【シリーズ】どうなる!?これからの医療・介護②「医療・介護の非営利ホールディングカンパニー 医療で『稼ぐ』ためのシステム」

公開日 2014年10月05日

図 非営利ホールディングカンパニー型法人制度をめぐる状況

 医療・介護の連携をしていくために必要な制度は何か。この一つのツールとして社会保障制度改革国民会議は「ホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利の移転等を速やかに行うことができる道を開くための制度改正を検討する必要がある」と報告した。これが非営利ホールディングカンパニー型法人制度(HD型法人)だ。

 HD型法人は「複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする」(産業競争力会議)というもの。産業競争力会議では「これまで成長産業としてみなされなかった分野の成長エンジン」と位置づけている。

 HD型法人の提案者である社会保障制度改革国民会議委員の増田寬也氏は、産業競争力会議医療・介護等分科会のメンバーでもあり、昨年10月29日には同分科会に増田ペーパーなるものを提出している。そのなかには「今後のあるべき医療介護提供体制の姿として、機能分化や連携の推進等に資する制度が求められている。更に、医療イノベーションや医療の国際展開を進めていくためには、アメリカにおけるIHN(Integrated Healthcare Network)のように国際的に通用する規模・質を持った医療機関の存在が求められる」としている。医療・介護を産業化していくことが医療改革の目的であることが明確にあらわれている。

 同ペーパーでは、HD型法人の内容として「実効あるガバナンス機能を発揮するため、社員総会等の意思決定は出資額に応じて、又は定款で自由に決められること」を提案している。

 厚労省では「医療法人の事業展開等に関する検討会」において今年4月からようやくHD型法人の議論が始まったが、そこでは「非営利性、公平性を確保するためには出資額に応じた意思決定は認められない」、「そもそも地域医療の充実を達成するために、既存の法人制度をどう改善・規制緩和すべきかという丁寧な議論の後に、提案されるべきで、余りにも飛躍している」、「少なくとも社保審が考えている仕組みと産業競争力会議、規制改革会議が考えている仕組みは、同床異夢」といった否定的な意見が続出している。

 アメリカのIHNは一つのネットワークのなかに医療・介護提供だけでなく、製薬企業や私的医療保険そのものをグループ化して、収益を上げる地域独占型「メガ医療事業体」である。

 このような枠組が日本の保険医療・介護に馴染むのか、また国際展開してわざわざ競争をするHD型法人を導入する必要があるのだろうか。国民が求めているのは公的医療保険制度の充実である。

(『東京保険医新聞』2014年10月5日号掲載)

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