保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

対都請願の論点(2027年度東京都予算案)

公開日 2026年09月18日

[対都請願の論点①]資格確認書の一律交付を

 2024年12月2日、国民の反対を押し切り、健康保険証の新規発行が停止された。マイナ保険証によるオンライン資格確認では運用開始当初から様々なトラブルが発生しており、現在でも資格確認が確実にはできない状況だ。保団連が2025年10月から12月にかけて実施した調査では、医療機関の約7割がマイナ保険証に関するトラブルを経験している(図参照)。
 期限切れの健康保険証は、暫定措置として2026年7月末まで使用が認められていたが、2026年8月以降は使えなくなった。また、これまで後期高齢者には資格確認書が一律交付されていたが、2026年8月の資格更新以降、交付対象者が85歳以上に限られた。マイナ保険証による資格確認でいまだトラブルが続く中、確実に資格確認ができるアナログの手段を持つことが必要だ。
 都内では2024年、渋谷区と世田谷区が国民健康保険の加入者に対し、マイナ保険証の有無にかかわらず資格確認書を一律交付することを決定した。2025年には杉並区議会が資格確認書の一律交付を求める陳情を採択した。また、大阪府後期高齢者医療広域連合は、一律交付した資格確認書の有効期限が切れる今年8月以降も、一律交付を継続することを決定した。
 世田谷区・渋谷区・杉並区のように、独自に資格確認書の一律交付について判断ができる自治体は少ない。さらに、渋谷区の資格確認書の一律交付は今年7月末で終了し、杉並区についてはいまだ一律交付の措置が取られていないなど、対応もまちまちである。
 東京都の旗振りのもと、自治体国保において一律交付を行うよう協会は要請を続ける。

 

 
(『東京保険医新聞』2026年9月15日号掲載)

[対都請願の論点②]自治体ごとに保健所設置を

 保健所は公衆衛生活動の中心的存在として住民の生活と健康を支えている。COVID―19まん延時の保健所の活躍は記憶に新しいが、保健所の業務は、感染症予防をはじめ、精神保健福祉、難病対策、食品衛生、健康管理危機など20分野に及ぶ。
 しかし、1991年に全国で852カ所あった保健所は、2025年には462カ所とほぼ半減している。多摩地域(30市町村)には保健所がわずか7カ所しかなく、多摩府中保健所の管轄区域は人口100万人を超え、西多摩保健所の管轄区域の面積は東京都の約3割に達している(表1、表2)。これでは難病患者や精神障害者への訪問指導はおろか、主要な相談事業にも支障が出かねない。
 都は、保健師の定数について「2021年度以降増員しており、引き続き定数の充足や職員の育成に努める」と回答しているが、保健所の増設については否定している。協会は十分な保健所機能を確保するため、引き続き保健所の増設と保健師定数の増加を求めていく。

 

 
(『東京保険医新聞』2026年9月25日号掲載)

[対都請願の論点③]看護師確保と実践的復職支援の抜本的強化を

 恒常的な看護師不足が続いており、特に中小病院においては深刻である。日本看護協会が2024年度の都道府県ナースセンター登録データを集計・分析した結果、20床以上199床以下の中小病院における有効求人倍率は3・00倍に達することが判明した。会員医療機関からも、「ナースバンク事業での採用はほとんど期待できず、有料職業紹介事業者を利用せざるを得ない」、「採用できたとしても基本的技術が不足している」といった悲鳴に近い声が寄せられている。
 東京都のナースバンク事業(無料職業紹介事業)による就業者数は、2022年の1867人から、2023年は1303人、2024年は1349人と減少傾向にある。同じく復職支援事業(3日間または5日間の2コース)だけでは、採血や注射といった基本的技術の習得には不十分であり、2024年度の病院体験コースの受講者もわずか119人(うち復職48人)にとどまっている。
 需給見通しを見据えても懸念は尽きない。2019年の東京都看護職員需給推計では、2025年時点で約2万〜3万人の不足が見込まれており、65歳以上の人口増加が今後さらに進む。中小病院のみならず、在宅医療を担う医療機関や訪問看護ステーション、介護施設等においても一層看護師の確保が困難となっていくことが見込まれる。
 今回の懇談では、①ナースバンク事業の人員増加、②事業内容の積極的な周知、③離職中の看護師が現場の要請に応えられる技術を習得するための「7〜14日間程度の新たな実践的研修コース」の創設等を実施するよう東京都に求めた。都からは、人員配置および広告費用の実績をはじめ、ナースバンク立川で実技体験の機会を提供している旨の説明があったが、事業実績が低迷している理由やより踏み込んだ抜本的な支援策については言及がなかった。
 看護師不足の背景には、絶対的な供給数不足に加え、人員不足に起因する過酷な業務負担と給与のミスマッチ、さらに少人数体制ゆえに高い看護能力が求められる重圧など、多様な要因が絡み合っている。さらにコロナ禍が看護師不足を加速させた。もはや個別の医療機関の努力だけで解決できる段階ではない。日常的な医療提供体制の維持はもちろん、医療安全の観点からも、看護師の確保体制の構築は一刻を争う急務である。国及び東京都には、協会要求の実現を強く求めていきたい。

