診票に職歴を記入する欄を設けることを推奨いただくこと。

2.地球温暖化対策と再生可能エネルギー(自然エネルギー)の普及

(1) CO2排出削減対策の促進
 国に先立って都が「CO2規制条例」を制定した先駆的取り組みをさらに実効性のあるものにするためにも、火力発電所を含めた大規模事業所の排出量削減、および都内で活動する自動車の総量規制等の諸施策をさらに進めていただくこと。

(2) CO2排出削減対策と再生可能エネルギーの普及促進【新】
 COP21パリ合意で示された、今世紀後半までに石油を含めた化石燃料から生じるCO2排出をゼロ近くまで減らす目標を達成するために、再生可能エネルギー(自然エネルギー)の普及をさらに促進すること。都における「再生可能エネルギーの利用割合を2024年までに20%程度に高める」目標の実現に向けて、取り組みをいっそう進めていただくこと。

(3) 小売電気事業者に対して電源構成開示を義務づける都条例の策定【新】
 2016年4月からの電力自由化に伴い、現在、経済産業省に申請している小売電気事業者は300社以上にのぼるが、電源構成の開示が義務づけられていない。消費者の選択に資するため、欧米の例にならい、東京都内で営業を行う小売電気事業者に対して電源構成の開示を義務づける都条例を策定すること。CO2排出量に加えて、放射性廃棄物排出量についても開示させること。

(4) 再生可能エネルギーを扱う小規模電力供給会社への支援【新】
 新たに電力供給会社が参入し、再生可能エネルギーに積極的に取り組む企業も誕生している。再生可能エネルギーの普及拡大のため、再生可能エネルギーを扱う小規模電力供給会社への支援を通じて安定的な電源供給体制を維持し、家庭向け販路を拡大すること。

3.放射性物質測定調査について

 福島第一原発事故から5年が経過したが、一部報道では東京湾のセシウム汚染は河口部で高止まりしているとも言われている。潮流や川の流れで汚染の分布は変わることから、主な河川の河口部・河口沖・東京湾における水質・底泥や、河川敷の土壌・空間線量について、観測結果を都民に周知していただくこと。

(後編に続く)

2017年度 東京都予算等に関する請願 [PDF:520KB]