【シリーズ】どうなる!?これからの医療・介護⑤「医療・介護もビッグデータの餌食」

公開日 2014年11月05日

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 健康・医療戦略(2014年7月22日)に突如現れた「ヘルスケア社会システム」という単語。行政だけでなく、公的保険外の民間サービスが住民への保健衛生を提供することを前提とした地域保健システム概念で、つまりは民間サービスを強調した地域包括ケアシステムである。

 民主党政権下でマイナンバー法の在り方を検討した際、医療等情報はそれとは切り離すべきとされた。しかし安倍政権下では医療情報もマイナンバーに結びつけるべきという意見が再度持ちだされている。そのうえ、健康・医療戦略に沿ってヘルスケア社会システムを構築するのであれば、保健・医療・介護の担い手は民間企業にまで広がるので、医療・介護事業者だけに閉じることはもはや不可能だ。少なくともレセプトデータについては社会保障・税番号等の番号を導入することが骨太の方針に明記されている。

 医療情報をマイナンバーに結びつけるかという問題の他に、そもそも医療情報をどのように連携・活用するかという問題もある。2012年、厚労省は医療情報の利活用がもたらすメリットを個益・公益として整理、その議論に基づき現在も医療情報の活用事例を検討している最中である。

 公益の分野で医療情報の最大限の利活用を目論むのが首相官邸。日本再興戦略では「在宅医療・介護情報連携標準規格の策定」ということで、医療情報連携形式を全国統一化するという。医療情報のビッグデータを作り上げ、研究・市場に売り渡そうとしている。

 また、首相官邸の「パーソナルデータに関する検討会」では6月24日「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」を発表し、「利活用・第三者提供にあたり本人同意を要しない」としている。一応、機微情報は本人の同意が必要とされているが、機微情報は「社会的差別の原因となるおそれがある人種、信条、社会的身分及び前科・前歴等に関する情報」と記載され、医療情報は列挙されず曖昧にされている。「大綱」の法案化に向けたパブリックコメントでもこの点が数多く指摘されていたが、修正されるかどうかは疑わしい。官邸は同大綱に基づき、来年の通常国会で個人情報保護法等の改正法案を提出する計画だ。

 協会は患者の情報を守る立場から、地域・現場での医療・介護連携以外など患者本人の利益になる場合を除いて、個人の医療情報を利活用しようとするマイナンバー、医療情報IT化に反対をしてきた。すでに地域ごとに必要な範囲で電子化・情報連携を行っているが、それをわざわざ全国で形式を統一するのはコストがかかるというもの。医療機関のメリットといえば保険証資格の確認程度だろう。

(『東京保険医新聞』2014年11月5日号掲載)

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