 
(『東京保険医新聞』2026年10月5日号掲載)

[対都請願の論点④]医師確保計画および外来医療計画

 2025年に「外来医師過多区域」の創設が盛り込まれた医療法改正が行われたことを受け、 厚労省は「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(後期)~」を策定した。ガイドラインでは、開業規制対象となる二次医療圏(外来医師過多区域)が公表されており、東京都では都内17区(23区のうち区東部、区東北部以外)が挙げられている。しかし、外来医師過多区域の設定にあたり用いられている「医師偏在指標」は保険医療機関と自由診療医療機関を分けておらず、診療科を考慮していない等、実情を反映していない。
 また、同ガイドラインでは外来医師過多区域における新規開業希望者に対して、都道府県が開設6カ月前までに事前届出を求め、地域で不足する医療機能の提供を求めることができることとし、事前届出をしなかった者等に対し、30万円以下の過料に処すことや、地域で不足する医療機能の提供に応じない者に対し、保険医療機関の指定期間を3年に短縮すること、都道府県医療審議会への出席及び理由等の説明を求めることとしている。
 しかし、日本は人口比医師数がOECD加盟国の平均を大きく下回っている状況であり、罰則を設けて規制しなければならないほど医師が過剰な地域が存在するのかは疑問だ。現に、政府も医師偏在指標が実情を反映しきれていないことを認めている。本来であれば、医師不足の地域で働く医師に国が十分な補償をすることで対応すべきだ。
 協会は都に対し、外来医師過多区域の設定にあたって画一的な対応を行わないこと、都からの要請・指導が実質的な診療所の「新規開業規制」にならないような運用を求めた。都は「今後、外来医療に関する協議の場等を通じて関係者の意見を聴取し、現場の実態や国の制度趣旨を踏まえ、適切に区域を設定して対応していく」と回答し、地域医療の確保と医療機関の自主的な取り組みとの両立に努めていく考えを示した。外来医師過多区域における新規開業者への対応については、「国の制度趣旨を踏まえ、適切に対応していく」とし、詳細について明言しなかった。
 協会は引き続き地域の実情を踏まえた医師確保計画および外来医療計画の運用を求め、都や国に要望を伝えていく。

 
(『東京保険医新聞』2026年10月15日号掲載)

[対都請願の論点⑤]過去最大の麻しん流行への対策を

  COVID―19感染者数の減少と連動するように、麻しんの報告数が急増している。2026年の都内の麻しん報告数は10月4日時点で271件にのぼり、過去10年間の報告数の合計を上回った(図)。感染防止には予防接種が重要であるが、2024年度の都内の麻しん含有ワクチンの接種率は第1期が94・3%、第2期が90・4%と、ともに集団免疫の基準となる95%を下回っている。麻しん風しんワクチンの定期接種は第1期(1歳の1年間)と第2期(小学校入学前の1年間)に設定されており、定期接種を逃した人に対する任意接種費用の助成を行っている区市町村もある(表)が、地域差が存在する。
 2026年の麻しん報告数(全国)の68%は15歳~39歳で、抗体価が低いのもこの世代である。東京都は今年度から、19歳以上に対する麻しん抗体検査・予防接種費用の助成を行う区市町村に対する補助を開始しているが、この制度の利用にも地域差がある。
 協会は東京都に対し、①定期接種勧奨を強化すること、②定期接種を逃した人に対する任意接種費用助成と、19歳以上への麻しん抗体検査・予防接種費用助成を全区市町村で実施するよう働きかけること、の2点を要望した。
 9月10日に実施した意見交換会において、保健医療局からは「①リーフレット・ウェブサイト・動画配信等で麻しん予防接種に関する周知を強化している、②各種補助事業については説明会等を通じて区市町村に情報提供している」との回答があり、協会はより効果的な方法による周知の実施を訴えた。

 
(『東京保険医新聞』2026年10月25日号掲載)