【シリーズ】どうなる!?これからの医療・介護③「病院等のヘルスケアリート 医療機関を『儲ける』ための投資対象に」

公開日 2015年10月15日

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 医療・介護分野の営利化拡大を狙う成長戦略に基づいて、産業競争力会議では民間資金の活用の一環として「ヘルスケアリート」を提唱している。ヘルスケアリートとは「投資家から資金を集めて病院建物を入手し、病院を運営する法人などに貸し付けて、賃料を投資家に配当する不動産投資信託」のことだ。

 高齢者向け住宅(サ高住、有料老人ホーム、認知症グループホーム)についてはすでにヘルスケアリートガイドラインが策定され、今年7月1日から運用が始まっている。産業競争力の強化に関する実行計画(2014年1月24日)では、「病院(自治体病院を含む)等を対象とするヘルスケアリート」についても2014年度中にガイドラインを策定することとされている。

 「リート法人」は収益の90%以上を分配すれば法人税がかからないので、投資家側からすれば、収益が期待できる。さらに、事業評価、情報提供が必要として、一定規模以上の医療法人には外部監査や財務諸表の公開を義務付ける議論も開始されている。この仕組を通じて資金を集め、病院の機能整備や耐震化をしようというのが名目だ。

 一方、わが国のリート制度(Jリートという)は法律で、リート法人は資産運用等の実務を行ってはならないとされ、実務は資産運用会社等に委託をすることとなっている。つまり、建物の管理や整備といった運用および運営評価を資産運用会社(信託銀行など)が担い、リート法人から運用報酬が支払われる。報酬体系はリート法人規約に計算式が示されるわけではなく、上限額の開示等最低限でよい。分配額の決定は、リート法人内の投資主総会の議決も不要である。患者、診療報酬、そして自治体病院の場合は行政拠出金も含めた病院の収入が巡り巡って資産運用会社への報酬と投資家に分配されることになる。

 ガイドライン検討委員会は医療機関が病院運営に集中できるといったメリットを挙げながら、「賃料未払いの際、病院運営についてリート法人との協議」や「病院運営者が想定する不動産・設備投資計画についてリート法人の事前承認が必要」といったデメリットも指摘している。

 医療費削減政策のもと、自治体病院中心に資金繰りの苦しい医療機関が増えているなかでリートが拡大すれば、投資家の意向を受けたリート法人の経営介入などにより、不採算医療が切り捨てられるなど、医療のあり方そのものに影響を与えることが懸念される。

 収益を上げるために、いま導入が検討されている患者申出療養など混合診療へのシフトを強要されることにもなりかねない。ヘルスケアリートの導入を許してはならない。

(『東京保険医新聞』2014年10月15日号掲載)

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