保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

対都請願の論点(2020年度東京都予算案)

公開日 2019年11月25日

対都請願の論点(1)―麻疹・風疹対策の強化

 2018年は全国的に風疹の感染が拡大し、風疹患者は2,946人に達した。今年に入っても流行は続いており、9月4日時点の風疹患者数は2,156人(男性1,704人、女性452人)に及んでいる。このうち、男性患者の96%、女性患者の88%が成人で、麻疹についても676人の患者のうち68%が成人であり、罹患者の多くはワクチンを接種したことがなかった。来年開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、今後訪日者が激増すると予想され、多くの都民・国民が風疹・麻疹に対する抗体を早急に獲得する必要がある。

 協会は東京都に対して、希望する成人男女に抗体検査なしにMRワクチンを接種する費用を助成するよう要望している。

 また、東京都が実施する成人の風疹予防接種事業は、都内の半数の自治体で自己負担が残っており、対象者がワクチン接種を受けるうえで障害となっている。この負担をなくし、東京都が費用を全額助成することも要請している。

2020taito1-1

2020taito1-2

(『東京保険医新聞』2019年9月25日号掲載)

対都請願の論点(2)―3歳児健診での弱視スクリーニング検査

 視力は1歳で0.2、2歳で0.5、4歳で1.0と育っていくが、遠視や乱視、近視、不同視、斜視があると育たず弱視となる。

 弱視をみつけるためにはスポットビジョンスクリーナーを用いた屈折検査が必要だが、3歳児健康診査では実施されていない場合がほとんどであり、弱視が見逃されている現状がある。1歳?年長児までの4829例に検査を実施したところ、25人に1人が弱視危険因子を持ち、49人に1人が弱視であることが明らかとなった。

 弱視は視覚感受性のある時期に発見して治療しなければ一生視力不良が続くため、早期発見・早期治療が重要であり、すべての子どもが、早い時期に屈折検査を受ける必要がある。

 岐阜県では、2018年度~2020年度の3年間、県が購入した屈折検査機器(1台約100万円)を県内のモデル市町村に無料で貸し出し、3歳児健康診査で弱視スクリーニング検査を実施している。

 協会は、東京都に対して、3歳児健康診査で弱視スクリーニング検査を実施するよう要望している。

2020taito2

(『東京保険医新聞』2019年10月5日号掲載)

対都請願の論点(3)―大気汚染医療費助成 自己負担引き下げを

 東京都独自の制度である大気汚染医療費助成制度は2018年4月に制度改定を行い、同年4月から18歳以上の成人患者に対し、月額6,000円の自己負担限度額を導入した。毎月の限度額は自己負担限度額管理票(左参照)を用いて管理を行い、認定疾病に対する自己負担額を医療機関および薬局で合算し、6,000円に達するまでは新たに窓口負担が生じることとなった。

 しかし、自己負担が導入される以前の2017年度分について東京都が公開した医療費助成の状況分析では、18歳から69歳の同制度の利用者一人当たりの単価は一カ月平均にすると4,612円であった。そのため、多くの患者にとっては助成制度が実質的に機能しておらず、全額自己負担になっており、年間で5万5千円以上もの支出を強いられていると考えられる。

 大気汚染医療費助成制度の対象疾患は、気管支ぜん息、慢性気管支炎、ぜん息性気管支炎、肺気腫とそれらの続発症であり、治療は多年にわたって必要となる。
 自己負担制度導入による経済的負担によって、服薬管理が必要なぜん息患者の受診抑制が引き起こされている可能性がある。

 協会は東京都に月額6,000円の自己負担額が適正か検証し、その結果を明らかにするとともに、実態に合わせて自己負担額を引き下げるよう申し入れを行っている。

2020taito3

(『東京保険医新聞』2019年10月15日号掲載)

対都請願の論点(4)ー解体工事のピークはこれから アスベスト対策は喫緊の課題

 国土交通省によると、1956年から2006年までに建築された280万棟の民間建築物でアスベストが使用された可能性がある。既に建築から60年を超えたものもあり、老朽化が進行している。解体工事のピークは2028年頃で、年間10万件に達すると推測されている(下図参照)。

 2014年度から2017年度にかけて都道府県等が実施した石綿除去作業現場への立入検査における大気濃度測定では、作業現場からの漏洩が疑われる事例が66件報告されている(2019年9月2日開催、環境省中央環境審議会大気・騒音振動部会 石綿飛散防止小委員会から)。

 阪神淡路大震災で倒壊したビルの解体に伴う石綿の飛散が社会的に問題となり、大気汚染防止法に石綿飛散防止に関する規制が導入された。その後も東日本大震災や熊本地震などで、東京都が基準値として定めるアスベスト繊維数濃度(1本/ℓ)を超えるデータが報告されている。アスベストの飛散防止対策は喫緊の課題だ。

 協会は東京都に対し、解体・改修工事を行う業者へのアスベスト対策指導と実態調査の実施、アスベスト疾患への注意喚起を促すための各区市町村への情報提供、アスベスト疾患を読影できる医師の養成を求めている。
 

20191101SS00001

(『東京保険医新聞』2019年10月25日号掲載)

対都請願の論点(5)ー救急医療体制における病院救急車の活用について

 消防救急を補完する救急搬送の仕組みとして八王子市では、急増する高齢救急患者に対応するために、医療機関が所有する病院救急車を活用し、救急搬送を行う取り組みをしている。実際、八王子市では病院救急車の取り組みにより慢性期医療機関の救急受入件数が大幅に増加し、市内救急事案の八王子市内収容率も改善している。

 しかし、病院救急車の運用に当たっては、以下の課題がある。

1)高齢者施設からの搬送が増加しているにもかかわらず、高齢者施設からの搬送が転院搬送体制等整備事業の対象にはなっていないこと。
2)転院搬送体制等整備事業の対象となるのが、①自院から他の医療機関に入院するための転院搬送であること、②自院の医師または看護師が同乗していること、③病院救急車、民間救急車、東京DMATカーのいずれかによる転院搬送であることで、①~③をすべて満たす転院搬送に限られていて限定的であること。
3)休日・全夜間診療事業にかかる休日・全夜間診療実績報告書の記入に当たって、病院救急車の受け入れが搬送受入の実績としてカウントすることができないこと。

 東京都は懇談の中で、緊急性は低くても継続した医療処置が必要な患者の転院搬送において、病院救急車等を活用することにより、消防救急車を利用した転院搬送における低緊急、非緊急の割合は減少していると説明したが、病院救急車の活用については未だ改善の余地が大いにある。

 協会は、東京都の救急医療体制の改善に向けて、上記の課題を早急に改善し、病院救急車のさらなる活用促進を図り、救急医療提供体制を確固としたものにするよう東京都に働きかけを続けていく。

(『東京保険医新聞』2019年11月5日号掲載)

対都請願の論点(6)ー所得の4分の1が国保料! 18歳までの子どもの均等割廃止を求める

 23区(統一保険料から離脱した千代田区、中野区、江戸川区は除く)における国保の均等割保険料は、1998年度の2万6100円から2018年度の5万1000円へと、この20年で約2倍に膨れ上がった。2019年度は2018年度から1200円値上げされた。

 国保被保険者の4割が年金所得者や無職層、3割が非正規雇用などの被用者であり(グラフ参照)、健保加入者に比べ平均所得が低いにもかかわらず、保険料は協会けんぽの2倍以上も高いなど構造的な課題を抱えている。

 とりわけ問題なのが、国保にしかない「均等割」だ。均等割は世帯の加入者数に応じてかかる人頭払い方式であり、負担能力の全くない乳幼児も成人と同額の保険料負担が課せられるという、応能負担原則から外れた制度だ。

 9月18日に実施した東京都福祉保健局との懇談で、協会は補助制度を東京都として独自に創設して、18歳までの子どもの均等割を廃止するよう要望した。都側は「国保制度は全国統一の制度であり、子どもに係る均等割保険料の軽減措置については、制度設計者である国が責任を持って対応することと考えている」としながらも、「子どもに係る均等割保険料を軽減する措置を講じるよう、国に対し、提案・要求している」と回答した。

 大気汚染医療費助成制度や難病医療費助成制度など、東京都は国に先立ち独自の医療費助成制度を実施してきた。国による軽減制度が設けられるまでの間、東京都として独自の補助制度を創設するよう協会は取り組みを続ける予定だ。

2020taito6

(『東京保険医新聞』2019年11月15日号掲載)

対都請願の論点(7)―子ども医療費 東京都全域で18歳まで無料化を

 協会は、子ども医療費の助成対象を18歳まで拡大し、都全域で子ども医療費無料化が実現するよう、東京都に要請している。18歳までの子ども医療費を助成する制度を独自に運用する千代田区では、高校生等医療費助成制度はマル乳やマル子の4分の1程度の予算措置で運用されており、財政へ与える影響も大きくない。千代田区以外では、北区と品川区が18歳までの入院医療費を助成している。

 小・中学生対象のマル子については、23区すべてが外来窓口負担の自己負担分200円を独自に全額助成しているが、多摩地域では7自治体(武蔵野市、府中市、調布市、日野市、日の出町、檜原村、奥多摩町)が助成しているのみだ。多摩地域の医療格差を解消するため、窓口負担200円の撤廃を早期に実現させたい。

 また、23区はすべて所得制限を撤廃しているのに対し、多摩地域では16自治体(八王子市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、調布市、小金井市、国分寺市、国立市、福生市、多摩市、羽村市、西東京市、日の出町、檜原村、奥多摩町)に留まる。

 しかし、多摩市が2019年4月からマル子の所得制限を撤廃したのをはじめ、三鷹市と調布市が同10月から小学校卒業までの所得制限を撤廃した。小金井市は同10月から、小学校1年生から3年生までの所得制限を撤廃するなど、自治体の努力により助成制度が拡充している。

 義務教育就学前のマル乳については、入院時食事療養費の助成で、依然格差が残っている。同じ都民でも受けられるサービスが異なり、地域間格差が顕著である(下図)。協会はこのような医療格差を解消するため、都内自治体の状況を調査し、改善を求めていく。

★_地図・子ども医療費の窓口負担・所得制限等の現状一覧 簡略版

(『東京保険医新聞』2019年11月25日号掲載)

 

関連ワード